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『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が熱狂的な支持を得る理由は?

文=ヒナタカ

『アイの歌声を聴かせて』がロングランされる作品になった理由と『水星の魔女』との共通点

 この『水星の魔女』をご覧になった、または興味が出てきた方は、シリーズ構成・脚本を手がけた、大河内一楼という名前を、ぜひ覚えていただきたい。筆者個人は彼を「関係性の魔術師」と勝手に呼んでおり、過去のアニメ作品でも「このキャラを推せる」「このキャラとこのキャラの一方通行の気持ちがたまらん」「ちょっとした言葉にキャラの想いが表れまくって萌える」と思わせてくれる、関係性の「矢印」の構築力が半端ではない作家なのだ。

 さらに、絶対に覚えていただきたい、いやすぐにチェックして観ていただきたいアニメ映画がある。それは、大河内一楼が共同脚本を手がけ、日本アカデミー賞で優秀アニメーション作品賞を受賞した2021年公開の『アイの歌声を聴かせて』だ。

 『アイの歌声を聴かせて』は公開当初の観客動員には苦戦したものの、絶賛に次ぐ絶賛の口コミがたくさんSNSに投稿され、公開から2週間後には東京の劇場では満席に近い回が相次ぎ、約6カ月半に渡って全国各地の劇場で上映が行われるという、オリジナル企画のアニメ映画では異例のロングランを記録した、「愛された」作品になっていたのだ。このムーブメントは、2022年公開の『ハケンアニメ!』を連想させるものだった。

 そして、『アイの歌声を聴かせて』と『水星の魔女』はとても共通点が多い。例えば「(AI)ロボットが当たり前にいる世界観」「学園を舞台にした青春もの&コメディ」「おとなしく見える主人公の少女が実は強い意思を持っている」「対立するようで実は引っ張っていく友達の言動が愛おしい」などだ。中でも「キャラクターがみんな魅力的」であることは、この『アイの歌声を聴かせて』を観た人の多くが絶賛するポイントで、筆者個人としても「一本の映画の中で、これほどまでにキャラクターみんなを大好きになることは、これまでもこれからも、絶対にない」と断言できるほどだった。

 さらには、子どもが大人たちに反抗する物語であり、「大人に問題がある」ことも『水星の魔女』と共通している。例えば主人公の母親は「女子高生型のAIロボットを人間のフリをさせて学校に送り込む」という企業倫理的にはアウトと思えることもしているし、仕事が忙しいとはいえ家事を娘にまかせっきりにしている「毒親」スレスレのキャラクターだ。しかも、物語上では悪役である支社長のほうが、実は「正論」を言っていたりもする。それでも主人公たちが自分たちが信じたことのために、大人たちの一方的な価値観に反旗を翻し行動する様にも大きな感動があったのだ。

 監督および共同脚本を手がけた吉浦康裕は、劇場版も展開した『イヴの時間』というアニメでAIロボットと人間との関係性を描いており、この『アイの歌声を聴かせて』ではAIのポジティブな可能性をさらに深く鋭く見つめていた。その作家性が、関係性の魔術師である大河内一楼と最高の相性であったとも言えるだろう。

 他にも、『アイの歌声を聴かせて』は女子高生AIロボットを演じた土屋太鳳の声の演技と歌唱が最高だったり、ミュージカル映画としてもこれ以上のないクオリティーであったり、ディズニーアニメへの尊いリスペクトがあったり、ネタバレ厳禁の涙腺決壊の感動が訪れるなど、絶賛ポイントは枚挙にいとまがない。筆者個人にとってはぶっちぎりでオールタイムベストを更新した、まだ20回ほどしか観ていないことが申し訳なくなるほどの大傑作であるし、そこまででなくとも高い満足感を得られる可能性は極めて高いのだ。

『アイの歌声を聴かせて』は現在は見放題にはなっていないが、AmazonプライムビデオやU-NEXTなど種々の配信サービスでレンタル中。さらに公開から1周年を記念して立川シネマシティでは11月10日(木)まで上映、新宿ピカデリーの「ライブ音響上映」では11月7日(月)、11月8日(火)、11月9日(水)に上映され、その後も他劇場で上映が行われるので、ぜひ劇場情報をチェックしてほしい。『水星の魔女』はもちろん、『アイの歌声を聴かせて』のファンもさらに増えること、関係性の魔術師こと大河内一楼のすごさを思い知ることを、心から願っている。

 

 

ヒナタカ

ヒナタカ

「ねとらぼ」「cinemas PLUS」「女子SPA!」「All About」などで執筆中の雑食系映画ライター。オールタイムベスト映画は『アイの歌声を聴かせて』。

Twitter:@HinatakaJeF

最終更新:2022/11/06 08:00
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