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ベテラン芸人があえてスーパー銭湯で下積み?異色のお笑いユニット「強烈」とは

ベテラン芸人があえてスーパー銭湯で下積み?異色のお笑いユニット「強烈」とはの画像1
YouTube」より

 どんな仕事でも「下積み」という時代がある。この「下積み」という時代を皆さんはどのように思っているだろうか。人によっては「スキルの獲得」を目的としたものと認識している人もいるかもしれないが、たぶんだが下積み時代にスキルの獲得をするのはかなり難しい。そもそもスキルというのはある程度知識を持った状態で本番に近い経験を行ってこそ培われるもので、本業に対する雑用のような段階では身につかないものなのだ。

 では何のために「下積み」をするのか。僕が思うに、職場において自分の位置を確立する為なのではないだろうか。例えば同じ職場の先輩や上司との信頼関係を構築したり、店外の人脈を広げる為の準備期間といったところだ。

 これは聞いた話だが、修行をするようなお店の場合、ある程度経験を積み、ブランド価値を下げないと信頼してもらえると暖簾分けという形を取り、自分の店が持てるようになる。その際にお客さんの一部を暖簾分けした店に与えて、開店当初の運転資金の確保をしてくれるそうなのだ。そういった意味でも下積みをしっかり経験し、信頼関係を築くことはとても大切で、ないがしろに出来るものでは無い。

 しかし昨今一部の成功者たちからは「下積み不要説」も唱えられており、ある程度才能やそれなりのシステムがあれば下積みなどなくても成功すると言われている。この持論を信じ、自分にもできると思う方もいるかもしれないが、ハッキリ言って、運や才能だけで仕事が長続きするということはほとんどあり得ない。仕事を初めてすぐに認められたとしても、その後挫折をし、そしてまた這い上がるという図式が多く、挫折時がまさに下積み時代となるのだ。

 お笑いでいうと猿岩石で成功をおさめたが、まったく仕事がなくなり、地獄のような日々を送っていた有吉さんや、デビューしてすぐにレギュラー番組を何本も持ち、スターダムに駆け上がったが、1年も待たずにレギュラー番組が減り、苦渋をなめたオリエンタルラジオさんなど、今は活躍しているが、その姿になるまでに時間がかかっている。つまりその落ち込んでいる時代に他の芸人や共演者、スタッフさんたちと絆を深め、本来下積み時代に経験することをそこで経験し、そして這い上がったのかもしれない。

 つまり下積みというのは思っているよりも大事で、才能や運では手に入れられないものを手に入れる為の大切な時代だと思う。しかも芸能界に関しては、この下積み時代に手に入れられるのは信頼関係や人脈だけではなく、応援してくれるお客さん、つまりファンを獲得する可能性もあるのだ。

 その代表格のグループと言えば、4人組ムード歌謡コーラスグループ「純烈」だ。下積み時代に老舗キャバレーや、健康ランド、スーパー銭湯などで営業活動をコツコツと行い、そこから火が付き、「スーパー銭湯アイドル」と呼ばれるようになり、紅白歌合戦(NHK)にまで出場した、まさに下積み時代が全部良い方向へ行った人たちだ。

 もし「純烈」さんに下積みが無かったら恐らく根強いファンはつかなかっただろうし、「スーパー銭湯アイドル」という異名も持てなかった。下積みがあったからこそ成功したグループと言っても過言ではない。そんな「純烈」さんの後を追うお笑いユニットグループが始動したのだ。

 その名も「強烈」。“真剣に大人がふざける、全国のスーパー銭湯を盛り上げるお笑いユニットグループ”というコンセプトを持ち、かつて存在していたツインカムというお笑いコンビの「島根定義」さんを責任者とし、「三拍子・高倉」さん「磁石・佐々木」さん、「ムートン伊藤」さん、「ななめ45°・岡安」さん、そして元トップリードの「和賀勇介」さんという6人のベテラン芸人が集結。

 ちなみに島根さんと言えば、コンビ解散後、紆余曲折がありつつ、芸人を集めてコントライブ「ちゅにっく。」を企画したり、お笑いにこだわったお芝居集団「しまぁ~ん共和国」を旗揚げしたり、さらに崖っぷち№1グランプリ、略して「G-1グランプリ」(当時はジカタ№1グランプリの略)の発起人であったりと、とにかくアグレッシブに動き、やりたいことに対して精力的に動く。この前傾姿勢の行動力には頭が下がる思いだ。

 つい最近TBSで放送された「耳心地いい-1グランプリ」のファイナリストになった三拍子の高倉さんを筆頭に、漫才師からコント師、ピン芸人、そして芸風もそれぞれ異なっている6人が集まり、ひとつの笑いを造り上げる。普通ならバラバラになってしまうように思えるが、芸歴20年越えの猛者ばかりだ。間違いなく他では見ることのできないオリジナリティあふれる強烈ならではの笑いを見せてくれるだろう。

 すでにYouTubeチャンネルの「G-1グランプリチャンネル」において、強烈が始動するという動画が投稿されており、6人の人柄や話した雰囲気などを見ることができ、この普段のやり取りを見るだけで、面白さが垣間見える。期待しても損はないだろう。

 すでにイベントも決まっており、月一定例ライブの第一回が9月21日木曜日に「浅草東洋館」で、そして目的であるスーパー銭湯ライブも9月23日土曜日に「多摩境天然温泉 森乃彩」で開催される。月一定例ライブの方は料金がかかるが、スーパー銭湯ライブはなんと無料で見ることができるのだ。ベテラン芸人たちのユニットを見られるのは基本的に有料ライブなので、このレベルの笑いが無料で見られる機会はそう滅多にあるものではない。もし興味がある方はぜひ見に行ってほしい。温泉に入れた上にライブが無料で見られる。まさに楽しみの宝石箱だ。

 本当なら下積みを積むためにスーパー銭湯などでイベントを行うのが正当な手順だ。しかしお笑いユニット強烈の手順はまるで真逆。十分な下積みを積んだ芸人たちが敢えてスーパー銭湯に挑むという形になっている。若手慣れしている下積みの世界が果たして彼らをどのように受け入れ、どのように評価するのだろう。

 名前の如く強烈な笑いを期待し、今後の進捗報告を楽しみに待つとしよう。

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2023/08/30 19:00
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