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寺嶋由芙さんインタビュー・後編

寺嶋由芙が「アイドル戦国時代」「コロナ禍」を経て、今のアイドルさんたちに伝えたい言葉

小さな世界の「アイドル村」になってしまわないために

寺嶋由芙が「アイドル戦国時代」「コロナ禍」を経て、今のアイドルさんたちに伝えたい言葉の画像4

──アイドルが視野を広げることも、健全で持続可能なアイドル活動に必要なことだと改めて感じました。アイドルのみなさんへ、自衛のために身につけておくべき知識などあれば教えていただけますか。

寺嶋:労働に関する法律はさらっておいて損はないと思います。私たちは「個人事業主」として事務所と契約するので、自分で自分を管理する視点は持っていたほうがいいはず。たとえば契約を結ぶとき、それが理不尽なのか/納得できるのか、自分で判断をしなければいけません。責任は自分に返ってきますから、知識があったほうが安心ですよね。今はわかりやすく説明してくれる本や動画も多いので、そういうものを参考にしてみてください。

──先ほど話に挙がった、姫乃たまさんによる『地下アイドルの法律相談』は、アイドルの契約をめぐる事件を数多く担当してきた弁護士の深井先生がわかりやすく説明されています。アイドルという枠組みからは外れますが、上谷さくらさん・岸本学さんの共著『おとめ六法』(KADOKAWA)も、SNSや友人関係といった身近な問題を中心に、女性の毎日を守るための権利や法律、手続きを説明してくれる読みやすい本ですね。

寺嶋:「相談窓口」も、把握しておくのはいいと思います。私はうまくいかなかったけれど、「法テラス」や「法律相談センター」など話を聞いてもらえる場所があることを知っておくだけで心持ちが違いますよね。自分を削らなくてもいい闘い方があることを、わかっていてほしいです。

──ゆっふぃーさんがおっしゃっていた、アイドル業界以外への個人的な「相談窓口」というのも心強いはずですよね。

寺嶋:アイドル業界は特殊な世界に見えますし、その中だけで問題解決しようとしてしまいがち。でもあるとき、友人から転職活動の悩み相談を受けたら、その状況や悩みの種類が私と同じだなと思ったんです。つまり、私たちアイドルも一般社会や企業と同じラインで考えていいんです。世の中が働き方改革やハラスメントをなくすこと、個人の尊厳、多様性を大事にするように変化しているならば、アイドルだって変わっていい。フェミニズムやジェンダーの話も、したいアイドルはしてもいい。小さな世界の「アイドル村」になってしまわないように、新鮮な空気を自分から取り入れていく意識をみんなが持てたら、また新しい働き方、楽しみ方ができるのかなと思います。

──最後に、アイドルのみなさんへ仕事を続けていくこと、アイドルという仕事についてメッセージをいただけますか?

寺嶋:悩んでいる時、一度立ち止まって考えてみてほしいことがあります。アイドルを辞めたいのか、もしくは“今の環境”ではアイドルをやりたくないのか。その二択を間違えないで判断してほしい、というのは強く思います。

 苦労が続くと全部嫌になって、投げ出したほうが楽かもっていう思考になっちゃう。だけど、どうして自分が悩んでいるのか、書き出したり話したり丁寧に考えていくと、改善したいポイントが見つかるはずです。事務所の問題かもしれないし、ファンとのトラブルかもしれないし、自分自身の体調かもしれない。悩みの原因を間違えなければ、自分にとって正しい道は開けていくのではないかと思います。

 私の場合はアイドルを続けたい気持ちが強いので、そのために環境を変えることを選びました。自分の気持ちを大事に、どんなところに行けば/どんな環境になれば自分の理想に近づけるのか。そういうことを考えたことで、自分にとって気持ちのいい働く場所や働く人たちと出会えたと思います。

 あとは、相談相手も間違えてはいけないです。もし、ちょっと違うなと思ったら、セカンドオピニオンのように、別の人に相談をしてみてください。そうすると、自分の気持ちが整理されていくはずです。

──ゆっふぃーさんは「アイドル本人の心身の健康、安全な活動環境を確保し、志のある子が長くつづけられるようにしたい」というご自身の願いを、体現されていますね。

寺嶋:それが、“アイドル戦国期”にアイドルをしていた身として、後輩たちにやるべきことなんだと思っています。年齢を重ねてもアイドルであり続けることを選択しているのだから、下の世代が同じ苦しみを繰り返さないように、アイドル業界が楽しく夢のある場所であれるように、気づきのきっかけになれたら嬉しいです。

(*1)法テラス=日本司法支援センター。国が設立した、弁護士のサービスをより身近に受けられるように支援してくれる団体。相談者の収入額が一定以下の場合、3回(1回30分)まで無料で法律相談を受けることができる。各都道府県の主要都市に設置されており、サイトから予約できる。

 

羽佐田瑶子(ライター)

ライター。主に映画、女性にまつわるインタビューやコラムをカルチャーメディアで執筆。『映画の中の女同士』、QJ webにて漫画エッセイを連載中。興味はジェンダーと岡崎京子と女性アイドルについて。

Twitter:@yoko_hasada

はさだようこ

最終更新:2022/12/07 15:48
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