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スタンダップコメディを通して見えてくるアメリカの社会#25

コメディアンたちがプーチンいじり倒し!ロシアのウクライナ侵攻でトランプもネタにされる

プーチンかと思いきや…一斉にトランプいじりが始まる!

 その鋭い洞察力と、的確でウィットに富むジョークからその発言にいつも注目の集まるコルベア。翌日3月1日、火曜日の放送でも切れ味は変わらない。

「あの日、ひとりの“独裁者”が民主主義を侵略しようとしちまったんだ! ちなみに、そいつはジョー・バイデンに選挙で打ち負かされたんだけどな」

 誰も予想していなかった、意表をついたまさかの「トランプいじり」に会場が沸いた。

「そしてもうひとり、世界は今、“独裁者”を抱えてる。今こそ、民主主義の力を見せなきゃならない」

 このように、プーチンとトランプを重ね合わせるジョークが実に多く見られた。

 NBCの『トゥナイト・ショー』でも同日、司会のジミー・ファロンは、ゼレンスキーとバイデンが30分の電話会議をしたことを受け、

「きっとその頃、プーチンとトランプが“あいつら絶対俺たちの話してるよな” “あぁ、悪口に決まってる“って話してたんだろうよ」

と得意のモノマネを交えて笑わせた。

 戦争という悲劇から目をそらさず、傷を負った人を励ますとともに、なんとか笑いにして届けるのだという「気概」が今、テレビの中のコメディアンだけでなく、ライターチーム、そしてライブに出演する多くのコメディアンからも伝わりくる。

 筆者自身、週末に行ったインディアナ州での公演の際でも葛藤の末、ウクライナとロシアのネタをかけた。すると終演後、ひと組のカップルがやってきて

「僕たちはウクライナ人とロシア人の夫婦なんだ。この一週間本当に暗い気分だったんだけど、君のあのジョークに心から笑えて、気持ちも楽になったよ。笑いにしてくれてありがとう」

と言われたことは生涯忘れられないと思う。

 改めて、アメリカという国の「コメディアン」のあり方を考えさせられる一週間となった。どちらかの国の旗を振らなくても、そして戦地に行かなくとも、自分にはできることがあるはずだ、と舞台上で感じさせられた。

 最後に、NBCの『レイト・ナイト』の司会者、セス・マイヤーズの2月28日のジョークを紹介したい。

 プーチンとその側近のやり取りをロシア語のアクセントのモノマネを交えて演じてみせた彼は、ため息をついて、

「僕のロシア語のアクセント芸はまだまだだね!始めたばっかりなんだ。でも、この芸が上手くなればなるほど、世界がよくない方向に行ってしまうってことだ。どうか、このまま下手なままでいられますように」

Saku Yanagawa(コメディアン)

アメリカ、シカゴを拠点に活動するスタンダップコメディアン。これまでヨーロッパ、アフリカなど10カ国以上で公演を行う。シアトルやボストン、ロサンゼルスのコメディ大会に出場し、日本人初の入賞を果たしたほか、全米でヘッドライナーとしてツアー公演。日本ではフジロックにも出演。2021年フォーブス・アジアの選ぶ「世界を変える30歳以下の30人」に選出。アメリカの新聞で“Rising Star of Comedy”と称される。大阪大学文学部、演劇学・音楽学専修卒業。自著『Get Up Stand Up! たたかうために立ち上がれ!』(産業編集センター)が発売中。

Instagram:@saku_yanagawa

【Saku YanagawaのYouTubeチャンネル】

さくやながわ

最終更新:2023/02/08 11:17
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