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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.721

中国当局の検閲が2年間にも及んだ犯罪ミステリー『シャドウプレイ完全版』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

中国当局の検閲が2年間にも及んだ犯罪ミステリー『シャドウプレイ完全版』の画像1
「天安門事件」から中国バブルに至るまでの30年の変化が描かれる

 中国のロウ・イエ監督は、中国当局と闘い続けているタフな映画監督だ。中国ではタブーとなっている「天安門事件」を扱った『天安門、恋人たち』(06)は、国の許可が下りないままカンヌ国際映画祭での上映に踏み切り、以降5年間にわたる映画制作禁止処分を喰らった。

 謹慎中も、中国ではやはりタブー視されている同性愛をテーマにした『スプリング・フィーバー』(09)をホームビデオで撮影し、こちらも上映禁止となった。謹慎明けに撮った『二重生活』(12)は表向きは犯罪サスペンスとなっているが、中国政府の「ひとりっ子政策」を揶揄したハードな社会派ドラマだった。

 2019年に中国で公開された『シャドウプレイ』は、製作費12億円を投じたロウ・イエ監督史上最大となる大作映画だ。中国で人気の若手俳優ジン・ボーラン、台湾で大ヒットした青春映画『あの頃、君を追いかけた』(11)のヒロインだったミシェル・チェンらを配役。派手なカーアクションもあるエンタメ作品に仕上げている。

 本作で刮目すべきは、広州で2010年に実際に起きた暴動事件が物語のモチーフとなっている点だろう。中国バブルに浮かれる人たちがいる一方、激変する社会に取り残されてしまった人たちも少なくない。すべてがお金に換算される世の中になり、街も人心もすっかり荒廃してしまった様子を、ロウ・イエ監督は映画化している。

 当然ながら当局から厳しい検閲に遭い、リアルに再現した暴動シーンは大幅なカットを命じられ、ロウ・イエ監督は公開1週間前まで検閲との対応に追われることになった。今回、日本で初公開される『シャドウプレイ 【完全版】』は、余儀なくカットされたシーンなどを復活させたディレクターズカット版となっている。

 物語の序盤で描かれるのが、広州で起きた暴動事件だ。新しい高層ビルが立ち並ぶオフィス街の中に、ぽつんと窪地のように低層の古い建物たちが残されている。バブル景気とは無縁のこの一角は「都会の村」状態となり、古くから住む住民たちが居残っていた。

 補償条件が不十分なため、住民たちは激しく抗議していた。古い建物の撤去に取り掛かろうとする工事作業員や武装した警官隊が入り乱れての大乱闘となる。廃ビルの谷間に瓦礫が渦巻く光景は、さながら戦場のようだ。

 そんな喧騒が続くある夜、再開発の責任者である市役所の職員・タン(チャン・ソンウェン)が廃ビルの屋上から落ち、遺体となって発見される。事故死か自殺か、それとも他殺か。若いヤン刑事(ジン・ボーラン)が捜査に乗り出す。

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