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宮下かな子と観るキネマのスタアたち37

不妊治療で自身の精子を提供していたおぞましき医師のドキュメンタリー

兄弟が増えるに連れカウントされていき…心をささくれだたせる

 本作では展開が進むにつれ、きょうだいの数がカウントされていく構成になっていて、10を超えたあたりから胸騒ぎが止まらなくなる。カウントが加算されていく毎に悲鳴をあげていた私だったが、ラストの数字を見た時は驚きのあまり言葉を無くした。想像を遥かに上回る数字だった。

 現在不妊に悩む夫婦は多いとされていて、私の知人にも、長年不妊治療に通っている女性がいる。病院から帰ったばかりの彼女が泣いている姿を一度だけ見た事があって、あの時の気持ちは今でも忘れられない。いつも明るい彼女が、治療の成果がなかなか実らないことへの不安な想いを吐露してくれた時のことだった。未経験の私はただ同情することしか出来なかったけれど、いつか将来結婚して子供を持ちたいと思っている同じ女性として、とても他人事には思えなかった。子供を授かる事が出来るのは、当然のことではないのだと、あの時彼女を見て初めて実感したのだと思う。不妊治療とは、心身共に尽力のいる事なのだと、彼女の涙を見て私は知ったのだ。

 日本では婦人科へ行くことさえ、なんとなく躊躇してしまう節があると私は思っている。ここだけの話、私も以前不調があって婦人科の診察を受けた経験があるが、慣れない診察台に身体が強張った。定期的に通い続けている先程話した知人女性の想いや被害者の方々とは到底比にならない私事だが、ただでさえ婦人科は、他の診療科よりもデリケートで精神的に負荷がかかる場所。そこに勇気を出して治療に来た女性たちに、無断で自身の精子を注入するなど、性犯罪と同等、いや、それよりも悪質な行為だ。

 これだけ大勢の心を蝕んだにも関わらず、この医師を罰する法律が存在しないこと、これが今作の問題提起でもある。現在インディアナ州で法案が通り、ドナーを使う人口受精は違法となったのだが、連邦法では規定されていない。未だに解決していない事件である事を、私たちは肝に銘じなくてはならない。

 今は良くも悪くも人々の声が拡散しやすく、大きな波を立てられる時代。被害者きょうだいたちの結束によって、この恐るべき事実がこうしてNetflixにて作品となり、全世界へ広がることによって、新たな波が、法や国を動かすのではないかと思う。勇気ある彼らの行動によって、こうして日本に住む私のもとにも声が届いた。更にこの記事を読んでくださった方に、彼らの声が届いたら私は嬉しい。彼らの傷が少しでも癒えることを、日本から願っている。

宮下かな子(俳優)

1995年7月14日、福島県生まれ。舞台『転校生』オーディションで抜擢され、その後も映画『ブレイブ -群青戦記-』(東宝)やドラマ『最愛』(TBS)、日本民放連盟賞ドラマ『チャンネルはそのまま!』(HTB)などに出演。現在「SOMPOケア」、「ソニー銀行」、「雪印メグミルク プルーンFe」、「コーエーテクモゲームス 三國志 覇道 」のCMに出演中。趣味は読書、イラストを描くこと。Twitter〈@miyashitakanako〉Instagram〈miya_kanako〉

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【アミューズWEBサイト公式プロフィール】

みやしたかなこ

最終更新:2023/02/22 11:30
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