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歴史雑誌のディープな世界【1】

“在野の論考”こそ面白い!! ディープな歴史雑誌の世界

文=里中高志(さとなか・たかし)

地域史研究を活性化する面も

 そうした中、長きにわたり歴史ファンの支持を集めている雑誌が、「歴史研究」だ。21年の5・6月号で第691号にしてリニューアル創刊を図り、その特集は関ヶ原の戦い で石田三成の西軍についたことで知られる武将の「大谷吉継」。続くリニューアル創刊2号では、「石と石垣の日本史」、3号では「『菩提寺』再考」と、コアな歴史ファンを意識したニッチな特集を組んでいる。編集長の井手窪剛氏が説明する。

「もともとは在野の歴史愛好家のための全国団体としてスタートし、1959年にこの雑誌は創刊されました。それ以来、年に10回の刊行を続けており、延べ定期購読者は1万8000人近くになります。年間購読の申し込みをすれば会員の資格が得られるシステムをとってきましたが、現在は書店販売も行う商業誌として新たな読者が増えています」

 雑誌を見ると、在野史家や歴史ファンの論考も多数ありながら、特集として専門分野の研究者による寄稿が中心に据えられている。今年よりよい雑誌を目指して新しい発行元に引き継がれ、それを機にリニューアルした格好だという。

「読者の中心は在野の歴史家。つまり、大学や研究組織に属していないけれど、歴史が大好きで、個人で地道に研究を続けているような方が中心です。地方でコツコツ調べたり、各地を旅行して、その土地でしか得られない貴重な史料を発掘したりするのが好きな方々が、発表と交流の場として活用しています」(同)

 史料として古文書を読みたい人のために、古文書の読み方講座のページも「歴史研究」には設けられている。例として掲げられている借金の証文なども、当時の生活をうかがい知ることができる貴重な材料だ。読者の中には親子3代にわたって読み継いでいる人もいるそうだ。

「読者からの寄稿も受け入れていますが、中にはユニークすぎてそのままでは掲載できない論文もあり、掲載するにあたって手直しすべき箇所をアドバイスすることもあります。この雑誌の読者には地方の在野史家が多いので、東京の歴史学会では手に入らない、その土地ならではの史料を見つけてくる方が結構いらっしゃいます」(同)

 人気があるのはやはり戦国時代だが、古代、中世、幕末などもそれぞれにファンが多い。歴史の研究には全国の地域史の研究が欠かせないことからも、「歴史研究」の読者のような在野の研究者が日本の歴史学を下支えしていると言ってもいいのではないだろうか。

「歴史研究者と歴史ファンの間には壁があるという意見もありますが、その壁を取り払いたいということこそ、弊誌の目指しているところです。在野の方の書いたしっかりした論文は喜んで掲載したいですし、専門家の方にはわかりやすい論文を書いていただいて、一般の歴史ファンにも最新の研究動向を知ってほしいと思っています。これからは、優秀な学生さんが書いた論文もどんどん掲載していきたいですね」(同)

 そう語る井手窪氏は、歴史雑誌の意義について次のように語る。

「歴史は繰り返す──とはよく言われることですが、ある時代のある事象を研究していくと、現在起きていることや、これから起きることに関してある程度予測できることが結構あります。その意味では、歴史を参照することで自分の生きる方向を見定めることができるのです。同時に、中央の歴史学ではないがしろにされがちな地方の歴史も、歴史雑誌こそ在野の研究者の力を借りて掘り起こすことができると思っています。そのあたりを知るための大切なツールとして、歴史雑誌の果たす役割は大きいと、私たちは考えています」

 オリンピック開催中に感染急拡大という未曾有の事態を乗り切る羅針盤としても、歴史雑誌はきっと役立つことだろう。

里中高志(さとなか・たかし)

里中高志(さとなか・たかし)

フリージャーナリスト。精神保健福祉ジャーナリスト。メンタルヘルスと宗教を得意分野とする。著書に『栗本薫と中島梓 世界最長の物語を書いた人』(早川書房)。『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)。

最終更新:2021/11/08 06:00
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