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『孤狼の血』柚月裕子、最新作インタビュー

『教誨』ふたりの幼児を殺めたとされた死刑囚が最期まで守りぬいた「約束」とは?

なぜ香純は、死刑囚の響子に興味を持ったのか…?双方の内面と向き合う。

『教誨』ふたりの幼児を殺めたとされた死刑囚が最期まで守りぬいた「約束」とは?の画像2
柚月裕子氏

ーー物語の語り手である香純は、一回しか会ったことのない遠縁の響子の身元引受人になったことから、響子について調べる旅に出ることになります。香純はどうしてそれほどまでに、響子の人生に興味を持ったのでしょうか。

柚月 普通の人は事件とか、世間の耳目を集める出来事とは遠いところで暮らしています。香純も基本的には何事もなく日々過ごしてきたのですが、響子の事件と接点ができたときに若干の好奇心や、踏み込んでみたい、という思いが湧いたのかもしれません。あんなふうになりたくないと思う一方で、自分も何かしらのドラマの主役になりたいという思いは誰もが、持っているものだと思います。

ーー柚月さんは香純と響子、どちらがより自分に近いと思いますか?

柚月 響子のほうですね。響子は孤独な人間です。周りに人がいても自分がひとりだと思う類の孤独って特に、物理的な貧困とか身体の病気よりももっとつらく感じられるときがあると思います。私も幼少時から転校を重ねる中で、よりどころのないつらさを経験したこともあって、それを彼女に重ねる部分もありました。

ーーこの小説の中では響子の本当の内面が明らかにされないまま、死刑執行を宣告されてしまっています。現実の死刑制度においても、どうして事件が起こったのかという本当の動機が明らかにならないまま、刑が執行されてしまうことがあると思います。そのような制度に対する問題提起もこの作品には込められているのでしょうか。

柚月 死刑について確たる意見を言えるまでには、私はまだ達していません。ですが事件ってもとをたどっていくと、ずっと昔にさかのぼったところから始まっているのではないか、と思うことがあります。特に、小さい子どもが被害者になった事件は、その加害者も小さい頃に虐待を受けていたことがよくあります。事件を犯した人が生きていた長い時間は、事件とは切っても切り離せないものだと感じます。

ーー書いていて大変だったのはやはり響子の内面ですか。

柚月 小説の中で、響子が本当に我が子を殺めたのかというのは、結局最後まで明らかにされないんです。そこに無理やり答えを出して、殺意があったのかどうかとはっきり書くのは、今回の作品については違うような気がしました。そういうわからないままでラストを迎える小説を書くというのは、結構大変でした。

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