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元芸人が見る『だが、情熱はある』10話

『たりないふたり』の存在が“じゃない方芸人”若林と山里を救った

『だが、情熱はある』オードリーがついに覚醒で盛り上がる…!の画像1
日本テレビ『だが、情熱はある』公式サイトより

「このライブがウケたら何か変わる気がします」

 例え『M-1グランプリ』で準優勝しようとも、自信を持てるとは限らないようだ。売れている芸人さんは、無敵のメンタルでお笑いしてるのかと思っていた。6月11日に放送された『だが、情熱はある』(日本テレビ系)第10話は、自分の形で笑いを取るということの重要性が描かれていた。

 南海キャンディーズ・山里亮太(森本慎太郎/SixTONES)に続いて、オードリー・若林正恭(髙橋海人/King & Prince)も“じゃない方芸人”としての苦悩を味わう。そんな中、二人の才能を見抜いた島プロデューサー(薬師丸ひろ子)により、ついに「たりないふたり」が始動する。

ドラマとしてはいいシーンだが……。

 『M-1グランプリ2008』で特大のインパクトを残したオードリーは一躍時の人に。憧れた“売れっ子芸人”を満喫する若林だが、春日(戸塚純貴)にばかり注目が集まり次第にじゃない方芸人になってしまう。春日の相方として一定の需要はあったものの、どの番組も似たような使われ方ばかりで、テレビの在り方そのものに疑問を持ってしまう。

 確かにあの時期のオードリーは、春日が住んでいた「むつみ荘」のロケばかりだったし、出てくる春日のエピソードも「ペットボトルに飴玉を入れてジュースを作る」「節約のためにシャンプーしながらコインシャワーに向かう」など似たようなものが多かった気がする。そんな中、若林のトーク力が評価され、『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)がスタートする。

 一方の山里は、売れっ子となった相方・しずちゃん(富田望生)への妬みが加速。自分だけピンマイクを外されるなど、ありえない待遇を受けて心はズタズタになっていく。「自分に向いてる仕事をやればいい」と高山マネージャー(坂井真紀)が『スッキリ』(日本テレビ系)での天の声役を取ってくるも、「この仕事やって漫才師って言えます?」と拗ねてしまう。のちに実力を高く評価されるきっかけになった仕事なので、意外な反応だ。

 そんな山里の気持ちとは裏腹に、しずちゃんは高山マネージャーに山ちゃんへの感謝を漏らした。

 「私から解散っていうことはないです。私は山ちゃんが拾ってくれたから今ここにいられるってのはわかってるし…」

 ドラマ的にはいいシーンだ。しかし、あえて言いたいが、気持ちはしっかり伝えてあげてほしいと感じてしまう。筆者は売れない芸人を10年ほど経験しており、お互いの本当の考えに気づけずに仲が悪くなったコンビを山ほど見てきた。売れている方がちょっと過剰なくらい相方に手を差し伸べないと、バランスはなかなか取れない。

 山ちゃんの場合は妬み嫉みがそのまま武器になった芸人なので、下手に歩み寄らないしずちゃんの対応は結果的に正解だったのだが、元々そういう狙いもあったのだろうか。そこら辺は本人じゃないとわからない部分だ。

自分が受け入れられるかどうかの瀬戸際

 じゃない方芸人の二人を引き合わせたのは、プロデューサーの島だった。のちに12年に渡ってライブやテレビ番組で活動するユニット「たりないふたり」を結成するため。島曰く二人は似たもの同士だという。

「世間とどこかズレてる自分が悔しい」
「自分が好きだけど嫌い」
「余計なことまで考えてしまう」
「自意識が強い」
「二人ともなんか足りてない」

 島の言葉に納得させられてしまう山里と若林。二人で番組をやるなど想像すら出来ない状態だったが、島のペースに巻き込まれていく。

 しかし、島のモデルとなった安島プロデューサーが10話放送後にYouTube「日テレドラマ公式チャンネル」の生配信で語っていたのだが、山里と若林のめんどくささは相当だったようだ。

 お互いに目も合わせず、安島を介さないと喋ることもできない。そのくせに出会う前からお互いがお互いを意識する両想いだったという。薬師丸ひろ子が演じる島は優しく導くタイプだったが、モデルの安島プロデューサーは「ウジウジすんな」「気持ちはわかるけど喋れ」とイライラしていたと振り返っている。テレビで明るい姿ばかりを見ている我々視聴者はピンとこないが、山里と若林は想像以上に人見知りで自意識が高いのだろう。

 そんな「たりないふたり」は、まずはライブからスタートすることに。島を交えて漫才の打ち合わせはスムーズに進んでいく。山里はしずちゃん、若林は春日を際立たせるためにネタを一人で書いてきた。アイデアを出し合うことに二人は喜びを感じていた。

 ただ、それでもウケるかどうかの不安は拭いきれない。山里も若林も元の相方の個性が強すぎた。同じ漫才でも自分の笑いをぶつけるのと、個性豊かな相方を通して表現するのではわけが違う。

若林「このライブがウケたら何か変わる気がします」
山里「ドキドキだけど大丈夫。おもしろいから」

 若林にとってこのライブは、自分がこの先お客さんに受け入れてもらえるかどうか、今後の芸人人生において重要なターニングポイントだったのかもしれない。山里も少しお兄さんぶって強がってみたが、おそらく同じような思いだったのだろう。

 ネタ書き同士のコンビは通常なかなかうまくいかない。やりたいことも違うし、尊重しあっても細かいところでどうしてもズレが生じてしまうからだ。結果、妥協案を探り合うような格好で中途半端になることが多くなる。「たりないふたり」の場合は、元のコンビで自分を出しづらいストレスがあったのかもしれないし、期間限定のユニットだからと気楽にできたからうまくいったのかもしれない。

 ただ、12年も続いたことや楽しそうに漫才をしている姿を見ると、本当に相性が良くお互いへのリスペクトを持って楽しくやっていたのが伝わってくる。

 ●前回まではこちらから!

 

さわだ(お笑いライター)

1983年、茨城県生まれ。サッカー、漫画、ドラマ、映画、お笑いなど、なんでも書くライター。

さわだ

最終更新:2023/06/19 18:34
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