白鴎大学ビジネス開発研究所長・小笠原教授「勘違いの地方創生」特別編

“巨大イカ像”経済効果6億円で掌返しの称賛を浴びる能登町に聞く騒動の舞台裏

文=斎藤岬(さいとう・みさき)

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石川県能登町の巨大イカモニュメント

 2021年4月、石川県能登町に巨大なイカのモニュメントが設置された。新型コロナウイルス感染症対策として配分された地方創生臨時交付金をつかったこの取組に、「交付金の無駄使いではないか」と批判的な論調の報道が相次ぎ、BBCでも取り上げられるほどの騒ぎとなった。

 当時、本連載でもこのトピックを取り上げている。その内容は、吹き荒れる批判が本質的には”的外れ”であり、本来はもっと奥にある地方創生としての課題にスポットを当てるべきだと指摘するものとなった。

 それから1年以上が経過した今年8月、能登町では「イカキングによる経済効果が6億円にのぼる」という推計結果を発表。この数字を多くのメディアが取り上げ、『情報7daysニュースキャスター』(TBS)では安住紳一郎アナウンサーが「否定的にお伝えして申し訳ありませんでした」と謝罪する事態にまで発展した。

 立案から現在に至るまで、地元では何が起こっていたのか。能登町の地方創生戦略とはどんなものなのか。今回は、「白鴎大学ビジネス開発研究所長・小笠原教授『勘違いの地方創生』」の特別編として、能登町ふるさと振興課 地域戦略推進室へのインタビューをお届けする。

――最初に編集部から、基本的な情報をいくつか質問させてください。まずはあらためて、イカキングが設置されるに至った背景を聞かせていただけますか?

能登町ふるさと振興課 地域戦略推進室・灰谷貴光さん(以下、灰谷) 動き出したのは2020年の6月です。新型コロナウイルス感染拡大に対する臨時交付金の交付決定を受けて、我々に何ができるかを考え始めました。もともと我々が所属する地域戦略推進室では、商工・観光・労働・移住定住を包括した総合戦略づくりを担っています。そして臨時交付金に関しては「感染拡大を防ぐ」「雇用の維持と継続」「経済活動の回復」「さらなる発展」という4つの柱に含まれる事業が交付対象となっていました。3つ目の部分で、コロナ禍で0まで落ち込んだ地域経済が新しい一歩を踏み出すために、必要なものを検討する中で出てきた案のひとつがイカキングでした。

――なぜそこで巨大なイカのモニュメントという案が?

灰谷 まず前提として、イカキングが設置された「イカの駅つくモール」という観光施設の存在があります。能登町北西部の小木地区に立地しているのですが、小木地区では平成26年(2014年)頃から国土交通省の都市再生整備計画事業(旧まちづくり交付金)を使いながら、どうしたら活気ある場所にできるか地元のみなさんと一緒に取り組んできました。その一環として観光交流センターを設けることになり、そこで生まれたのがつくモールです。

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イカスミソフトなどイカにちなんだ商品開発も盛んに行われている。

 ただ、当初は2020年4月開業を予定していたのが、緊急事態宣言の発令を受けて6月に遅らせることになりました。それによって、さきほど申し上げた「経済活動の回復」を柱としたアイデアを考える時期とちょうど重なり、「イカの駅」のプロモーションに活かせるものがいいのではないか、ということになりました。

――当時、能登町はどんな状況に置かれていたんでしょう?

灰谷 全国どこでもそうですが、2020年5月、能登町は観光宿泊客が0になりました。RESAS(※1)をご覧になっていただくとわかるんですが、能登町で外貨を稼ぐ産業の第1位は漁業です。製造業は圧倒的に小さく、その大半は食品製造業、一次産品の加工ですね。それから宿泊・飲食。いわゆる観光業です。特化係数(※)で見ても、観光業は1を超えています。

 イカを含めて、我々も一次産品の商品をこれまでつくってきました。たとえば地元の数馬酒造さんとイカに合うお酒「竹葉 いか純米」を開発したり、地域のおばちゃんたちが普段つくっているイカ料理のレシピを見える化して商品化したり。「イカの駅」ではそうした商品を販売する予定でしたが、観光が0になってしまえば当然それらも売れなくなってしまう。その危機感は非常に強く、まずはここに人を呼び込もうという考えでした。

※1:地域経済分析システム。内閣官房のまち・ひと・しごと創生本部が運用する地域経済分析システム。産業構造や人口動態、人の流れなどに関する官民のビッグデータを集約・可視化している。
※2:域内のある産業の比率を全国の同産業の比率と比較したもの。1.0を超えていれば、当該産業が全国に比べて特化している産業とされる。

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