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ドラマ『インフォーマ』10話配信終了後から世界配信開始! その起点となった小説へのこだわり

『インフォーマ』公式サイトより(©カンテレ)

ドラマ『インフォーマ』のNetflix、関西テレビでの放送がスタートし、SNSなどでは「地上波ドラマのクオリティではない」「次回が待ち遠しい!」など、好評の声が続々と寄せられている。さらに、Netflixでは全世界配信が行われることになっていたが、それが同サービスでの「10話配信終了後から開始」されることが発表された。
早くも世界進出が決まった形だが、ここまでの展開の起点となったのが、尼崎出身の著者・沖田臥竜氏の「作品作り」への想い、そして、小説内でこだわった登場人物の「視点」だった。そして、ドラマを楽しむ上でも知っておきたい、小説の読み方や作品の込めた著者の考えとは――沖田氏による『インフォーマ』を読み解くための恒例エッセイ。

各所に繋がれた『インフォーマ』のバトン

 つい先日、監修に入っている、別の映像作品の撮影現場に来てほしいと急遽、お呼びがかかってしまったので、最終の新幹線に飛び乗った。もちろん言いましたよ、恐る恐るながら、依頼してきた助監督に「新幹線はグリーン席にしてほしい……」と。

 ただ、作品作りとは、そういう待遇的な問題が大事ではない。といって、学生時代の文化祭のように無邪気にはしゃぎ合えるとかといえば、もちろん商業なので、そういうわけにはいかない。だけど結局は、作品作りに関わる人々の根底には、作るということがなによりも好きという想いがあるのだ。私もそうなのだろう。

 さて、勢いよくスタートを切ったドラマ『インフォーマ』。おかげさまで、皆さまから絶賛されていて、本当に途中で書くのをやめなくて良かったと感じている。

『インフォーマ』が特別だ、と言いたいわけではないが、私が書くのを途中で諦めていれば、少なくとも『インフォーマ』は生まれていない。出版するにせよ、ドラマ化するにせよ、マンガ化するにせよ、それらのバトンを誰にも繋げなかった。

 書くという作業は文字通り過酷で、出来上がって商品化されない限り、ギャランティなども発生しない。少なくとも、私の場合はすべて納品、入稿が終わってからで、それまでの期間は、もちろん無償だ。そして、完成までの時間がいくらかかろうと、金額は変わらない。

 それでも大学生が自主作品を作るために、バイトしてでも制作費を生み出すように、他の仕事も全力でやりながら、作品作りは寝る間を惜しんでやるのだ。楽しいことなんてほとんどない。でも、いつか完成することだけを夢見て、ペンを握り続けるのである。今日は気分が乗らない……なんて、甘えたことを言っているようじゃ、ゴールなんて辿りつかない。ただ、人々がどうせ無駄だと思っていることのその先を見て、疲労困憊になりながらも書いているのは確かだろう。

心の声を読んでほしい

 あくまで、『インフォーマ』の主人公は、ドラマも小説も木原慶次郎だ。だが私は小説の手法として、使われていない視点を使いながら、木原慶次郎を作り上げている。本来、小説の視点は一人称でも三人称でも、主人公の目線になる。だが、小説で木原の目線になるのは、たった一度だけだ。

 ほとんどは、木原とバディを組む三島寛治の視線か、敵役の冴木亮平の視線を用いている。

 私がこだわったのは、心の声であった。傍若無人に振る舞う木原に対して、三島は内心でどう毒づいているのか。冷酷な冴木は内面では何を考えているのか。そこに焦点を当てて、物語を作ることにこだわった。

 もちろん脚本の叩き台を書く時は、物語の進行上、特定の登場人物に寄らない、神の視点を取り入れるが、文芸と呼ばれる小説では、神の視点を使ってはならない。どういう意味かというと、三島の視点で追いながら、他の登場人物の内面がわかってしまってはならないのだ。これは小説を書く上で基本なのだが、一度だけ毒吐かせてほしい。小説『ムショぼけ』に入った編集者はそれすらわかっていなかった。いや厳密にはわからないのではない。神の視点になっていることすら理解できていないのだ。

 それなのに、編集者は修正を指示してくる。そうなると、苦労するのは書き手である。何度も同じ作業を延々と繰り返しながら、へこたれずに修正しなければならない。物作りにおいて、完璧ということはない。どこかで妥協しなくては、先へなんて進まないだろう。ただ、究極の極地までは最低限、辿り着かなければならない。

 小説の宣伝を何気にしてしまってすまない。ドラマ『インフォーマ』の楽しみ方として、できることならば小説を読んでから、もしくは読みながら観てほしい。物作りは最終的には「妥協」だと書いたが、現在の私の集大成であることは間違いない。もちろんここでとどまるつもりはない。もっともっと吸収して進化させていきたいし、新たな挑戦もしていきたい。

 そのためにも、小説、ドラマ、マンガとそれぞれの『インフォーマ』に携わってくれた人々の想いを乗せて、限界を超えていきたいと思っている。

 Netflixでの世界配信は、10話の配信が終わってからと発表された。韓国も凄いし、ハリウッドももちろん凄い。だが、深夜ドラマのしかも関西ローカルから、Netflixで世界配信され、「日本のドラマは凄い!」言われることができれば、それはもっと凄いことなのではないだろうか。

 私の地元、兵庫県尼崎市、通称「あま」から始まった物語だ。どこまで飛び立っていくのか、見守り続けたいと思っている。

(文=沖田臥竜/作家)


小説『インフォーマ』
沖田臥竜/サイゾー文芸/税込1320円
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週刊誌記者、三島寛治の日常はひとりの男によって一変させられる。その男の名は木原慶次郎。クセのあるヤクザではあったが、木原が口にした事柄が次々と現実になる。木原の奔放な言動に反発を覚えながらも、その情報力に魅了された三島は木原と行動をともにするようになる。そして、殺人も厭わない冷酷な集団と対峙することに‥‥。社会の表から裏まで各種情報を網羅し、それを自在に操ることで実体社会を意のままに動かす謎の集団「インフォーマ」とはいったい何者なのか⁉パンデミック、暴力団抗争、永田町の権力闘争、未解決殺人事件…実在の事件や出来事を織り交ぜ生まれた「リアル・フィクション」の決定版!


ドラマ『インフォーマ』
毎週木曜深夜0時25分~0時55分放送中(関西ローカル)
見逃し配信:カンテレドーガ・TVer
Netflixでは地上波に先駆けて先行配信中
公式サイト https://www.ktv.jp/informa/


ドラマ『インフォーマ』予告映像

桐谷健太演じる主人公で、裏社会・政治・芸能など、あらゆる情報に精通するカリスマ的情報屋“インフォーマ”木原慶次郎と、佐野玲於(GENERATIONS)演じる週刊誌「タイムズ」記者・三島寛治が、警察・ヤクザ・裏社会の住人たちを巻き込み謎の連続殺人事件を追うクライムサスペンス。事件の背後に存在する謎の集団のリーダーで、木原の因縁の相手となる男を、事務所移籍後初のドラマ出演となる森田剛が演じる。

作家。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)はドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)、『ブラザーズ』(角川春樹事務所)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

最終更新:2023/01/26 11:43
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