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「正義の代償」を描く実話映画『ダーク・ウォーターズ』が他人事ではない理由

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 12月17日より映画『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』が公開されている。

 本作で描かれるのは「実話」だ。2016年1月にニューヨーク・タイムズ紙に掲載された記事に基づく物語は、日本人にとっても他人事ではない問題を扱っており、同時にエンターテインメントとして存分に面白く観られる秀作に仕上がっていた。さらなる特徴と魅力を記していこう。

「孤立」と「スティグマ」の恐ろしさ

 1998年、企業弁護士のロブ・ビロットは、農場を営む中年男から思いがけない調査依頼を受ける。大手化学メーカーのデュポン社の工場から出た廃棄物のため、土地が汚染された上に190頭もの牛を病死させられたというのだ。確信がないままに資料開示を裁判所に求めたロブは、やがて事態の深刻さに気づく。デュポン社は発ガン性のある有害物質の危険性を、なんと40年間も隠蔽してきたのだ。行動を起こすロブだったが、強大な権力と資金力を誇る巨大企業との法廷闘争は、彼を窮地に追いやっていく。

 内容を端的に言ってしまえば「内部告発もの」だ。悲痛な訴えから始まった案件が、じわじわと巨大な隠蔽の事実と結びつき、その地域全体巻き込んだ大規模な問題に発展していく。少しずつ提示された情報から次第にその意味が明らかになっていく過程は(題材からすれば不適切な表現かもしれないが)「探偵もの」に通ずるミステリー的な面白さもある。

 内部告発ものとして重要なのは、敵となる巨大企業ともゆかりがある主人公の「孤立」および「スティグマ(汚名や差別)」を丹念に描いていることだろう。主人公のロブは人情に厚いようで中立的でもあり、無党派で用心深く、慎重に情報を集めていくのだが、隠蔽を暴くための言動が権力者の逆鱗に触れたり、弁護士としての立場が危うくなると警告される。

 さらには、普通の暮らしを望む妻からも反対されたり、家族で過ごしている時にも問題の当事者から嫌味を言われてしまったりもする。主人公はたった1人であっても、何をも犠牲しても問題に立ち向かおうとしているのに、他の人物は「触らぬ神に祟りなし」であるばかりか、むしろその彼を攻撃したり、孤立させたりするのだ。

 トッド・ヘインズ監督は劇中で事細かに描かれる「分裂」について、こう語っている。「相互依存関係にあるネットワーク中に孤立やスティグマが広がってゆき、階級の違いを超え、彼らの社会、家庭、教会での生活に害を及ぼす様子から、独特で陰湿な形で波及していくことが見て取れる。(社会、家庭、教会での)人との繋がりがあったとしても、強力な利害関係に立ち向かうことで、自分の世界は縮小し、心身の力は削がれてゆく」と。

 そのように「正義の代償」が示されていく過程は半ばホラーのようでもあった。それでも屈することなく、己の信念をもって問題の解決に心血を注ぐ主人公を応援の姿は、ー同様のあらゆる社会問題に立ち向かう(それに関係する全ての)人にとって「他人事ではない」と戦慄するだろうし、同時に希望も持てるはずだ

 さらに、他人事ではないと思うことはもう1つある。劇中で問題視される化学物質、その正体だ。劇中でも衝撃の事実として提示されるので、あえて名前は出さないでおくが、日本でも当たり前に使われていた、誰でも知る商品だったのだ。現在でもその危険性は議論が紛糾しており、使わない(フリー)のものを推奨する声も多くあがっている。本作を観た後に、詳しく知ってみるのもいいだろう。

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