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『チコちゃんに叱られる!』なぜ円周率はずっと続くのか…その“終わりなき旅”

文=寺西ジャジューカ(てらにし・じゃじゅーか)

『チコちゃんに叱られる!』なぜ円周率はずっと続くのか…その終わりなき旅の画像1
『チコちゃん叱られる!』(NHK)

 7月2日放送『チコちゃん叱られる!』(NHK)のゲストは、今回が初登場の堀田茜と昨年7月10日放送回以来3度目の登場となる野々村真だ。

 それにしても、菅義偉首相が決まって金曜夜に会見を行うため、『チコちゃん』が休止にならないかソワソワするのが癖になってしまった。その上、次々回(7月23日放送回)からは東京五輪中継により、3週にわたる『チコちゃん』の放送休止が予定されている。そう考えると、今回のような通常放送が愛おしく感じられてきた。

朝ドラばりの感動巨編になり損ねた“男爵いもストーリー”

 この日2つ目のテーマは「男爵いもの男爵って誰?」という疑問だった。解答者となった岡村隆史は脊髄反射的に「髭男爵」と言いかけ、ありふれた答えを言うまいと慌てて口をふさぐ頼りなさである。結婚前は「独身貴族オナニー伯爵」を自称し、爵位を吹聴していた割に!? まあ、筆者も男爵と言ったら「あしゅら男爵」(『マジンガーZ』の登場キャラ)くらいしか思い浮かばないけども……。果たして、チコちゃんが発表した正解は「川田伯爵」であった。いや、突然「川田」と言われても「おっ、おう……」としか言うことができないのだが。

 そもそも、男爵いもとは明治時代に北海道で農場を営んでいた川田龍吉男爵が品質改良を繰り返して作り上げたジャガイモだそう。男爵様が作ったジャガイモだから「男爵いも」と命名されたのだ。

 男爵いもの由来、川田龍吉男爵は1856年に土佐(現在の高知県)で川田家の長男として誕生。彼の写真を見ると、確かにお芋みたいな顔をしているのだ。父親は海運業で成功し、後に日本銀行総裁となって男爵の称号が与えられた川田小一郎である。「日本の発展には海外との貿易が重要」という父の考えのもと、龍吉は21歳のときに世界一の造船技術を学ぶためスコットランドへ留学。そして帰国後、知識を生かして船の修理等の仕事に就き、その後は現在の横浜みなとみらいに新しいドックを作るべく尽力した。40歳のときには父が急死したため、「男爵」の爵位を引き継いだ龍吉。彼に転機が訪れたのは50歳のときだった。渋沢栄一から函館ドックの立て直しを依頼され、専務取締役として北海道に渡ったのだ。

 北海道の七飯町で龍吉は土地を購入。仕事のかたわら農場を開き、自ら畑を耕したという。アメリカやイギリスから様々な種を輸入し、当時まだ珍しかったキャベツやレタスといった西洋野菜の栽培に励んだ龍吉。中でも、特に力を注いだのはじゃがいもの栽培だった。自らの財産をつぎ込み、熱心にじゃがいもを育てていたらしい。その姿を見た周りの人は「どうしてあそこまで夢中になっているのか?」と不思議に思ったそう。その理由は龍吉が亡くなってから26年経った1977年、農場の倉庫から手紙の束が見つかって明らかになった。

「いとしいリョウ 手紙をいただく度に あなたが恋しくなります」
「リョウへ 今夜はあなたの事ばかり考えていました 土曜日に会うのを楽しみにしています 愛を込めて ジニー」

 英語で綴られた89通のラブレターが発見されたのだ。ここから始まるのは「NHKたぶんこうだったんじゃないか劇場 芋の国から 1883 初恋 ~男爵いも誕生物語~」である。龍吉がスコットランドへ留学して6年経った1883年、彼はとある書店に立ち寄り1人の女性店員に話しかけている。

龍吉 「すいません、地図を探しているんですが」
店員 「どんな地図をお探しですか」
龍吉 「布張りの地図はあるかな?」
店員 「調べてみますので、お名前とご住所を教えてくださる?」
龍吉 「ところで、あなたのお名前は?」
店員 「ジニー・イーディーです」

 このやり取りの数日後、龍吉の元にジニーから1通の手紙が届いた。

「川田様 土曜日に、あなたが布張りの地図を欲しいと思っていらっしゃるのかどうか確認するのを忘れてしまいました ご一報いただけましたらすぐ出版社へ地図を送るように連絡いたします」

 この丁寧な対応に感激した龍吉は週末、すぐにその書店を訪れた。27歳の龍吉と19歳のジニーは互いに運命的なものを感じ合い、以来、両者の間で手紙のやり取りが始まったという。ジニーが実際に送った手紙の内容は以下だ。

「木曜の夜、あなたは私があなたを導く天使だと手紙に書いてくださいましたね」
「私は今、あなたが下さった財布を眺めていました いつもこれを身につけているようにしようと思います」

 手紙を送り合いながら、2人は週2回のデートを重ねるようになった。さらに、休暇になると郊外にも出向いたそうだ。スコットランド・カードロスの畑を訪れたのは2人のいい思い出だ。

龍吉  「(畑を見て)これは何を作っているんだ?」
ジニー 「じゃがいもよ。夏になったら一面に白い花が咲くの」
龍吉  「また一緒に来たいものだね」
ジニー 「そうですね。2人で来ましょう」

 カードロスの地で龍吉はジニーにプロポーズをした。

「結婚しよう。一緒に日本に来てくれないか?」

 ジニーはこの申し出に手紙で返答した。

「いとしいリョウ あなたの前のお手紙には“はい”とお答えします 私はあなたの妻として愛情のすべてを捧げられると思いますし、あなたに仕えるために最善を尽くします」

 なんともキュンとするラブストーリーではないか。ただ、死後に現代人に恋文を晒され、回し読みされる龍吉とジニーが不憫だ。公開処刑のような暴露に同情を禁じ得ない。まあ、とにかく2人はラブラブだったということ。結婚して日本で一緒に暮らす約束を交わし、龍吉は帰国した。

 しかし、帰国後にジニーから届いた手紙は一通も残されていなかった。龍吉は確かにジニーと彼女の母を日本に呼ぶつもりだった。でも、父・小一郎の反対を押し切ることができなかったのだ。途中まではNHK連続テレビ小説『マッサン』ばりの素敵なストーリーだったのに、結局、親の圧に負けてしまった龍吉。すったもんだの末に約束を反故するなんて、これじゃあまるでジニーは現地妻じゃない! 『マッサン』の主人公・亀山政春(玉山鉄二)は周囲の反対を押し切り、亀山エリー(シャーロット・ケイト・フォックス)と国際結婚したというのに。しかも龍吉は父に薦められた女性と結婚し、8人の子どもをもうけたそうだ。

 話を元に戻そう。龍吉が50歳になった頃、彼は北海道へ渡っている。

「ここが北海道か、空気が澄んでて気持ちのいいところだなあ。そうだ、ここに農場を開こう!」(龍吉)

 仕事の隙間を見つけては農場へ足を運ぶようになった龍吉。外国から取り寄せた野菜の中から、彼は北海道の気候・土壌に合う品種を探し始めた。結果、ひと際よく育ったのはお芋だった。しかも、それはスコットランドで作られた品種だったのだ。このとき、龍吉はジニーと一緒に見た風景を思い出していた? 海を越えてやって来たその芋は、北海道に多くの実りをもたらしたという。偶然にも、当時を知る農夫のインタビューがNHKに残っていた。

「川田男爵という人が珍しいからと言って(芋を)農家に分けてくれた。収穫が多いもんだから、“我も我も”と(みんなが)芋を分けてもらって。名前は、男爵からもらったから『男爵いも』と広がったわけです」(農夫)

 龍吉の功績は農業史に名を残してもおかしくない域に達していた。「川田いも」ではなく「男爵いも」として広まったのも素晴らしいセンスだ。というか、スコットランドで男爵いもは何と呼ばれていたのだろう?

 龍吉の“男爵いもストーリー”、最終的には綺麗な着地をしたと思う。でも、1つだけ看過できないのだ。何がって、龍吉夫人の立場が。もしかしたらちゃんと愛されてたかもしれないのに、終始“望まれない妻”扱いされていて不憫。だって、彼女は8人も子どもをもうけたというのに……。

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