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バフィー吉川の「For More Movie Please!」#1

『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』この物語は、映画業界の性暴力告発劇だけには留まらない

子どもが大人になったとき、こんな社会じゃいけない……

『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』この物語は、映画業界の性暴力告発劇だけには留まらないの画像4

 本作の主人公のふたりは、子どもがいる母だ。そしてワインスタインの性暴力に異議を唱えたが打ち砕かれ、映画業界では働けなくなってしまった人物として登場するローラ・マッデンも母である。

 ワインスタインの性暴力告発の一部始終を描いたサスペンスでありながら、今作において重要になってくるのは、「子ども」の存在といえるだろう。

 つまり、権力によって支配されるような、女性だからといって下に見られるような世界のまま、次世代の子どもたちに託したくはないという意思が、主人公たちを突き動かしているのだ。そこにあるのが、いわゆる“ジャーナリズム精神”だけではないことが伝わったからこそ、多くの人々の心を動かしたに違いない。

 何かが変わるかもしれないチャンスを見逃して、次の世代に問題を積み残してしまったら、子どもたちに顔向けができない。道を作ってあげることも大人の役割である。

 壮大なスケールの闘いになるかもしれないが、人々を動かす言動力とは。自分の子どもを想う気持ちだけに限らず、人が人を想う気持ちだということを改めて感じられる、そんな作品だといえるだろう。

『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』
監督:マリア・シュラーダー 
製作総指揮:ブラッド・ピット、リラ・ヤコブ、ミーガン・エリソン、スー・ネイグル
出演:キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン、パトリシア・クラークソン、
アンドレ・ブラウアー、ジェニファー・イーリー、サマンサ・モートンほか
原作:『その名を暴け―#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い―』
ジョディ・カンター、ミーガン・トゥーイー/著(新潮文庫刊)古屋美登里 / 訳
配給:東宝東和

バフィー吉川(映画ライター・インド映画研究家)

毎週10本以上の新作映画を鑑賞する映画評論家・映画ライター。映画サイト「Buffys Movie & Money!」を運営するほか、ウェブメディアで映画コラム執筆中。NHK『ABUソングフェスティバル』選曲・VTR監修。著書に『発掘!未公開映画研究所』(つむぎ書房/2021年)。

Twitter:@MovieBuffys

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ばふぃーよしかわ

最終更新:2023/01/28 19:00
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