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元芸人が見る『だが、情熱はある』11話

売れっ子芸人の『M-1』出場、ハイリスクローリターンにも程がある

『だが、情熱はある』オードリーがついに覚醒で盛り上がる…!の画像1
日本テレビ『だが、情熱はある』公式サイトより

 売れてる芸人の『M-1グランプリ』出場。売れていない芸人にとってこれほどうざったいものはない。

 6月11日に放送された『だが、情熱はある』(日本テレビ系)第11話では、南海キャンディーズが7年ぶりに『M-1グランプリ2016』に出場した。売れない芸人を10年以上経験した筆者が、逆の立場から売れっ子・山里亮太(森本慎太郎/SixTONES)の気持ちを考えてみたい。

「僕は覚悟が必要です」の意味

「山ちゃんみたいに頑張りたいから……。お笑い頑張りたいです」

 しずちゃん(富田望生)は、ロンドン五輪に向けて本気でボクシングに打ち込む。あと一歩のところで出場を逃してしまうが、「死ぬ気でやる」ということを初めて知る。しずちゃんは、これまで漫才に打ち込めていなかったこと、山里がどんな思いで打ち込んでいたかに気づいたこと、改めて『M-1グランプリ』に挑戦したいという思いを山里に打ち明ける。

「僕は覚悟が必要です」

 しかし、山里はすぐに返事はしなかった。芸能界で地位を固めている南海キャンディーズにとって、M-1出場はデメリットの方が圧倒的に大きいからだ。決勝に進めても余程の事じゃないと評価は上がらないし、もしスベろうものなら今来ている仕事にだって影響があるかもしれない。

 さらに南海キャンディーズの場合は、不仲や仕事のスタイルもあって日頃からバチバチに新ネタを作って劇場にかけるタイプでもない。新しく自分たちを見つめ直してネタに向かい合わなければならない。なのに、ブレークのきっかけとなった『M-1グランプリ2004』を超えないと誰も認めてくれない。誤解を恐れず言わせてもらえれば、南海キャンディーズは決して正統派ではなく、邪道の部類に入る漫才コンビだ。邪道なコンビはインパクトが強い分飽きられるのも早く、例え7年ぶりに出てきたとしても新鮮味を生むことは難しい。客観的に見て配色濃厚である。

売れてない芸人からの目

 また、作中でも少し触れられていたが、売れない芸人からのやっかみもある。『M-1グランプリ』とは、世間で思われている以上に、売れない芸人にとっては人生を変える大イベントだ。1年間本当にM-1のことしか考えていないやつはいっぱいいる。ただただ実力通り順当に……というわけでもなく、少なからず運や巡り合わせも絡んでくる。そんな状態で特に“M-1ファイナリスト”の称号を欲していないコンビに活躍されるのは、どうしたって腹立たしいし悔しい。10組足らずのファイナリストの席はもちろん、準決勝の50席にだって座ってほしくない。

「なんで出てくるんだよ」
「売れてる奴らは引っ込んでろよ」
「漫才愛とかうぜーんだよ」

 これらは完全にやっかみであり、嫉妬である。どう考えても実力がない奴らが、腕のない僕らが悪い。だから売れている方々はこんな声を無視するべきだ。面白くない奴らが悪いのだから。しかし、人一倍自意識が高く、周りの目が気になる山里だ。どうしたって声は聞こえてしまうし、聞こえなくても自分が疎まれていることを想像してしまうだろう。

 業界での評価を上げるのは難しく、さらには売れない先輩・同期・後輩からは疎まれる。南海キャンディーズに取ってM-1出場は、ハイリスクローリターンにも程がある。そんなことを全てわかった上で、山里は出場を決めた。惜しくも準決勝で敗退するが、山里は不毛な戦いに立ち向かったのだ。

 しずちゃんの思いが嬉しかったのだろう。コンビとしての仕事が欲しかったのかもしれない。しかし、何となくではあるが、山里本人が出たかったのかなーとも思う。毎年様々なスターが誕生するM-1を見て山里が触発されないわけがないからだ。「たりないふたり」では漫才を楽しみ自分を表現している山里だが、やっぱり漫才で戦うとなったらM-1だ。しずちゃんへの想いはもちろんあるのだろうが、やはり南海キャンディーズの面白さ、山里亮太の凄さを知らしめたかったのではないだろうか。

 6月25日、ついに『だが、情熱はある』は最終回を迎える。5万人を熱狂させた「たりないふたり」の解散ライブで、もがき続けた男と男が互いの底の底をさらけ出す。

 ●前回まではこちらから!

 

さわだ(お笑いライター)

1983年、茨城県生まれ。サッカー、漫画、ドラマ、映画、お笑いなど、なんでも書くライター。

さわだ

最終更新:2023/06/26 11:25
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