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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.654

実話ホラー『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』 1980年代の米国で開かれたオカルト裁判の顛末

文=長野辰次(ながの・たつじ)

悪魔よりも恐ろしい、人間が抱く悪意

悪魔に取り憑かれたアーニー(ルアイリ・オコナー)に責任能力はあるのか。

 悪魔の存在が争点となったことで、「アーニー・ジョンソン事件」もしくは「悪魔が私にそれをさせた事件」は米国の裁判史に記録されている。1692年、植民地時代の米国マサチューセッツ州セイラム村で起きた「セイラム魔女裁判」を思わせる、オカルト裁判になりかねなかった。「セイラム魔女裁判」では、魔女の疑いをかけられた村民19人が処刑され、1人が拷問中に亡くなり、5人が獄中死を遂げた。今では集団ヒステリーが引き起こした不幸な裁判として語り継がれている。多くの犠牲者を出した「セイラム魔女裁判」から300年近くの歳月が流れたが、ウォーレン夫妻は悪魔の手からアーニーを救い出すことができるだろうか。

 アーニーの体に取り憑き、殺人を命じた悪魔の存在を突き止めることは、心霊現象に詳しいエドや霊能力のあるロレインでも難しい。だが、ウォーレン夫妻は諦めない。事件の発端となったデヴィッドが悪魔に取り憑かれることになった古い屋敷を調査し、屋敷の片隅に誰かが悪魔を呼び寄せた呪術アイテムがあることに気づく。さらに調べると、似たような不可解な殺人事件が他の町でも起きていた。その事件を担当する警官の見立ては、悪魔を崇拝するカルト信者が背後にいるのではないかというものだった。警官の推理が正しければ、何者かが悪魔を召喚し、計画殺人を行なったことになる。悪魔の行方を追っていたウォーレン夫妻は、悪魔よりも恐ろしい人間の悪意に触れてしまう。

 シリーズ第1作『死霊館』は、1970年代に起きた「ペロン一家事件」に加え、「セイラム魔女裁判」もモチーフにしていた。実際に起きた事件とフィクションとを巧みに織り交ぜてみせるところが、「死霊館」シリーズの人気の秘密だろう。本作は「死霊館」シリーズのスピンオフ作『ラ・ヨローナ~泣く女~』(19)をヒットさせたマイケル・チャベス監督が撮り、『エスター』(09)や「ウォーキング・デッド」シリーズの脚本家デイビッド・レスリー・ジョンソン=マクゴールドリックがシナリオを担当している。デイビッド・レスリーは、事件当時の雑誌「ニューズウィーク」や「タイム」、地元の新聞をくまなくリサーチし、さらに事件当事者であるアーニーとデビーにも取材した上で、執筆したそうだ。

 実在のオカルト裁判を扱った映画に、「セイラム魔女裁判」を題材にしたダニエル・デイ=ルイス&ウィノナ・ライダー共演作『クルーシブル』(97)、悪魔祓いによって女子大生が死に至った事件を弁護士の視点から描いた『エミリー・ローズ』(07)などがある。『クルーシブル』では同調圧力によって、魔女狩りに異議を唱えた少数派の常識人たちが次々と処刑された。『エミリー・ローズ』で悪魔祓いを行なった神父は過失致死罪に問われ、その後のカトリック教会はエクソシスト(悪魔祓い師)の派遣に極めて慎重になったと言われている。

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