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『MONOS 猿と呼ばれし者たち』少年少女の残酷サバイバルがリアルな理由

「目をそらさない」ことも目的に

『MONOS』少年少女の残酷サバイバルがドキュメンタリーのようにリアルの画像3
c) Stela Cine, Campo, Lemming Film, Pandora, SnowGlobe, Film i Väst, Pando & Mutante Cine

 ランデス監督によると、コロンビアの内戦は、準軍事組織、ゲリラ、マフィア、政府、外国の関係者、それらすべてが「膿んで」しまっているかのような状態であったそうだ。2016年には、50年以上続いた内戦の終結を目指した和平合意が政府とコロンビア革命軍の間で最終合意に至ったが、国民投票によりその結ばれたはずの合意は僅差で否決となった。だが、その5日後に当時のサントス大統領がノーベル平和賞を受賞し、和平実現を後押ししたこともあったという。

 そうした背景を踏まえつつ、ランデス監督は(平和への)希望はある、だからこそ、この映画『MONOS』を作ったとも語っている。現実のそうした揺れ動く情勢により「怒りが表面化」しているのはむしろ良いことであり、この映画に描かれる残酷な出来事から「目をそらさない」ことで疑問を持つきっかけになる、そういう意図をもった作品でもあるのだという。

 少年少女の過酷な生活と日常は思春期ならではの悩みを描いた物語として、後半のジャングルでの逃亡劇は本気でハラハラする冒険ものとしても面白く観られるだろう。それ以上に、本作は「残酷な世界」についての知見を与えてくれる映画でもある。何より、美しい映像とドキュメンタリーと見紛うほどの「本物」ぶりは、スクリーンでじっくりと堪能する価値がある。改めて、映画館で体験してほしいと願うばかりの一本だ。

「MONOS 猿と呼ばれし者たち」
10月30日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー
c) Stela Cine, Campo, Lemming Film, Pandora, SnowGlobe, Film i Väst, Pando & Mutante Cine
配給:ザジフィルムズ
監督・脚本・製作:アレハンドロ・ランデス
脚本:アレクシス・ドス・サントス
撮影:ヤスペル・ウォルフ
編集:ヨルゴス・モヴロプサリディス
音楽:ミカ・レヴィ
出演:モイセス・アリアス、ジュリアンヌ・ニコルソン
2019年/コロンビア=アルゼンチン=オランダ=ドイツ=スウェーデン=ウルグアイ=スイス=デンマーク/スペイン語・英語/シネスコ/5.1ch/102分/原題:MONOS/字幕翻訳:平井かおり/R15+
公式サイト:http://www.zaziefilms.com/monos

ヒナタカ(映画ライター)

「ねとらぼ」「cinemas PLUS」「女子SPA!」「All About」などで執筆中の雑食系映画ライター。オールタイムベスト映画は『アイの歌声を聴かせて』。

Twitter:@HinatakaJeF

ひなたか

最終更新:2021/10/30 07:00
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