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『ザ・フラッシュ』チートキャラ・フラッシュの待望の単独作…だけどその使い方に難アリ?

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©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved © & TM DC

 現在、ワーナーのDC映画事情は経営者陣の大幅な入れ替えによる影響を受けて、一番あやふやな時期にある。つまり、DCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)からDCU(DCユニバース)に移行する真っ最中、ということだ。 現在、ワーナーのDC映画事情は経営者陣の大幅な入れ替えによる影響を受けて、一番あやふやな時期にある。つまり、DCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)からDCU(DCユニバース)に移行する真っ最中、ということだ。

 今年8月に全米で公開予定の次回作『ブルービートル』はDCUの世界であることがすでに明らかとなっているが、その一方で「DCエルスワールド」として、そのユニバースに属さない作品群を並行して制作するともされている。

 もともとDCEUに属していない『ジョーカー』(2019)や『ザ・バットマン』(22)などもその作品群に連なることになるのだが、DCEUの作品であっても、興行収入次第では、別のタイムラインとして存続させる可能性が出てきていたりもする。

『アクアマン』(19)の続編で、今冬全米公開予定の『アクアマン・アンド・ザ・ロスト・キングダム』は、実質的にDCEUの最終作とされていながらも内容が調整されるという噂があったり、今作でスーパーガールを演じたサッシャ・カジェが続投に関してのミーティングを行ったともいわれている。

 また、『ワンダーウーマン』(17)の続編は制作中止というアナウンスがなされてはいるが、ワンダーウーマン役のガル・ガドットは、続投に関して「時期が来ればわかる」と、意味深な回答をしている。

 さらに、『ザ・スーサイド・スクワッド』(16)などでハーレイ・クインを演じたマーゴット・ロビーの続投もチラついている。

 そんな複雑な状態の中で公開された『ザ・フラッシュ』。だからこそ、今作をもってDCUとDCEUのユニバースの大幅な“調整”をするべきだったと思えてならないのだ……。

【ストーリー】
愛する母を救うために時空を超えた地上最速ヒーロー“フラッシュ”。“過去”を変えたことで“現在”滅亡の危機に…。かつてスーパーマンが倒したはずの最強の敵・ゾッド将軍が大軍勢を率いて襲来、地球植民地化を始める。そんな彼のもとに、元の世界とは全く別人の異世界の“バットマン”、スーパーマンならぬ“スーパーガール”らも、時空を超えて集結するが…。人類滅亡の歴史を変える超速タイムループ・アドベンチャー!

フラッシュの使い方、それで合ってます?

 DCにおいては、コミックでもアニメでも、先日最終回を迎えたドラマ版でも、フラッシュというキャラクターはタイムスリップ、多次元移動など「なんでもアリ」なチートキャラクター。だからこそ、こういった世界観の“調整”に大きく関わることが多いし、かなり便利な存在だ。

『ザ・フラッシュ』で描かれた出来事をきっかけに、DCUとDCEUのユニバースが分岐したことにしてしまえたはずなのに、なぞそれをやらなかったのだろうか。

 それをすることで、今後、経営陣や方向性が変わったとしても、フラッシュがいつでも元に戻せる、もしくはさらにぐちゃぐちゃにする、というメタ的な構造になって、それはそれでマーベルのMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)とは違って、ある意味、面白味が増すようにも感じられる。

 ある意味では、やったつもりなのかもしれないが、DCUからブルービートルもしくは新しいスーパーマンはチラ見程度に出したほうがよかったのではないだろうか。もしかしたら、スーパーガールがその役割なのかもしれないが。

 ただ、もっとやり方次第で、両方のユニバースの可能性を残しつつ、次作に向かっていけたと思うだけに、正直言って、チャンスを逃してしまったとしか筆者には思えない……。

 とはいえ、繰り返すが、それがいつでもできてしまうのがフラッシュというキャラクターの存在だ。

 競合作品が多い時期の公開と、タイミングが悪かったこともあって、興行的な問題で続編制作も危ぶまれている中ではあるが、フラッシュを演じたエズラ・ミラーは、今後もなんとしても続投させるべきだ。

 ファンとしては、先述したDC映画の“裏事情”が雑念としてどうしても入ってきてしまうため、もう少しうまいやり方があったのではないか? と考えてしまうのは仕方ないのかもしれないが、それをいったん忘れて、1本の作品として観てみれば、決して悪い作品ではない。

 改めてストーリーを考えると、なかなか強引なものにも思えるかもしれないが、いくつか謎も残されていて、全体的にフワっとさせてある。つまり、今後の展開によって、どうにでも料理できる余地があるといったところ。

 そして今作の見所は、なんといってもサプライズのつるべ打ちだ。

 ティム・バートン版『バットマン』(89)、『バットマン リターンズ』(92)でバットマンことブルース・ウェインを演じたマイケル・キートンが再びバットマンを演じるというだけで十分過ぎるサプライズではあるのだが、今作にはそれをも上回る大きなサプライズが多く隠されている。

 フラッシュの醍醐味は、普段観れないキャラ同士の共演でもあるし、ドラマ版『フラッシュ』のイベントエピソード『クライシス・オン・インフィニット・アース』(『クライシス・オン・インフィニット・アース 最強ヒーロー外伝』として単独ソフト化もされている)の中で、DC作品の中でもこれまでつながることのなかった「ヤング・スーパーマン」や「ルシファー」、「ゴッサム・エンジェル」といった作品までつなげてしまったのだから、無数に可能性が広がっている。それ以上のものが観れるのではないか、という期待感もあった。

 実は、『クライシス・オン・インフィニット・アース』に登場するかもしれないと噂になっていたものの、実現しなかった数人のキャストがいたのだが、それが今作で実現したため“かゆい所に手が届いた感”も大きく、ドラマ版とのスケールの違いを見せつけてくれたのだ。

 コミック映画ファンが観たかった光景を見せてくれた作品というだけでも価値があるし、なんなら、そのシーンを観るだけでも劇場に足を運んでもいいと思える。

 そして、最後の最後にオチとして、もうひとつのサプライズがある。

 そのシーンは試写版ではカットされていたため、筆者はそれを観るために劇場にも足を運んだのだが……。ぜひ、その目で確かめてほしい。

『ザ・フラッシュ』
監督:アンディ・ムスキエティ
出演:エズラ・ミラー、ベン・アフレック、マイケル・キートン、サッシャ・カジェ、マイケル・シャノン、カーシー・クレモンズ
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト:flash-movie.jp 
6 月 16 日(金) 日米同時公開
© 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved © & TM DC
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/flash/ 

バフィー吉川(映画ライター・インド映画研究家)

毎週10本以上の新作映画を鑑賞する映画評論家・映画ライター。映画サイト「Buffys Movie & Money!」を運営するほか、ウェブメディアで映画コラム執筆中。NHK『ABUソングフェスティバル』選曲・VTR監修。著書に『発掘!未公開映画研究所』(つむぎ書房/2021年)。

Twitter:@MovieBuffys

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ばふぃーよしかわ

最終更新:2023/06/30 09:00
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