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足立正生監督インタビュー

足立正生監督が描く「宗教2世」の苦悩 追い詰められし者の決起『REVOLUTION+1』

事件の直後に、「ひとりでもやる」と決めた

足立正生監督が描く「宗教2世」の苦悩 追い詰められし者の決起『REVOLUTION+1』の画像3
写真/石田寛

――2022年7月8日、安倍元首相が奈良で射撃されたニュースは、どのように受け止めたんでしょうか?

 自宅のテレビで知りました。「ん、これは大変なことになったぞ」と思いました。「これで、安倍が死んだら大損害だな」とも思いました。

――足立監督がいう「大損害」とは?

 安倍とトランプが日米のトップに立ったことで、世界の底が抜けた状態になったわけですよ。それまでは影に隠れていた政治的な陰謀も、表に出るようになってきた。そのことに関しては、僕は期待していたんです。安倍は生かしておく必要があったと思っています。マスメディアからは「犯人は知り合いですか?」などと尋ねられました。ふざけんなよと思ったけど、「いや、これは個人的な決起でしょう」と答えていましたけどね。でも、個人での決起の場合、映画として表現すべきだとも考えていたわけです。事件のすぐ後に、映画『止められるか、俺たちを』(18)の脚本を書いた井上淳一くんからも電話があり、「どうします?」と訊くわけですよ。「やる」としか答えようがありません。井上くんたちは関東大震災直後に起きた虐殺事件を扱った『福田村事件』(2023年公開予定)の制作中だったので、「ひとりでもやる」とね。

――山上徹也容疑者は、足立監督の目にはどのように映ったんでしょうか。

 狂気からの犯行ではなく、非常に冷静に犯行を計画していたことはすぐに分かりました。犯行直後の山上は体を押さえつけられ、身動きひとつせず、自分が狙った方向をじっと見つめていた。「あっ、これだ!」と思いました。僕が『略称・連続射殺魔』(69)を撮るきっかけになった永山則夫(1968年に4人を無差別射殺した死刑囚)が原宿で逮捕された瞬間も、まったく同じ表情だったんです。これはやらざるを得ない、絶対にやるぞと、井上くんとシナリオのキャッチボールを始めたんです。

――その結果、3日間で脚本を書き上げ、8月末に8日間で撮り終えることに。

 優雅な時間でした(笑)。

――83歳になる足立監督ですが、いつでも映画が撮れるようスタンバイできているんですね。

 そうですよ。ポスターには「6年ぶり」なんて書かれていますが、ずっと寝てたわけじゃないからね。企画はいろいろ進めていたんですが、ポシャってしまっていたんです。それもあって、これだけはという気持ちで、一気呵成に完成させたんです。それで岸田が国葬にすることをすぐに決めたでしょ? このやろう、と思った。旅券を拒否したのも岸田だったけど、安倍がやっていたことをすべて収奪しようと岸田はしている。じゃあ、国葬の日にぶつけようと決めたんです。

タモト清嵐の出演が決まり、雨が降る情景が浮かんだ

足立正生監督が描く「宗教2世」の苦悩 追い詰められし者の決起『REVOLUTION+1』の画像4
雨に打たれる川上(タモト清嵐)

――山上容疑者をモデルにした川上達也役には、若松孝二監督の『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(08)に出演したタモト清嵐を起用。

 候補は何人かいたんですが、何のけれんもなく「やります」と答えたのは、彼だけだった。山上をモデルにした役をやると今後の仕事にも関わってくる可能性があるから、芸能事務所は嫌がるものですよ。でも、彼は快諾してくれた。『実録・連合赤軍』もよかったし、白石和彌監督の『止められるか、俺たちを』では僕の友人でもある秋山道男をとても可愛く演じてくれた。芝居がうまいことは分かっていました。タモトが出ると言ってくれて、これで決まりだと思いました。配役が決まったというだけでなく、映画として決まったなと思えたんです。僕の頭の中に、川上の部屋の中にずっと雨が降り続けている情景が浮かんできたんです。

――主人公の苦悩と孤高さを感じさせる音楽は、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』でもおなじみの大友良英氏。

 『あまちゃん』(NHK)ですっかり売れた彼は、僕の映画は予算がないことを分かっていて参加してくれた。僕が日本に帰ってきてから撮った『幽閉者 テロリスト』(07)と『断食芸人』(16)も彼が音楽を担当してくれていたので「山上の映画をつくるけど、またやる?」と訊いたら、「やるやる!」とね。脚本を送って「フーガでやりたい」と伝えると、2~3時間でテーマ曲をつくってくれた。でもね、あいつもセンチメンタルなところがあるから、主人公に寄り添い過ぎた音楽になっていたんです。それで、あまり寄り添いすぎないように、もう少しシンプルにと頼んだら、「分かった」とすぐにバンドを編成し直した曲にしてくれたんです。その曲を映画には使っています。

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