史実でも「八重」は特別な存在だった? 「八重」「比奈」と北条義時、源頼朝との関係

文=堀江宏樹(ほりえ・ひろき)

──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく! 前回はコチラ

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新垣結衣演じる八重と小栗旬演じる北条義時(ドラマ公式サイトより)

 『鎌倉殿』第21回では、北条義時の妻・八重(新垣結衣さん)が、川に流されそうになっている鶴丸という男の子を助けようとして、急流に足を取られ、溺死してしまいました。八重受難のとき、義時(小栗旬さん)は運慶(相島一之さん)が制作中の阿弥陀如来像のお顔を見て、皮肉にも妻の顔と重ね合わせているという、なんとも言えない切ない終わり方でしたね。

 八重が亡くなり、次回予告で比奈(堀田真由さん)が登場したということは、「ヒロイン交代」ということです。偶然にも『鎌倉殿』のヒロインと名前が同じですが、2013年の大河『八重の桜』では主人公・八重(綾瀬はるかさん)の夫が一度変わりました。しかし、大河において「ヒロイン交代」は珍しいという印象です。八重にベタ惚れだった義時はうまく気持ちを切り替えていけるものなのでしょうか……?

 義時が最初の正室となる「姫の前」を娶ることは歴史上決まっているので、もしかしたら八重は早逝するかもしれない、などとこのコラムでも散々お話ししていましたが、その可能性以上に、義時と八重の関係に比奈(=姫の前)が入り込んできて、三角関係が描かれるのかな、などと思っていました。たとえば、頼朝から、元・愛人の姫の前を押し付けられ、義時が拒みきれず、彼女を正室にせざるをえなくなるのかな……という筋書きも想像していたのです。しかし八重がドラマから退場してしまったので、義時や比奈との三角関係は描かれないのですね。うーむ、残念。

“八重”との子を嫡男にした義時、特別扱いさせた頼朝

 比奈という新キャラについて考察する前に、今回は少し八重というキャラについて改めて振り返ってみたいと思います。八重はかつて頼朝の監視を平家から任せられていた伊東祐親の三女とされ、史実の上ではその実在性に疑問もあるのですが、『鎌倉殿』では重要な役割を演じるキャラクターでした。頼朝の次に義時と結婚するという数奇な運命を辿りましたが、人生のステージごとに雰囲気がかなり変わり、大きな成長を見せました。最近では多くの孤児たちの母代わりとして、また義時の妻として、やさしくもしっかりした女性として描かれていたと思います。

 ドラマの中では、八重と義時が正式な結婚をしたのかどうかについて、特に触れられることはありませんでしたが、前回の放送でも「八重は良い妻だ」などと周囲から口々に褒めそやす場面が出てきたので、限りなく正室に近い側室という扱いだったのではないかと思われます。

 また、筆者は以前、側室は正式な妻ではなく、“家のスタッフ”にすぎないというお話もしましたが、中には、妻に迎えたいが、何らかの理由で正式な結婚が難しいという女性を側室にするケースもありました。八重は頼朝に敵対した伊東祐親の娘ですから、ドラマの義時は主君・頼朝に遠慮して正室にはできなかった……という説明をつけることもできるでしょうね。

 史実の義時が、側室・阿波局(ドラマでは八重)との間に男の子・金剛を授かったのは21歳の時です。この金剛こそ、義時の嫡男となる後の泰時であり、阿波局と義時の関係が良好でなければ、側室の子を、かなり早期に嫡男にするようなことはなかったと思われます。しかも、義時は正室である姫の前との間に二人も男の子が生まれていたのに、泰時が嫡男であることには変わりありませんでした。

 加えて、10歳になるかならないかのうちに北条家の嫡男とされた金剛=泰時には、彼を特別扱いするよう、源頼朝が周囲に命じた逸話まであるのです。

 多賀重行という武士が散歩中の金剛とすれ違った際、馬から降りて金剛に挨拶しなかったということがありました。これを目撃した頼朝は、自分の義実家にあたる北条家の嫡男である金剛を、普通の御家人の子どもと同じように扱うのは失礼だと怒り出し、多賀の所領を没収するという事件に発展したといいます(『吾妻鏡』建久3年(1192年)5月26日条)。

 無論、『吾妻鏡』は、頼朝死後の権力抗争を勝ち抜いた北条家主導で編纂された書物ですので、鎌倉幕府の公式史とはいえ、北条家を礼賛する傾向が強くあります。このため、北条家の10歳の男の子に挨拶しなかった罪で所領没収になってしまった多賀のエピソードは創作、あるいはかなり脚色されたものではないか、という指摘もあります。

 しかし、『鎌倉殿』の設定で考えると、本当にそういう事件があったとしても説明がつくような気がするのですね。史実においても八重は頼朝の元妻ですが、ドラマではその後に義時と結ばれ、泰時の母となるわけです。そして頼朝は、義時と結婚した後も八重に強い執着を見せていました。そういう背景があれば、頼朝が泰時を特別扱いせよと命じていても不思議ではないでしょう。(1/2 P2はこちら

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