日刊サイゾー トップ > 社会  > 「きさらぎ駅」の海外版ホラー動画

「きさらぎ駅」の海外版? YouTube動画『The Backrooms』と“架空のどこか”への恐怖

日本のネット発都市伝説「きさらぎ駅」との類似点

 このように、あるひとつのネタがネット上で模倣されながら文化を形成していく“インターネット・ミーム”を通じて都市伝説が拡がっていった事例は、日本でもみられる。その代表格として挙げられるのは「きさらぎ駅」だ。

「きさらぎ駅」とは、2004年に2ちゃんねる上の「身のまわりで変なことが起こったら実況するスレ」へ寄せられた投稿で登場した架空の駅のこと。投稿者は、乗車中の列車(静岡・新浜松駅から乗車した遠州鉄道の電車)がいつもと違いなかなか停車しない旨をユーザーに相談し、ようやくたどり着いた先が「きさらぎ駅」という異様な無人駅であることを報告した。

 実在する列車や地名、また多くの人が日常的に利用する列車が異界へと通じているというこの不可解な投稿は話題を呼び、他のユーザーからも類似の体験談が続々と寄せられたり、Googleマップ上で「きさらぎ駅」のスポットが何者かによって登録され、そこへ至る架空のルート検索ができるようになるといったことも起こった。

 きさらぎ駅を取り巻く現象について、怪奇スポット研究家の吉田悠軌氏は“実在する怪奇スポットに空想を傾けられなくなった現代において、人々が架空の場所にロマンを見出すようになったことが背景にある”としている(吉田悠軌著『禁足地巡礼』扶桑社新書)のだが、この解説は「見たことがあるのに、虚ろで恐ろしい」「懐かしいのに、実在しない」という言葉で形容された“The Backrooms”の、あの黄色い部屋にも当てはめられることだろう。

 近年では『あつまれどうぶつの森』や『フォートナイト』といったゲームのヒットにみられるように、コンピュータネットワークの中に構築された現実世界とは異なる3次元の仮想空間“メタバース”という概念がトレンドとなっていることからも、「人々が架空の場所にロマンを見出すようになった」風潮が読み取れる。

 The Backroomsやきさらぎ駅にみられるような、インターネット上で提唱された架空の場所を通じて人々が恐怖の感覚を持ちより、互いの創り出した異空間を行き来することでコミュニケーションを交わすといったメタバース的な都市伝説の在り様は、今後さらに世界的な規模で拡がりをみせていくのではないかと予測される。

菅原S(編集者、ライター)

編集者、ライター。1990年生まれ。webメディア等で執筆。映画、ポップカルチャーを文化人類学的観点から考察する。

すがはらえす

最終更新:2022/02/28 07:00
12
ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

『24時間テレビ』強行放送の日テレに反省の色ナシ

「愛は地球を救う」のキャッチフレーズで197...…
写真
イチオシ記事

バナナマン・設楽が語った「売れ方」の話

 ウエストランド・井口浩之ととろサーモン・久保田かずのぶというお笑い界きっての毒舌芸人2人によるトーク番組『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日...…
写真