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“日本人ガールズグループ”の全米進出成功は夢ではない? XGはラジオチャートでトップ30入り

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公式サイトより

 昨年3月にデビューしたばかりの7人組ガールズグループ「XG」の勢いが増している。

 XGは“日本発”のガールズグループながら、K-POP的なビジュアルとパフォーマンス、ほぼ英語詞となるヒップホップ~R&B寄りの楽曲など、特異な個性を持つ大型新人だ。エイベックス・マネジメントが仕掛けたスター育成プロジェクト(現・Kep1erのヒカルも参加していた)から誕生した。

 K-POPシステムで鍛えられたそのパフォーマンス力もあって、2022年3月発表のデビュー曲「Tippy Toes」のMV(ミュージックビデオ)は2400万回以上再生(4月9日時点/以下同)。特に同年6月に発表した「MASCARA」は大きな反響を呼び、発表して3週間と経たずにMVの再生回数は1300万回を超え、9カ月経った現在は4200万回以上。そして今年1月には2曲の新曲を発表したが、1月25日に公開された「SHOOTING STAR」のMVは3600万回以上、2月13日に公開された「LEFT RIGHT」のMVも2000万回以上と、大きな反響を呼んでいる。

 XGのYouTubeチャンネルの総再生回数はすでに3億7800万回以上で、ジャニーズでもっとも再生されているSnow Manのチャンネルでも総再生回数は2億回に満たないのを考えれば、その数字のインパクトも伝わりやすいのではないだろうか。

 韓国人の父親と日本人の母親を持ち、アメリカで生まれ育ったJAKOPS(元DMTNのサイモン)が彼女たちの総合プロデューサーを務めており、初めてのメディア露出が韓国の人気音楽番組で、以降も韓国の音楽番組がメインとなっているという経緯もあり、“日本人メンバーによるK-POPグループ”として位置付けられることも多い。しかし一方で、ヒップホップのミックステープ文化に触発されたと思しき「XG TAPE」として、海外人気アーティストのトラックを借用したフリースタイル調のラップを聞かせる動画シリーズをYouTubeで展開し、特にJIDやロザリアらのトラックを用いた「GALZ XYPHER」は大反響を呼び、2000万回近い再生数を叩き出した。

 K-POPの影響下にある日本人ガールズグループだが、ヒップホップ/R&B色の強いアプローチも得意とする。日本資本だが、K-POPアイドルを経験したアメリカ育ちの日韓ミックスのプロデューサーが仕切る。こうしたハイブリッド感が、“これまでいそうでいなかった”グループとしてXGを際立たせている(プロデューサーのJAKOPSは、K-POPでもJ-POPでもない「X-POP」を標榜している)。

 そして、英語詞というところからその照準は最初からグローバルに向いていたと思われるが、デビュー2年目にして、早くも全米進出へとコマを進めている。今年1月に発表した「SHOOTING STAR」と「LEFT RIGHT」は、2月21日付の米Spotifyのバイラルチャートでトップ20内にランクイン。「SHOOTING STAR」が最高15位(2月26日付)、「LEFT RIGHT」は最高14位(3月3日付)まで上昇した。

 「LEFT RIGHT」は4月8日付の米バイラルチャートでも20位をキープ、48日間連続でランクインし続けており、2000年前後のUS R&Bを彷彿とさせる同曲が現地で支持されていることがうかがえる(MVも、ファッションやカメラアングル、セットに至るまで、当時のオマージュに溢れている)。

 さらに、3月6日には、アメリカのポップ系ラジオのエアプレイチャート(Mediabase発表)で「LEFT RIGHT」が40位にランクイン。同チャートに日本人女性グループが40位以内に入ったのは史上初のことで、日本語のプレスリリースが出たこともあり、このニュースを知っている人もいるだろう。その後、さらにオンエア数が増えたようで、翌週には35位に上昇。そのまま35位をキープし続けていたが、5週目には32位、そして先ごろ発表された6週目(3月26日~4月1日週)には28位と、ついにトップ30入りを果たしている。

 じわじわとXGへの注目度が上がる中、XGは「SHOOTING STAR」のリミックス2種を4月7日に投下。特に「BARS REMIXX」と題されたほうは、ドージャ・キャットやXXXテンタシオンらとのコラボレーションでも知られる米ラッパー、リコ・ナスティをゲストに迎えており、ファン層の拡大が期待されるところ。

 加えて、アメリカを拠点にアジアの音楽やカルチャーを世界に向けて発信している「88rising」による音楽フェス『Head In The Clouds』が5月にニューヨークで開催されるが、XGは21日公演への出演が決定。「88rising」は強い影響力・発信力を持つだけに、XGの名前はさらに広がることになりそうだ。また、彼女たちがニューヨークに向かうということは、あわせて現地でのレコーディング、ビデオ撮影、メディア露出などのスケジュールも設けてある可能性も高い。リコ・ナスティが参加したMVや、新たなリミックスの制作(特に、好調な「LEFT RIGHT」)などはすでに検討されているのではないだろうか。なお余談だが、「SHOOTING STAR」は、アッシャーの全米12週連続1位を記録した大ヒット曲「Yeah!」などを手掛けたことで知られるJ・キューらが関わっているが、彼はAvex USA所属のソングライターでもある。

 XGが全米市場にどこまで食い込むか注目されるところだが、ここのところ同様に全米や世界を視野に入れた「日本発」のガールズグループも増え始めた。

 ある意味でXGよりすでに“有利”な位置にあるのは、SG5だろうか。LDH所属で、藤井夏恋をのぞくHappinessの4人と、iScreamのRUIによる5人組という構成だが、最大の特徴は『美少女戦士セーラームーン』のIPを正式に許諾を得て使用した『セーラームーン』インスパイアのグループであるということ。SG5は、Sailor Guardians 5の略であり、メインボーカルとみられるRUIがセーラームーンで、SAYAKAがセーラーマーキュリー、RURI(川本璃)がセーラーマーズ、KAEDE(楓)がセーラージュピター、MIYUUがセーラーヴィーナスという立ち位置になっている。

 そして、米事務所Three Six ZeroとLDHの協業で展開されているというのも大きなポイントで、先ほど“有利”としたのは、すでに現地のエージェントと組んでいるという点のことだ。

 Three Six Zeroは、元King & Princeの岩橋玄樹が加わったことでここ日本でも先日話題になったばかりだが、ウィル・スミスやフランク・オーシャン、カルヴィン・ハリスら錚々たる面々を抱える有力事務所であり、SG5のエグゼクティブプロデュースを担当しているのも、Three Six Zero所属のブラッドポップ。今年3月に発表されたデビュー曲「Firetruck」は、ジャスティン・ビーバーやレディー・ガガのプロデュースで知られるブラッドポップに加え、カニエ・ウェストなどを手掛けたハドソン・モホークも共同プロデュースに名を連ねており、彼ららしいフューチャリスティックなヒップホップ~トラップ・サウンドとなっている。おもしろいのは日本語の歌詞も多く、尖ったJ-POPとしても機能しそうなところだろう。

 残念ながらまだXGほどの反響は得ていないが、ブラッドポップやハドソン・モホークらがSNSで彼女たち(というか「Firetruck」)をしっかり宣伝していたことから、従来のK-POPファンとは違う層へのアプローチが期待できる。活動を本格化させていくにあたってThree Six Zeroのサポートは大きな追い風となり得るし、国外での『セーラームーン』人気の高さもある。懸念点は、メンバー全員が(近年のLDHのグループに多い)兼任メンバーであるということで、活動ペースが気がかりだ。特にRUIは、iScreamも2021年にデビューしたばかりで、まだまだこれからという点もある。

 同じLDHでは、オーディション『iCON Z』から誕生したMOONCHILDがまもなくデビューする。ØMIこと三代目J SOUL BROTHERSの登坂広臣がプロデューサーだが、HYBE LABELS JAPANが共同プロデュースで関わっているということで、国外からの注目度も高い。オーディションの課題曲が日本語中心だったため、国内市場向けかと思われたが、5月3日にリリース(4月21日に先行配信)されるデビューEP『DELICIOUS POISON』のトラックリストによれば、リード曲になると思しき「Don’t Blow It!」などには別途「Japanese ver.」も存在しており、「グローバルスタンダードなクオリティ」というØMIの発言からすると、英語(もしくは韓国語)の楽曲になると見られる。

 ティザーなどのビジュアルまわりや、リリーススケジュールなどの売出し方などはK-POP的であり、こちらも新たな“ハイブリッド”なグループとなりそうだ。ただ、気になるのはグループ名。かつてXは、アメリカにすでに同名のバンドがいたためにX JAPANへと改名したという話は有名だが、やはりアメリカにはムーンチャイルド(Moonchild)というグラミー賞ノミネート歴もあるグループがすでに存在する。世界進出を見据えているのなら、そのことに気づいてないはずはないのだが……。

 それにしてもおもしろいのは、SG5にしろ、MOONCHILDにしろ、XGと比較するコメントが散見されることだ。それだけXGが“先行”するグループとしてインパクトが大きかったということだろう。ロック/メタルの分野ではBABYMETALがすでに成功を収めているが、これにXGはダンスミュージックのガールズグループとして続くことができるか。XGの活躍いかんによっては、さらに世界を目指すハイブリッド型ガールズグループが増えるかもしれない。

加賀美ジョン(音楽ライター)

洋邦問わず、音楽にまつわる編集・ライティングで十数年。クレジットを眺めるのが趣味。

かがみじょん

最終更新:2023/04/10 18:29
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