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素人が決して手を出してはいけない「イジリ」芸の本質「信頼関係」では許されない

文=檜山 豊(ひやま・ゆたか)

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「イジリ」とは”他人をもてあそんだり、困らせたりすること”と辞書的にある。

 この意味を考えるとと決して良い行いではないことはすぐわかる。だが、芸人はこの「イジリ」を活かして笑いを起こすことがしばしばある。

 いじられキャラの芸人をいじってみたり、お客さんを笑いやすくするために「客イジリ」というテクニックを使うこともある。僕も芸人をやっていたとき、テレビ番組の前説で良く客イジリをしたものだ。ちなみに前説とは本番前にお客さんの前に出てフリートークやネタを行い笑いやすい空気を作るという仕事のことを指す。

 この「客イジリ」というのが結構、難しい。ただいじればいいというものではなく、”お客さんを傷つけない”というのが大前提なのだ。お客さんをいじる以上、そのいじられたお客さんすらも笑わせなければ「客イジリ」として成立しない。何故ならひとりでも不愉快なお客さんが客席にいると、その不愉快さが他のお客さんに伝染してしまい、笑いづらい空気になってしまうからだ。

 それなので、いじられた人も笑わせる覚悟が無ければ、簡単にお客さんをいじってはいけないのだ。

 では芸人同士のイジリはどうだろうか? 僕が芸人をやっていた時代は今から10年以上も前になるので、多少感覚のズレがあるかもしれないが、芸人イジリは客イジリほど繊細なものでは無い。大抵いじられる芸人は、先ほども書いたが「いじられキャラ」というキャラクターである場合がほとんどで、商売としていじられているので慣れている。それなので、どんなイジリ方をされても大概、笑いに変えてくれるのだ。まさにいじられのプロといったところだ。

 ただし、客イジリより繊細ではないからと言って、何でもかんでもいじっていいわけでは無い。芸人にも暗黙のルールがあり、相手が面白く返せるような部分をいじらなければならない。つまり相手が返せない部分をいじってしまうと笑いにもならないし、空気が読めない芸人というレッテルを張られてしまう。芸人界の「イジリ」は、イジリのプロといじられのプロで成り立っている、というわけだ。

 ただこの「イジリ」という笑わせ方は意外と簡単に見えてしまい、一般の方でも真似してしまう人がいる。これは本当に怖い事だ。

 本人は「イジリ」だと思っていてもやられている方は「イジメ」と認識していたり、最初は軽い「イジリ」だったのが、笑いが欲しくなり段々エスカレートしていき最終的に「イジメ」に発展するケースもある。

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