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歴史雑誌のディープな世界【1】

“在野の論考”こそ面白い!! ディープな歴史雑誌の世界

文=里中高志(さとなか・たかし)

歴史ファンと研究者の間の壁

 同誌以外では、「歴史人」や、太平洋戦争がらみの特集が多い「歴史群像」などが、歴史に関心の高いファンを訴求している。このように、確実に歴史ファンの裾野を広げている歴史雑誌であるが、一般向けの雑誌は、大学教授など第一線の歴史研究者にはあまり読まれていないという。大学で日本近代史の准教授を務めた後、最近も在野で『歴史なき時代に』(朝日新書)や『平成史―昨日の世界のすべて』(文藝春秋)などの著書を刊行している與那覇潤氏はこう明かす。

「一般の歴史ファン向けの雑誌を歴史学者が論文で引用することはまずないですし、学生や院生がそうした雑誌の記事を参考文献に挙げたら、たぶん指導教授に叱られるでしょう。個々の記事の内容以前に、学術論文でないものは引用しないという習慣があります。ただ、こうした閉鎖性こそが歴史学の世界が抱える問題なのかもしれません」

 このように語る與那覇氏は、歴史学の世界への失望が重なり、今回の『平成史~』を歴史学者として最後の著書とするつもりだという。

「歴史学者が普段読み、言及・参照する歴史雑誌は、さまざまな学会が母体となって出している学会誌です。学会誌は一般の歴史ファン的な読者は想定せず、学界でキャリアを積むために研究者が論文を載せるための場なので、研究者以外が読んでもあまり面白くはないでしょう。学問である以上やむを得ない面はありますが、学会誌に投稿する研究者はしばしば、同じテーマを研究するプロ同士のサークルにのみ意識を向けて、『新しいことを今回調べたので、僕を認めてください』とアピールする姿勢で書いてゆくことになる。本当はそうして新しく発見された成果を、一般向けの歴史雑誌で普通の読者に届けることも大事なはずなのに、歴史学者はそうした『素人向けの媒体』には背を向けるべし、という妙なムードがあるんですね」(同)

 與那覇氏が続ける。

「確かに歴史ファン向けの雑誌には、学者から見ればいい加減な論考が載ることもあるでしょう。しかしそういった雑誌こそが歴史ファンの裾野を広げ、ひいては歴史学に人を呼び寄せているのも事実なんです。歴史学者も歴史ファンとの間に壁を作るのではなく、たとえば『普通の人にも研究の意義が伝わり、背伸びすれば読める学会誌』を作れるよう努力すべきでは、と感じます」

 そう言う與那覇氏は、「あえて歴史研究のプロが読む雑誌にも触れてみたい」という人にはこうアドバイスする。

「既存の学会誌の中で、相対的には歴史ファンにも届くように作られているのは『特集号』です。編集部の側が何らかの共通テーマを設定し、それについて書かれた論文で構成している号ですね。通常、学会誌は投稿された論文を審査して、内容に関わらず通った順番に掲載してゆくスタイルが多いのですが、特集形式で編集された号であれば、掲げられたテーマが自分の興味ある分野だったときに手を伸ばしてみることもできるでしょう」

 その一例として與那覇氏が挙げるのが「歴史評論」。21年8月号では「戦場の宗教―近代の戦争と宗教動員」という特集を組み、「日本軍占領地における『宗教的自由空間』」「戦後日本のキリスト教と『戦争』」などの論文が掲載されている。同誌は学会誌の中では例外的に、必ず毎号特集が組まれているので、歴史ファンにも比較的入りやすいのではと與那覇氏は語る。気になる特集名の号を探して読んでみれば、「プロの研究者」がそのテーマをどのように扱っているかがわかり、歴史ファンにとっても新しい世界が広がるかもしれない。

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