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流れ星ちゅうえいが嘆いた「チケット7枚しか売れてねぇ」問題発生の原因

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Getty Images

 僕のコラムでは時折、エンタメにおける「チケット」をテーマにすることがある。今回もチケットに関するコラムを書くのだが、今月25日にとある投稿が話題となった。

 不仲キャラでお馴染みとなったお笑いコンビ、流れ星☆のちゅうえいさんが25日に「X」(旧ツイッター)を更新した。内容はちゅうえいさんが出演するトークライブに関することだった。

 「おいおいおい!今日19:30からライブやぞ?KOC準優勝の和田と野田ジャックバウアーの岸ガンダムのちゅうえいが出るのにチケット7枚しか売れてねぇぞ?どうなっとるんや東京お笑い界?このままやとこのライブが大人気になった時に今日来てくれたお客さんが”神セブン”って呼ばれるようになるぞ?」と呟いたのだ。

 内容としてはこの日、昭和53年生まれの芸人によるトークイベント「53会(ゴミ会)」が開催される予定で、そのチケットが7枚しか売れていないという嘆きだった。このトークイベントの出演者は、話題となった投稿をした「流れ星」ちゅうえいさん、キングオブコント2013で準優勝した「鬼ヶ島」の和田さんと野田さん、そしてR-1グランプリで三度もファイナリストになっている「どきどきキャンプ」の岸さんというなかなか豪華な面子だ。

 さらにこのトークイベント自体は2回目となっているので、前回イベントに来た人がリピートしてもおかしくない。なのに当日に7枚しか売れていないという異常な事態となってしまったのだ。

 このイベントが開かれる「A Talk Club WOOFER」という会場はキャパ70人。つまり7人しかお客さんが来なければ1割ほどしか客席が埋まらないということになってしまう。ネタではなくトークで進行していくイベントなら、客席の雰囲気はとても重要なものになってくる。

 お客さんの反応を見ながらトークを展開したり、食いつきが無ければ次のトークへ進んだり。アドリブで構成していくイベントはお客さんと一緒に作り上げるといっても過言ではない。そんなイベントでお客さんが7人しかいなければ、間違いなく盛り上がりに欠ける。盛り上がりに欠けている客席は何をどうしてもテンションが上がるわけなく、満席ならウケるトークもややウケ程度になりかねない。そんなライブを2時間近く見ていられるだろうか?たぶん辛い。お客さんだけではなく芸人も、そしてイベントを組んだ会場スタッフも辛い。想像しただけで身の毛もよだつ状態だ。

 しかしこの面子ならある程度チケットが売れると買い被ってしまうのは仕方がないことだ。実際に他のライブでは集客があるのだろう。しかもお笑いライブというのはチケットが異常に安い。お芝居などの舞台は基本的に安くても3000円といったところだろう。しかしお笑いの安いは基本的には1000円程度。もっと安いと無料というライブもあるほどだ。

 これは元々お笑いライブというのは芸人のプロモーションの一環で行うことが多く、不特定多数の方に見てもらう為にチケット代を安くしていた。その名残もあり、お笑いライブというのは金額設定がとてつもなく低いのだ。ちなみに「53会(ゴミ会)」イベントは前売り2000円、当日2500円と他のライブに比べると少し割高だが、この豪華な芸人が見られるなら安いと言っても良い。なのにチケットがあまり売れなかった。

 そもそもなぜこのようなことになってしまったのか? なぜ7枚しかチケットが売れなかったのか?その原因は芸人のチケット販売に対する意識に他ならない。

 もしこれが知名度が少ない役者が行うイベントなら当日7枚しかチケットが売れていないという状況はまずない。何故なら役者たちの基本姿勢として、チケット販売は役者が自ら行うというのが通例となっているからだ。それなりのチケット販売サイトを利用していたとしても、イベントなどは自分の知り合いやファンの方に対して個別に連絡し、チケットを買ってもらうというのが役者の当たり前になっており、そのチケットを販売した枚数で自分のギャランティが変化するのだ。

 なのである程度ギャランティを稼ぐためにも一生懸命チケットを販売するのだ。ではなぜ芸人はチケットを手売りしないか。それはギャランティに直接チケットが影響しないからである。先述したように所属事務所が行うようなライブはプロモーションが目的なので、基本的に芸人はノーギャラである。もちろん今の時代、役者と同じチケットを手売りしてギャラに反映するというシステムを取り入れているお笑いライブもあるが、流れ星☆さんたちの時代はノーギャラだ。

 さらに、もしギャラが出るようなライブだとしても基本的にギャラは固定で決まっており、お客さんの入りに左右されない。なので前時代の芸人たちは手売りをするということをしないのだ。

 これは芸人が悪いわけでは無い。そのようなシステムが構築されていないことに問題がある。今はある程度自主ライブが多くなっているので、役者のような手売りシステムを行うライブも多いが、それでもまだまだ手売りに対しての知識や情報が薄い。さらに手売りをする場合、知り合いに連絡することが多く、ファンの人たちは買ってくれるだろうと高を括っているのだ。僕自身は芸人も経験し、そして劇団も主宰しているのでわかるのだが、明らかに役者のチケット販売方法の方が集客できる。もちろん知名度が低いというのが前提だが。

 ここからは芸人や役者の為の文章になってしまうが、本当にチケットを売りたいなら、芸人は「プライドを捨て」、役者は「勇気を出す」べきなのだ。芸人というのはファンの方に対してある程度距離を置く。これは当然のことで、追いかけられる存在になるには一定の距離を保たなければならないのだ。

 しかし距離を置き過ぎてはいけない。本当に集客をしたいのなら、自身のSNSをフォローしてくれている人全員へチケットの連絡をするのだ。もちろんひとりひとりに。自分が応援している人から連絡が来たらファンの人は嬉しいはず。そして条件が合えばイベントに来てくれる。1000人に連絡すれば10人くらいは来てくれるかもしれない。そういう意識を持つことが大切なのだ。この方法を使えば出演者が4人なら少なくとも40人は来てくれる。これぞファンがいる芸人が自分の価値を存分に使った方法なのだ。

 それに対して役者は自分にファンがいるということを意識することだ。役者は基本的に知り合いにしか手売りをしない。それは関係者だったり役者仲間だったり。なぜかファンには目もくれず関係者にだけ連絡し、関係者を大切にするのだ。これは大きな間違いで、関係者など何の役にも立たない。本当に大事なのは無償で応援してくれる人なのだ。

 なので来場してくれた関係者とダラダラ話をするくらいなら、見に来てくれたファンの方、応援してくれる方と少しでも話をするべきなのだ。ちょっと脱線してしまったが、関係者ではなく自分にもファンがいるかもしれないという意識を持ち、どんな反応されるかわからないが、勇気を持ってフォロワーさんに連絡するのだ。そして分母を増やしていくのが役者がチケットを伸ばす方法なのだ。

 もちろんこれは自分を応援してくれる人、つまり「ファン」がいる前提の話だ。なので「俺ファンいないし」「ファンがいないから意味ない」と思う人もいるかもしれないが、それはファンを作ろうとしていないからいないだけで、必死にファンを作る作業を怠っているだけなのだ。一生懸命活動をして、一生懸命自分の魅力を発信していけば必ずファンは出来る。

 「私なんて……」と自虐する暇があったら、今すぐ自分の魅力を見つけるのだ。もちろん自分で見つけるのは大変なので、近しい人間に「私の魅力ってなんだろ?」と聞いてみるのがベストだ。そして自分の魅力の統計がとれたらそれをどう発信するか考える。そして試行錯誤しながら発信し続ければ必ずファンは獲得できるのだ。すぐに結果を求めないことも大切だ。

 「ファン」という言葉を使うとエンタメ業界以外の人は関係ないと思うかもしれないが、自分を応援してくれる人に業界は関係ない。一生懸命自分が出来ること、つまり魅力を発信し、同じ職場で応援してくれる人を増やせば、仕事というのは間違いなくやりやすくなるのだ。なので、まずは自分の魅力を気長に探してみよう。話はそれからである。

 それにしてもチケットが7枚しか売れていないなんて、どうなってるんだ今の東京お笑い界は。

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2023/09/28 19:00
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