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柴田理恵の“号泣折れ線グラフ”、フジの十八番は歴史と分析?――『私のバカせまい史』

「柴田理恵の号泣」分析がまるでバカリズムの卒業論文

 続いて『バカせまい史』が調査した調査テーマは、「柴田理恵 号泣史」。もう、このフォーカスの仕方だけで悪意を感じる。解説を担当したのは、同番組MCのバカリズムだ。

 今回のプレゼンに際し、『バカせまい史』スタッフはテレビで柴田が泣いた回数の推移をリサーチしている。その結果は、「柴田理恵さんがテレビで泣いた回数」と題した折れ線グラフとしてまとめられ、我々に共有された。

 グラフによると、柴田が初めてテレビで涙を流したのは、1997年放送『すっぴんDNA』(日本テレビ系)という番組だそう。能登半島で過酷な塩作りに挑戦する女性アイドルのVTRを見て、盟友・久本雅美とともに落涙したのだった。

 97年にプロ入り初アーチ(初泣き)を果たした柴田。以降、彼女は覚醒する。翌98年には“涙の祭典”ともいうべき『24時間テレビ』(日本テレビ系)に初出演、特大ホームランならぬ“特大号泣”をやってのけている。

 折れ線グラフを参考にすると、特に“2008年の柴田理恵”は好調だったようだ。1年間で彼女が涙した回数は、実に23回まで及んだ。この年の柴田は、泣きがフル回転だったのだ。でも、なぜ柴田は調子を上げたのか?

「この年は、『奇跡体験!アンビリバボー』、『ザ・ベストハウス123』、『エチカの鏡』(すべてフジテレビ系)など、泣きやすい番組、ど真ん中の甘い番組が多く、それを逃すことなく(柴田さんは)真芯で捉えていました」(バカリズム)

 驚きは、これだけにとどまらない。各番組で、柴田1人だけが泣く割合が59%にまで達したというのだ。少なくとも2回に1回は、番組内で柴田1人だけがべそをかいてたわけである。

「ほぼ、半分がソロアーチなんですね」(バカリズム)

 柴田の泣きを野球に例える解説は、いかにもバカリズムだ。

 さらにバカリは、柴田の涙を段階別に判別。それぞれ「小泣き」「中泣き」「大泣き」「満点大泣き」と名付け、細かくレベル分けしている。それにしても、「満点大笑い」みたいな言い方で柴田の号泣を表現するバカリは悪童である。明らかに、『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)を意識したネーミングだろう。

 もちろん、柴田本人も、泣きのTPOはわきまえている。いつ何時でも、号泣すればいいってもんじゃない。

「(柴田が)ワイプに映っているとき、『満点大泣き』はほとんどありませんでした。これには理由があります。『満点大泣き』は、VTR降りのワンショットに取ってあるんです、もったいないから」(バカリズム)

 大泣きしても、顔がワイプにしか映っていなかったら視聴者へのインパクトは半減だ。世に伝わりづらいし、いくら号泣してもインパクトは薄い。だから、「もったいない」という言い方になるわけだ。

 本人のいない場所で、悪意にまみれた研究成果をプレゼンしたバカリズム。とは言え、彼が発表したデータは緻密で正確だった。まるで、「柴田理恵」を題材にした卒論を聞いているかのような緻密さだった。

テレビの凋落とともに柴田理恵の涙の量は減った?

 アスリートと同じである。運動能力と同様に、号泣のピークも永遠には続かない。折れ線グラフの後半部を見ると、柴田の調子は次第に下がり気味になっていくのだ。特にここ2年(2021~2022年)、柴田はカメラ前で1度も泣いていないらしい。

「悲しいことに柴田さんの涙、ここ数年減少傾向にあります。これは長引く不況により、テレビ業界にも予算削減の波が訪れ、お金のかかる再現VTRや時間のかかるドキュメントVTRが減ってきたことが影響してるんじゃないかと言われています」(バカリズム)

 キツい言い方をすると、テレビの凋落とともに柴田の涙の量も減ったということ? いや、単純に“テレビ出演本数”と“泣きの回数”が比例しただけという気もするが……。

「柴田理恵 号泣史」、興味深い観点だった。想定外に、知識欲が喚起されたのだ。柴田と同様に徳光和夫の涙も数値化してほしいし、『探偵ナイトスクープ』(ABCテレビ)局長時代の西田敏行の泣きにも興味がある。

 ここ最近、昭和~平成初期のテレビ番組を振り返り、考察する番組がとみに増えた気がする。中でも、佐久間宣行&伊集院光による『神回だけ見せます!』(日本テレビ系)は記憶に新しい。『バカせまい史』に勝るとも劣らぬ反響を巻き起こした、意義のあるプログラムだった。

 現実問題、テレビの視聴層として特に分厚いのは40歳代以上の世代だろう。この年代にフォーカスし、局のアーカイブ映像を有効活用する番組づくりは現代的とも言える。

 もちろん、この類いの手法は昔からあった。かつて放送されていた『テレビ探偵団』(TBS系)を例に出すまでもなく、古い番組を掘り起こし、視聴者を懐古主義に浸らせる手法はかねてより業界の定石だ。

 理屈ではわかっているものの、筆者のような中年世代はこういう手法に弱い。まんまと引っかかってしまうのだ。怒涛の「メキシカン・ロック」連弾で味わったお祭り感では、本当に絶頂しそうだったし。

 今後、この手の番組はドンドン増えていく気がする。いつかどこかのテレビ局が、“開局○○周年特番”としてこういう企画をやりそうな予感もしている。

 ただ、一筋縄ではいかないのも事実。データ収集には多大なカロリーを要するし、情報の伝え方も工夫が必要だ。肝は“歴史”と“分析”か? 繰り返すが、『バカせまい史』といい『カノッサの屈辱』といい、この手の番組は意外にフジテレビがうまい。

 

 

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2022/10/14 11:00
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