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あのアーティストの知られざる魅力を探る TOMCの<ALT View>ビーイング編

シティポップとしてのB’z――B’zと山下達郎をつなぐ“グルーヴ”とは

文=TOMC(トムシー)

稲葉浩志が「山下達郎になりたい」と思った楽曲

シティポップとしてのB'z――B'zと山下達郎をつなぐ“グルーヴ”とはの画像2
B’z『IN THE LIFE』

 アリーナロック的な先行シングル「ALONE」を収録し、B’zが打ち込みポップスから離れ始めた時期の人気作『IN THE LIFE』(’91)では、青山純は6曲のドラムを担当している。

 中でも「TONIGHT(Is The Night)」は、稲葉が「山下達郎さんになりたいと思っていました」という言葉を残している通り、アダルティなサックスと煌めくシンセが主張する編曲から、セブンスコードをびっしり詰め込んだ作曲構造に至るまで、現代の視座から“シティポップ”と呼ばれる楽曲の特徴をしっかり兼ね備えている。出だしの何気ないようで複雑な青山のフィルイン~オープン・ハイハットに顕著な、強い後ノリが生むグルーヴは(ウワモノが迫り出したこの時期特有のミキシング・マスタリングのため分かりづらいが) 、上記で挙げた山下達郎の諸作とも確実にリンクする部分がある。

ビーイング流ウォール・オブ・サウンドを“グルーヴさせる”演奏

 また、シャッフルビート寄りのアレンジで “跳ね” がより強調された『IN THE LIFE』1曲目「Wonderful Opportunity」での青山のプレイは、数年後のシングル「love me, I love you」(’95)で一層進化したスタイルを聴くことができる。ソウルやジャズ/フュージョンの要素を積極的にアレンジに取り入れた楽曲としては現時点で最後となる1st Beat(シングルA面)作品と言える本曲は、後年にシェーン・ガラースをはじめ多くのサポートドラマーが骨を折ったことから“B’z史上屈指の演奏難度”とも評されている。

 青山は、裏・表拍を激しく行き来するブラス・コーラス・シンセの間を縫うように、ハイハットのパターンやフィルインに様々な仕掛けを施している。B’zに限らず、この時期のビーイング楽曲には驚異的な音数とリバーブで隙間をビッシリ埋めたものが多いが、本曲での青山のプレイはそれらの情報量を一つに繋ぎ止め自然にグルーヴさせる、潤滑油のような役割を果たしていることがはっきりと分かる。その上、ソウルフルな “跳ね” のみならず、この時期すでにハードロックへのモデルチェンジを終えつつあったB’zの立ち位置に沿った派手さや荒々しさも、スネア一発の強度~タムの大小のダイナミズムで丁寧に演出している点が白眉だ。

 こうした演奏全体を束ねるグルーヴとロック的強度の融合は、その前年、B’zがソウル/ファンク/AOR的なアレンジに最接近した作品のひとつ『The 7th Blues』でも、「未成年」をはじめ、多数の収録曲中で実践されている。青山が全曲のドラムを務めた本作の魅力については、後編にて改めて触れていきたい。

 次回は『FRIENDS』シリーズと『The 7th Blues』から垣間見える、B’zと “グルーヴ・ミュージック” の蜜月について、より多くの楽曲を例示しながらご紹介していく。


前編・後編で紹介しきれない楽曲を含め、B’zのソウル/ファンク/AOR路線をまとめたプレイリストをSpotifyに作成したので、ぜひ新たなB’zの魅力の発見にご活用いただきたい。

*FREE SOUL:音楽プロデューサー・評論家である橋本徹氏による、1970年代ソウル周辺の楽曲の中から1990年代以降の感性に沿ったグルーヴィー/メロウな楽曲に光を当てていく、平成初頭から日本国内で広がっていったムーヴメントの総称。
本プレイリストはB’z・橋本徹氏の双方に非公式のものであり、一般的に知られるB’zの音楽性とは真逆に当たる(と思われがちな)この運動の名称をあえて冠した、ブートレグ的スタンスのものであることをご留意いただきたい。

TOMC(トムシー)

TOMC(トムシー)

Twitter:@tstomc

Instagram:@tstomc

ビート&アンビエント・プロデューサー / キュレーター。
カナダ〈Inner Ocean Records〉、日本の〈Local Visions〉等から作品をリリース。「アヴァランチーズ meets ブレインフィーダー」と評される先鋭的なサウンドデザインが持ち味で、近年はローファイ・ヒップホップやアンビエントに接近した制作活動を行なっている。
レアグルーヴやポップミュージックへの造詣に根ざしたプレイリスターとしての顔も持ち、『シティ・ソウル ディスクガイド 2』『ニューエイジ・ミュージック ディスクガイド』(DU BOOKS)やウェブメディアへの寄稿も行なっている。
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最終更新:2021/12/04 03:05
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