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野沢直子、発想と生き方がパンクすぎる彼女の今も残る“系譜”

『夢で逢えたら』の二枚看板は松本人志と野沢直子だった

 野沢の転機となったのは、88年放送スタートの『夢で逢えたら』である。ウッチャンナンチャン、ダウンタウン、野沢直子、清水ミチコといった「お笑い第3世代」筆頭の4組が出演した伝説のコント番組だ。

 88年10月~89年3月までは、木曜の深夜2時5分~の枠でスタート。清水が弾くピアノの音色に乗り、他のメンバーが階段から降りてくるオープニングは今でも記憶に残っている。なぜ、幼少期に見る深夜番組はあんなにドキドキしたのだろう? そう考えると、JOCX-TV2(『冗談画報』、『カノッサの屈辱』、『やっぱり猫が好き』等を放送した、かつてのフジテレビの深夜帯の総称)の歴史をいつか深掘りしても面白そうだ。

 そして89年4月からは、土曜の夜11時30分~の時間帯に格上げ。多くの人は、この伝説の“パナソニック枠”(パナソニック1社提供の枠)の印象が強いはずだ。

 当時の土曜の夜は、11時から『ねるとん紅鯨団』(フジテレビ系)が始まり、そこから『夢逢え』にバトンが渡されるという夢のような流れがあった。あの頃、お笑い界で天下を取っていたのはとんねるず。「とんねるず→ダウンタウン×ウンナン」という1時間を、若者がかじりついて見ないわけがない。

 サザンオールスターズ、ユニコーン、リンドバーグといった人気バンドがテーマ曲を担当するオープニングもカッコ良かったし、「サザンがこんな若手の番組の曲を歌うのか!」という驚きもあった。結果、『ねるとん』の相乗効果もあり、最高視聴率20.4%とこの時間帯としては異例の数字をはじき出している。

『夢逢え』は、みどりちゃん(清水ミチコ)やガララニョロロ(松本人志)といった人気キャラクターを輩出。野沢に関して言えば、「もう、なにもかもイヤー!」と泣きながら灯油を撒く、今では絶対アウトなコントのオチを担当していたのが強く記憶に残っている。

 そして人気絶頂の91年、野沢は『夢逢え』を降板。さらに国内の全仕事をキャンセルし、アメリカ行きを宣言した。

 彼女が同番組を振り返る際、必ず言及する事実がある。ダウンタウンらとの共演で、初めての挫折感を味わったというのだ。

「他の5人全員が面白くて、自分だけそうでもない。『みんなの足を引っ張りたくない』と、毎回思ってた」

「テレビに出始めてあっという間に売れて、自分には引き出しがないんだと思った」(野沢)

 後のオリエンタルラジオも下積みのなさに直面し、同種の悩みを抱えていた。いわば、“あっと言う間に売れた人あるある”か? また、清水ミチコも野沢と同じような告白をしており、清水は「他の共演者(野沢含む)がスゴすぎて、収録が憂鬱だった」と回顧している。

 あんなに怖いもの知らずで、イカれていた野沢に、そこまで思わせる環境が恐ろしい。しかし、いち視聴者の思いは野沢とは正反対だった。スタイルの異なる各々の才能をバチバチにぶつけ合い、やり合っていると思っていたのだ。全員で伝説を作っている印象だった。

 特に、その中の二枚看板は松本と野沢。事実、『夢逢え』にスタッフとして参加していた放送作家の高須光聖は、自身のホームページ「御影屋」における鈴木おさむとの対談でこう述べている。

「『夢で逢えたら』っていうのは『野沢直子が売れるための番組』なんであって、番組を引っ張っていくのがウンナンでもダウンタウンでも、それは成立しないんだ、と。あくまで野沢が中心にいることで、番組全体のトーンを保っていてその微妙なバランスを出すべきなんだ、というのが当時あった」(高須)

 野沢離脱後、残る5人で『夢逢え』は続いたが、正直、あまり記憶にない。ただ、番組のテンションが物凄く下がったことだけは覚えている。

 そのままメンバーとして一緒に出演していれば、ギャラも、そして盤石の地位も確保できたはずである。なのに、挫折を感じて渡米を決意する勇気。事実、『SHOW by ショーバイ』や『いいとも』で、野沢はウケを取りまくっていた。
あんなに売れていたのに、そこに劣等感を覚えるのはハイセンスだったとも言える。

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