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年間300本以上観る映画ライター・ヒナタカの2021年映画ベスト10

R15+、R18+指定の傑作が目白押し

6位:『プロミシング・ヤング・ウーマン』

 30歳を目前にした女性が、過去のとある事件への首謀者および関係者への復讐を企てる物語だ。その事件とははっきり性暴力であるが、出来事そのものは「見せない」。だが、主演のキャリー・マリガンの表情が、その凄惨さを如実に物語っていた。序盤の男たちが女性をただただ性的な対象としてみる会話、一見まともそうに思える男でもその言葉の端々から、誰もが「加害性」を秘めていることも示されていた。何気ないセリフの1つひとつに巧みな伏線が込められており、アカデミー賞脚本賞受賞も納得の完成度だ。

「前途有望な若い女性」というタイトルは、裁判官が性暴力を働いた加害者男性が「前途有望な青年(Promising Young Man)」だから量刑を軽くしたという、実際の出来事から取られたもの。性犯罪を擁護したり矮小化したり慣習への痛烈な皮肉、いや怒りが込められていることは、実際の本編を観ればこれでもかと感じられるだろう。

 その社会批判に止まらず、復讐までに至るスリリングなエンターテインメントとしての抜群に面白く、クライマックスには膝から崩れ落ちそうになるほどの衝撃を受け、ラストは一生忘れらないほどに心に突き刺さった。現在は種々の配信サービスで購入の上で鑑賞できる。

5位:『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』

「バットマン」や「スーパーマン」で知られるDCコミックスを原作とした、極悪人の特殊チーム、通称「スーサイド・スクワッド」の活躍を描いた映画シリーズ。劇中ではそのチーム名通りの自殺行為そのものの作戦に強制的に参加させられる上、彼ら自身も積極的に「殺人第一」とばかりに敵たちを抹殺していく。監督のジェームズ・ガン監督はグロくて下品な内容でカルト的な人気を誇る「トロマ映画」の出身者であり、その作家性を大金をかけてフルスロットルにしたような贅沢な映画となっていた。

 そのR15+指定でもギリギリなグロさはただ露悪的なだけでなく、「命を使い捨て」される主人公チームの状況を様を描くために必要だったとも言える。悪人でもある彼らが、どのように自己実現を果たし、そして仲間との絆が生まれていくか?というドラマには大きな感動があったのだ。「尊厳が奪われた誰かのために立ち上がる」ことを高らかに謳いあげた、今の世に必要な映画と言えるだろう。序盤のとんでもない展開から好き嫌いは分かれるだろうが、個人的にはアメコミ映画の中でも1、2位を争うほどに好きな作品だ。

4位:『マリグナント 狂暴な悪夢』

 本作はとにかくネタバレできないので、予備知識を入れずに観てしまうのが良い。「夢で見た殺人が現実でも起こる」という『エルム街の悪夢』を思わせる設定だが、実際の本編では「それ以上のもの」が待っている。残酷描写のため(エロは皆無)R18+指定という高いレーティングがされているもの、意外にコミカルな描写も多く、「姉妹萌え」もあったりして親しみやすく、何より圧倒的なエンターテインメント性のおかげでのめり込んで観られるだろう。

 低予算のスリラーから大作アクション映画まで、クオリティの高い娯楽作を続々と手がけるジェームズ・ワン監督が久しぶりにホラー映画に帰還した結果、原点回帰にして、その作家性を詰め込んだ最高傑作を作ってくれたことが何よりも嬉しい。

 ちなみに「malignant」とは「悪性の(悪意のある)」という意味であり、観終わってみれば最大限にマッチしたタイトルだと納得できるだろう。アドレナリンが出まくる最高の映画体験ができるので、グロが乗り越えられる方はぜひ観てほしいと願うばかりだ。

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