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映画『HYODO 八潮秘宝館ラブドール戦記』公開記念!

「八潮秘宝館」オーナー兵頭喜貴×都築響一 たまたま、それがラブドールだっただけ

「こんなモノ集めるなんておかしいんじゃないの?」

「八潮秘宝館」オーナー兵頭喜貴×都築響一 たまたま、それがラブドールだっただけの画像7

ーーラブドールはもともと作品の被写体にするつもりだったんですか?

兵頭:写真を撮るために買ったっていうのもあるけど、必ずしもそうだったとは言えません。2000年に、ゴミ捨て場でたまたまマネキンを拾ったことが始まりだったんです。もともとラブドールを買おうとは考えていたタイミングだったんですけど、そのマネキンで写真を撮ったり遊んだりいろいろとやれたもんだから、ラブドールを買うのが後ろ倒しになって。

 マネキンとの出会いから3年くらいたって、そろそろちゃんとオリエントのラブドールを買おうと。当初から3体は買って、3姉妹にしようと決めていました。前からラブドールは欲しかったし、写真も好きだから、それで作品を作ったという感じです。

……でも、いつだったか、オリエントさんのイベントで、当時の新商品だった(身長が)136㎝の“少女タイプ”のラブドールに出会って。その子を一目見たとき、頭のフタが外れるかと思うくらいの衝撃が走ったんですよ。もう、あまりにも可愛いすぎて。その瞬間、「これ買います」って即決してました(笑)。そのときは写真のことなんて関係なくて、ただ「欲しい」という感情でしたね。

ーーラブドールって、セックスだけが目的ではないんですね。

「八潮秘宝館」オーナー兵頭喜貴×都築響一 たまたま、それがラブドールだっただけの画像8

兵頭:もちろんセックスのためだけに買う人もいますよ。若い世代の人たちは基本的にスケベなことしか考えていないから(笑)。

 でも、ラブドールってなかなか自分の思った通りにはならないんですよ。セックスするにはそれなりの準備をしなきゃならないし、後始末も大変。ボディはシリコンなので放っておくと埃や汗やらで汚れていくから、定期的に風呂場で洗わないといけないし。そういうハードルにぶち当たって、売っ払っちゃったり、押し入れにしまいっぱなしになったりとか、脱落していく人が多いんですよね。

 でも一部の人たちは生き残って……だいたいセックスはもう面倒くさくなるんだけど、ラブドールをいろんな場所に連れて行ったり、写真を撮ったりする愛好家になるんです。

 ラブドール愛好家のコミュニティが一番盛り上がっていたのは、2002、2003年くらいですね。ダッチワイフからラブドールへの過渡期がちょうどその頃だったんです。それまではラブドールの素材といえばラテックス(※4)だったけど、90年代の終わりくらいに「リカちゃん人形」のようなソフビ(※5)が出てきて、ラブドール界に革命が起こりました。そのすぐ後、2000年頃には現行のシリコン(※6)が登場していますから、こんなに短期間の内にラブドールの技術革新が急速に進んで、どんどん普及していったんです。

(※4)ラテックス:1982年頃登場。骨格の上にウレタンで肉付けし、表面をラテックスで覆ったタイプ。骨格に関節があるので、ある程度ポーズも変えることが可能。価格は約16万円(当時)ほど。

(※5)ソフビ(ソフトビニール):1999年頃登場。オリエント工業にシリーズが登場し、13万円(当時)ほどと比較的手頃な値段もあり爆発的なヒットに。軽くて持ち運びやすいのも利点。

(※6)シリコン:2001年頃登場。ラブドールの最高級品。56万円(当時)ほどでかなり高価だが、よりリアルな造形が追求されている。

都築:それまでは完全に秘められた世界だったけど、だんだんと外に出てきたんですよね。オリエントさんがイベントや写真展を開いたりして、コレクター同士のサークルが作られたりして。

兵頭:インターネットが普及したことで、コレクター同士がつながれるようになったのもこの頃ですね。

都築:まあ、ネットがあるとはいっても今みたいなSNSなんてないから、ブログとか個人ホームページ、せいぜいミクシィとかで集まってたんです。僕も2、3回、オフ会に参加させてもらったことがあるけど、20~30人のコレクターがラブドールをクルマに乗せてサービスエリアで合流して、どこかの旅館を借し切ってパーティーするとかしてました。意外に若者が多くて、驚いた記憶がある。

兵頭:僕はその頃、先にマネキンに出会っていたので、ちょっと出遅れていたんですが、当時のオフ会は本当にすごい熱量だったみたいですね。ソフビが普及して、軽くて持ち運びやすくなったからという理由もあるだろうけど、ラブドールの顔がそれまでとは比べものにならないくらい可愛くなったのが大きかった(笑)。外に持ち出せるクオリティになったんです。

都築:他人は「ラブドールを集めている=変わっている人」という色眼鏡で見たりするけど、僕はレコードや本をコレクションしている人と何も違わないと思うんです。兵頭くんのことも何回か取材させてもらったけど、“ラブドールを集めるとんでもない変態がいました”って紹介したつもりは僕はありません。
 
 ただ、もしもコレクターの世界に“階級”みたいなものあるとしたら、六畳一間をラブドールでいっぱいにしてるような人は、だいぶ下のほうでしょう。収入のすべてをファッションにつぎ込んで、食うものも食わず、服ばっかり集めてる人も、あんまり評価はされない。だけど、古くて貴重そうなレコードを集めてたり、岩波文庫を1万冊も持ってたりする人は、立派に思われて、世間的な評価も高かったりするわけです。集めているモノでなぜか優劣をつけられているんだけど、それはただの偏見ですよ。僕からすれば、そういう見方をするほうがおかしい。どのコレクターも情熱は同じなんです。それがたまたま、ラブドールだっただけで。

 僕はずっとコレクターのことを取材してるけど、立派なモノをコレクションしている人はあまり追っかけてません。どうせ立派に見えるから。だけど、「こんなモノ集めるなんておかしいんじゃないの?」って言われている人がいるから、「本人を見てみろ、ハッピーでしょ」ってことをやりたいんですよね。

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