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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】年末年始編

宗教二世の苦悩『REVOLUTION +1』ほか 2022年に話題となった日本映画たち

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タモツ清嵐が安倍元首相襲撃犯を演じた『REVOLUTION +1』

 2022年の国内最大のニュースといえば、7月8日に奈良市で起きた安倍晋三元首相射殺事件に尽きるだろう。安倍元首相を自作した銃で襲った山上徹也容疑者の供述がきっかけで、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と安倍元首相をはじめとする政治家たちとの繋がりが明るみとなった。憲政史上最長となる政権を握った安倍元首相が襲撃された瞬間の映像は、テレビやネットで繰り返し流された。

 この衝撃的な事件を、映画『REVOLUTION +1』として即座に撮り上げたのはパレスチナ帰りの男・足立正生監督だ。若松孝二監督を主人公にした実録映画『止められるか、俺たちを』(18)の脚本家・井上淳一氏と足立監督が3日間で書き上げた共同脚本をもとに、8月末に撮影が行なわれ、9月27日の「国葬」に合わせて、都内のライブハウスなどで約50分版が緊急上映された。

 現在は75分ある完全版が横浜、大阪、名古屋などの映画館で上映中だ。2023年2月に開催される「ベルリン国際映画祭」への出品に合わせて、都内の映画館での上映も検討されている。

 元首相を襲った職業不詳の男・川上哲也(タモツ清嵐)が獄中で、少年期から犯行に至るまでを回顧するという形で『REVOLUTION +1』の物語は進んでいく。哲也が幼い頃に父親は自殺、母親は統一教会に入信し、全財産を献金してしまう。経済苦から哲也は大学進学を諦め、就職もうまくいかない。海上自衛隊に入るが、自殺未遂騒ぎを起こすことになる。

 哲也の心の中はいつも雨が降り続けている。ずぶ濡れの哲也は「俺は星になる」と決意し、統一教会の教祖夫婦と祖父・岸信介の代から統一教会と関係のあった安倍元首相に怒りの矛先を向ける。

 「テロを賛美するのか」という抗議が寄せられ、50分版の上映を9月に予定していた鹿児島の映画館が上映を取り止めるなど波紋を呼んだ問題作だ。もちろん現実世界においては、あらゆる暴力も犯罪も許されるものではない。だが、この事件が起きなければ、政界とカルト教団とのグダグダの関係性はいつまでも暴かれないままだったはずだ。どんなに宗教二世たちが苦しんでいても、政治家も行政も知らん顔で動こうとしなかった。

 現在83歳となる足立監督が撮った映画『REVOLUTION +1』を観て、「犯罪者が美化されている」と感じる人がいれば、それは現実社会のほうが歪んでしまっているからではないだろうか。

 5月に公開された毎日放送制作のドキュメンタリー映画『教育と愛国』でも、安倍元首相がキーパーソンとなっていた。安倍政権下の2006年に教育基本法が改正され、「愛国心」条項が法律に盛り込まれた。教科書を編纂する出版社や教育の現場に政治家や政権寄りの団体からの圧力が掛かり、日本史の教科書の記述内容が変えられていった事実を斉加尚代監督は明かしている。従軍慰安婦は慰安婦、強制連行は徴用や連行に書き換えられていった。「愛国」の名のもとに、歴史は次々と塗り替えられている。

 安倍元首相が望んだ「美しい国」づくりが進められていく中、白昼の射殺事件は起きた。

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