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ウマ娘効果で競馬界は“潤った”のか? 競馬界の重鎮から称賛の声も

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『ウマ娘 プリティーダービー』

 実在した競走馬を擬人化した女性キャラクターを育成し、レースに挑む人気ゲームアプリ『ウマ娘 プリティーダービー』(以下、ウマ娘)。昨年2月のリリース当初から爆発的な人気を見せつけ、4月1日付でダウンロード数は1400万回を突破! また2月24日にはアプリリリース1周年を迎えたことでTwitter上では連日トレンド入りし、お祭り騒ぎとも言える盛り上がりを見せた。ネット上では「競走馬を美少女化していて不快」、「普通に馬を走らせればいいでしょ」という批判も見受けられるが、依然として絶大な人気を誇るコンテンツであると言えよう。

 そんな飛ぶ鳥を落とす勢いのウマ娘だが、大もととなる競馬界の重鎮からも好意的なコメントが寄せられているのをご存じだろうか。というのも、競馬雑誌「週刊Gallop」(産経新聞社)の1月9日号内でJRA(日本中央競馬会)第15代理事長・後藤正幸氏がウマ娘に対して「本当にありがたいこと」と発言したことで、ネット上で大きな話題となったのだ。後藤氏ほどの大物がウマ娘に対するコメントを残したことで、同ゲームの影響が実際の競馬界にも出始めてきていると噂されているのだ。

 そこで、今回は競馬評論家・血統研究家の生駒永観氏にウマ娘の登場によって競馬界が“潤った”のか、実際のところをズバリ伺ってみた。

「確かにウマ娘の登場によって競馬ファンのライト層が増えてきた印象はありますね。競馬を知らない人がウマ娘をきっかけに馬券を買ったり、少額出資で共同馬主になることができる一口馬主を始めたりと、競馬への良い入口になっているのではないかと思います」(生駒氏、以下同)

 ウマ娘では「日本ダービー」や「天皇賞」など実在する競馬レースが数多く登場する。ウマ娘ユーザーはゲーム内に出てくる競馬の用語やルールを知って、競馬への理解を深めていくことができるわけだ。なるほど、そうしてゲームを楽しむうちに現実の競馬のほうにも興味が湧いて、実際に馬券を購入する人が出てきたということか。

 だが生駒氏いわく、意外にもJRAの売り上げを見てみると、ウマ娘特需があったとは明言しにくい結果となっているという……。

「前提としてJRAの発表した売得金(勝馬投票券の発売金から返還金を引いたもの)額によると、最も売り上げの少なかった平成23年(2011年)の2兆2935億7805万3600円から、令和3年(21年)の3兆911億1202万580円までの10年間は、前年比プラスで数字を伸ばし続けています。ですが、各年で3~4%ずつとほぼ横ばいで上昇しているため、爆発的に数字が伸びているわけではありません。これはウマ娘がリリースされた令和3年の売り上げも例外ではないため、ウマ娘の登場がJRAの売り上げに大きく寄与したとは、少々言い難いかもしれませんね。実際ウマ娘効果はあったのでしょうが、それにも増して競馬界で動く金額はとてつもなく大きいのです。数万人規模の競馬人口が増えたとしても、競馬界全体で見ると微々たる差にしかならないのだと思います」

 生駒氏はゲームの人気が確かなものだとしても、それが現実の競馬の売り上げに直結しづらい背景には、コロナ禍の影響も大きいと指摘する。

「JRAは現在、コロナ禍の影響で競馬場への入場制限をかけています。一応、ネット上で事前に入場券を購入して競馬場で観戦することはできますが、今現在競馬場に多くいるのはディープな競馬ファンばかりです。ウマ娘から競馬を知ったライト層は、このコロナ禍に出かけてまで競馬場に駆けつけるという選択肢はまだないのかもしれません」

 くしくもコロナ禍のタイミングでブームが到来してしまったウマ娘。たしかにJRAの出す数字を見ると、ウマ娘が競馬界の利益に大きな影響を与えているとは現時点では言えないのかもしれない……。だが、ウマ娘が盛り上がりを見せる今こそJRAとウマ娘がコラボキャンペーンを展開すれば、売り上げアップを期待できそうに思えるのだが。

「おっしゃるようにJRAは一般的に知名度がある『新世紀エヴァンゲリオン』や『機動戦士ガンダム』シリーズなどのアニメ作品とコラボするなど、競馬のライト層に向けたプロモーションを多く打ち出してきた実績があります。だからこそ“なぜウマ娘とコラボしないのか?”と疑問に思われるかもしれませんが、コラボに慎重な姿勢でいることに鑑みると、まだまだ同作の一般的な知名度はそこまで高くない、と思われているのかもしれませんね」

 俳優の吉田鋼太郎、中村倫也を起用したCMや2月15日より開始したファミリーマートとのコラボなど幅広いプロモーションを続けるなど、着実にブームを広げているウマ娘。だが、世間的な認知度はまだまだこれからなのかもしれない。しかし、競馬という競技の認知を広げ、多くの新規競馬ファンを得るきっかけを作ったゲームだということは、多くのウマ娘ファンが譲れない部分でもあるだろう。

「当初、競馬関係者の間では自分たちの愛した競争馬たちが美少女化することに抵抗を示す人は少なくありませんでした。ですが、ゲームの内容を見てみると、競馬ファンや関係者たちを納得させる、競馬へのリスペクトに溢れたコンテンツであったため、徐々に評価する声が多くなっていったのは確かです」

 事実、ウマ娘は競馬に対する愛が深い作品として知られている。ゲーム内に登場するキャラクターはモチーフとなった史実の競走馬を基にして設定やストーリーが作られており、ウマ娘ファンのみならず、競馬ファンからも評価は高い。 

 そして、冒頭の後藤理事長の発言のように、ウマ娘は業界全体でも無視のできない存在になりつつあると生駒氏は語る。

「現在のウマ娘では馬主さんが許可を出していないなどの理由によって登場していない史実の名馬たちがまだまだ存在します。ですが、今後のCygames(ウマ娘の開発元)の展開や交渉次第では登場する可能性がゼロではないです。もっと世間的に認知度を深めていけば、“うちの馬も出すか”と決心する馬主さんが増える流れはあり得るかと思いますよ」

 このままウマ娘の知名度が広がっていくと、ゲームにはまだ登場していないディープインパクトやオルフェーヴルなどの歴史的名馬たちの実装も夢ではないかもしれない。そうなれば、ウマ娘から実際の競馬に興味を持つ人々がこれからもどんどん増えていく可能性はあるだろう。ウマ娘の今後に期待したいところだ。

(取材・文=文月/A4studio)

A4studio(編集プロダクション)

2012年設立の編集プロダクション。経済、ビジネス、芸能、エンタメ、サブカル、ファッション、恋愛などのジャンルのコンテンツ制作を行っている。A4studio

えーよんすたじお

最終更新:2022/04/22 22:30
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