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S.S.ラージャマウリ監督インタビュー

『RRR』全世界で大バズり中! あのダンス対決シーンとインド映画の現在地 S.S.ラージャマウリ監督インタビュー

『RRR』とインド映画、アカデミー賞での可能性は?

 

『RRR』全世界で大バズり中! あのダンス対決シーンとインド映画の現在地 S.S.ラージャマウリ監督インタビューの画像7
敵をなぎ倒すビーム!! ©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.

ーー海外のメディアでは、『RRR』が主要部門ーー米アカデミー賞の「外国語映画部門」ではなくーーにノミネートされるのではないか、という話が多数出ています。ラージャマウリ監督ご自身も、その可能性があると思われますか?

 また今後、インド映画が韓国の『パラサイト 半地下の家族』(19)のように、米アカデミーにおいてノミネートまたは作品賞を受賞する日が来ると思いますか?

ラージャマウリ:それは……わかりません。私としても、正直、『RRR』がアメリカを含む西側でここまで商業的に成功するとは思っていなかったのです。

 いいストーリーは国境を越えるとは信じています。ただ、インド、アメリカ、そして日本も、それぞれに感性や文化というものが異なるので、まさかここまで受け入れられるとは思っていませんでした。

 ファンの方々、映画批評家の方々、もしくはセレブリティたちが『RRR』を受け入れ、熱狂してくれました。特にマスコミやセレブの方々がSNSで「#RRRForOscars」と発信してくれたことで、その熱が高まっていると感じます。なんとなく、来年のアカデミーでも、ノミネート、どこかのカテゴリーには入れるチャンスがあるのではないかと期待をしています。

 ただ、これからのインド映画の発展については、こういった現象自体が私にとっても未経験のことなので、この先のことはちょっと読めません。

 

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ラーマ、覚醒!! ©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.

ーーインド映画は世界中で受容され、楽しまれていますが、日本においては、NetflixやAmazonプライムビデオ、Disney+などの配信サービスで、インド映画(北インド、南インド含む)がほとんど配信されていません。これはアメリカやイギリスに比べて少なく、劇場公開も年間で10~20作品あるかないかという状況です。

 ラージャマウリ監督の作品は、日本でもファンを増やし続けていますが、今後、インド映画が日本でもっと一般的になるにはどうしたらいいと思いますか?

ラージャマウリ:日本でインド映画があまり配信されていないという事実を知りませんでした。字幕や吹き替えをつけなければいけない問題があり、それをする価値があるかどうかが判断材料になっているのではないかと思いますが、その事情に関しては、私はなんとも言えません。

 ただ、映画の作り手としては、人間の心情や関係をストーリーとしてちゃんと描けば、国や地域を問わず受け入れられるチャンスはあると考えています。作り手が作品を信じていなければ、配信されたところで届かないと思うのです。

 

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熱い共闘!! ©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.

 ですが一方で、私たちが作品を一生懸命に作ったとしても、プラットフォーム側が日本の人々に届けようとしてくれなければ、そうする術はほとんどありません。これはビジネスの問題で、よいパートナーシップが必要です。

 私の場合は、『マッキー』(12)や「バーフバリ」シリーズで素晴らしい日本の配給会社に恵まれ、成功することができました。それがひとつのきっかけとなって、より多くの日本のファンにインド映画を観てもらえる機会が増えれば、おのずとインド映画も多く配給されるようになるのではないでしょうか。

 私の作品を配給し、日本でのヒットに導いていただいた株式会社ツインの代表・加畑圭造氏に感謝いたします。

 

 

 『RRR』のベースとなっているのは、1920年代のイギリス植民地時代のインドを独立に導いた2人の英雄、コーマーラム・ビームとアッルーリ・シーターラーム・ラージュの物語だ。とはいえ、この2人はリアルでは出会っておらず、今作のストーリー展開は全くのフィクション。「もしもふたりの英雄が出会っていたら?」という寓話なのだ。

 そのため、一部史実とはいっても、自由で大胆なアレンジが多い。2人の英雄が並び立ち、共闘するシーンは圧巻だが、全てが型にとらわれておらず、歴史的背景を知らずともアクション大作として楽しむことができる。2人がかけがえのない友情を育む王道的な感動シーンはどストレートで潔い。それでいて、ブッ飛んだシーンも多く、展開の予想ができない。

ーー本来であれば、フランス映画のヌーヴェルヴァーグやスタイリッシュなモノクロ映画に対して使う言葉かもしれないが、『RRR』の全体に散りばめられているアクションシーンは、ワンカット、ワンカットの見栄えが素晴らしすぎて、「フォトジェニック」という言葉がふさわしい。

 これらは、「インド映画だから」というわけではない。『マガディーラ 勇者転生』や「バーフバリ」シリーズに共通する、ラージャマウリ監督の作家性にほかならない。

 そして、作中曲「ナートゥ・ナートゥ」の破壊力! ダンスシーンがごく自然なかたちでストーリーに溶け込んでおり、作中で描かれる歴史的背景も相まって、カタルシスは絶大。ちなみに、このときのエキストラの人々の動きにも注目してもらいたい。音楽に合わせて自然に体が動いてしまっているかのようで、この現象がスクリーンを通して、こちら側にも伝播してくるのだ。

 筆者も、公式に配信されている「ナートゥ・ナートゥ」や「ナチョ・ナチョ」の動画を気付くとつい再生してしまっている。実際にこれを書いている今も頭から離れず、その中毒性は私生活にも影響を及ぼしている。

『Padi Padi Leche Manasu』(2018)や『Kanmani Rambo Khatija』(2022)などのテルグ、タミル映画にも楽曲を提供するプレイバックシンガー(映画で使われる歌を事前にレコーディングする歌手)、Rahul Sipligunj特有の歌声もあって、インド音楽にまた新たな傑作が生まれてしまった。

 なお、ヒンディー語版はポップ感が増していたり、逆にタミル語版は渋さが増していたりと、それぞれの言語を代表するプレイバックシンガーが参加している。ただの吹き替えではないため、聴き比べてみるのもおすすめだ。

 

 3時間近くの上映時間ではあるが、体感時間はその3分の1。質量ともに映画3本分くらいの満足感があり、常にクライマックス。インド映画の現在地とそのパワーを、劇場で存分に感じてほしい!!

映画「RRR」
絶賛公開中

監督・脚本:S.S.ラージャマウリ 
原案:V.ヴィジャエーンドラ・プラサード 
音楽:M.M.キーラヴァ―二 
出演:NTR Jr./ラーム・チャラン

原題:RRR/2021年/インド/テルグ語、英語ほか/シネスコ/5.1ch
日本語字幕:藤井美佳/字幕監修:山田桂子 応援:インド大使館 配給:ツイン

公式サイト:https://rrr-movie.jp/ 
Twitter:<@RRR_twinmovie

TikTok:<@rrr_movie

©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.

 

バフィー吉川(映画ライター・インド映画研究家)

毎週10本以上の新作映画を鑑賞する映画評論家・映画ライター。映画サイト「Buffys Movie & Money!」を運営するほか、ウェブメディアで映画コラム執筆中。NHK『ABUソングフェスティバル』選曲・VTR監修。著書に『発掘!未公開映画研究所』(つむぎ書房/2021年)。

Twitter:@MovieBuffys

Buffys Movie & Money!

ばふぃーよしかわ

最終更新:2023/02/24 11:40
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