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テレビでサッカーは死んだのか!?「JFATV」を通じて考えるメディアとサッカーの関係性

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久保建英(写真/GettyImageより)

 世間からの批判はさておき東京五輪が開幕。サッカーU-24日本代表は開会式前日に南アフリカと対戦し1-0で勝利。その後も、メキシコに2-1、フランスには4-0と大勝し、快進撃を見せ、毎回その視聴率がサッカー好きが集まる掲示板などでは話題に上がっている。

 一昔前、サッカーはメディアにとってドル箱コンテンツだった。2002年の日韓ワールドカップでは、日本対ロシア戦が66.1%(世帯平均、ビデオリサーチ調べ)という驚愕の視聴率を誇り、民放でもこぞって試合やサッカー番組がゴールデン帯などで放送されていたことからも、メディアでの優位性は分かるだろう。

 その後も日本代表は、世界の舞台で順調にステップアップを見せていったが時を経て現在、日本代表戦のテレビ放送の視聴率が振るわなくなったことが、あちこちで指摘されている。サッカーコンテンツはDAZNなどのWEBやWOWOW・スカパーなどの有料放送にその軸足を移している。

 そんな中で、密かに注目を集めているのが、JFA(日本サッカー協会)が運営するYouTubeチャンネル「JFATV」だ。選手たちへのインタビューやピッチの中に入り込んだ迫真の練習風景などを撮影した「Team Cam」と名付けられた番組シリーズは、45万回再生されるものもあるなどサッカーファンのみならず、一般ユーザーも取り込み始めている。

 果たして、日本のサッカー人気は本当に低迷したのか? そしてU-24日本代表の快進撃で再び、サッカーは人気コンテンツになるのだろうか? サッカー日本代表戦のテレビ視聴率と「JFATV」動画の再生を対比してみてみると、スポーツビジネスが置かれている変化が見えてきた。

スポーツテレビ番組の現役ディレクターの目線/ヒーローの不在

 14年のブラジルワールドカップの前年、13年に開設された「JAFTV」の過去の動画をさかのぼってみると、数百回しか再生されていない動画も多くある。だが、最近のコンテンツは再生回数が1万回を超えるようになり、現在活躍中のU-24日本代表を追った「Team Cam」は東京五輪の開幕が近づくにつれ、再正回数も増加の一途をたどっている。

 民放キー局でスポーツ番組に携わるディレクターは「五輪の影響も大きいでしょうが、コンテンツの精度が上がってきているようにも思いますね」と語る。

「“Team Cam”のコンテンツを観てみましたが、凝った撮影方法をしているわけではありませんが動画はすごくきれいですし、なによりコンテンツには日本代表の裏側を垣間見ることができる“レア感”が感じられました。そして制作者の並大抵ではない努力もあるのではとも感じましたね」

 日本代表が7月17日にキリンチャレンジカップで戦ったスペイン戦。JFATVでは翌18日に試合のハイライトがアップロード、さらに19日にはTeam Camのコンテンツとして試合の舞台裏がアップロードされている。

「一日帯同して撮影時間もそうとうに長いでしょう。膨大な量の映像を見やすく編集して、しかも試合の翌日に出すのはかなりキツい作業です。クオリティも一定以上で、見応えも十分ですからね。久保建英選手や吉田麻也選手がリラックスして冗談を言い合うといった、通常のテレビ番組ではなかなか見られないような姿がたくさんあって、そんなところまで踏み込むんだ、と思いました。日本代表選手があれだけ内幕をさらした点も、評価が高いと思います」

 では、それだけハイクオリティがあるならば、JFATVのコンテンツは、スポーツ番組やサッカーバラエティ番組の対抗馬になりえるのだろうか?

「たしかに、テレビを通じてサッカーを見ていた人たちがYouTubeやDAZNに流れていってしまうみたいな、人の流れみたいなのはあるのかなとは思いますね。ただ、テレビとYouTubeは撮影や編集の方法も異なりますし、マスに一気に広げる能力ではまだテレビが強いと思いますので、その土台は崩れないかなと思います。

 ただ私自身、その土台を基に、興味がない人たちをどうやってテレビでファンにしていくか、を大切にしてきましたが、ここ数年でサッカーとテレビ番組との距離感がどんどん離れていっていることは実感しています。これには、スポーツビジネスにおける“お金の問題”も一部にはありますね。サッカーに限らずどのスポーツでも、日本代表の選手の映像を二次使用するのには、放映権を持っている局や団体に結構な金額を支払わなければなりません。日本代表戦を放送するときのプロデューサーが悩むポイントです」

 ニュース番組であっても、プロスポーツの躍動感のある映像が使えなければ、やはり興味が薄い視聴者を引き込むのは難しいだろう。

 サッカーコンテンツのビジネス化が進んだ結果、テレビでサッカーを放送する理由も、視聴者が観る理由もなくなったということか。

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