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小説、ドラマで話題を呼んだ『ムショぼけ』がマンガになって帰ってきた

コミック『ムショぼけ ~懲役たちのレクイエム』より

サイゾーから出版された小説として、初めてドラマ化された『インフォーマ』。その続編『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』のリリースが決定した作家の沖田臥竜氏による不定期コラム。今回は、沖田氏にとっては、ひときわ思い入れの強い作品という『ムショぼけ』について綴る。小学館から小説が発売されるやすぐにドラマ化が決定、続編小説は当社から出版された同作が、今度はマンガに!?  そこに行き着くまでの一筋縄に行かない道程と想いとは?

小説のギャラは0が一つ少なかった……

 2021年、ドラマ『ムショぼけ』(朝日放送)のオールアップの日、私は撮影現場でこんなことを口にしていた。

 ーあのときの自分自身に今の姿を見せてやりたいー

 と。

 ふと思うことがある。もう『ムショぼけ』を超えるような情熱を持って物語を作ることはできないんじゃないかと。もちろん、これまでの作品でもこれからの作品でも、いつも高い熱量を持って書くことに変わりはないのだが、私自身が生み出した作品として、『ムショぼけ』には特別な想い入れがあったのは確かだろう。

 25歳のときに初めて書いた小説のタイトルが『ムショぼけ』だった。内容は今のものとは全く違うが、あの頃の私はとにかく未来に光りなんてなくて、のたうち回りながら、無知ゆえだろう、本を一冊出せれば、世の中が変わると本気で思っていた。

 もし今の姿を、あの頃のおバカさんな自分に見せてやれたら、なんと言うだろうか。結果だけを見れば、おバカさんゆえに「大成功じゃん!」とはしゃいで見せるだろう。だがである。もしも言葉として伝えることができれば、当時の自分の無能ぶりに、たらふく文句を言ってしまうかもしれない。

 「世の中、本を1冊出したぐらいじゃびくともするかいっ! それにな、お前が思っていたよりも、ギャラは総じて、ゼロが確実に一つは少ないぞ!」

 そして吐き捨てるように「世の中はな、やっぱりお前にそんなに甘くないぞ」と告げてしまうだろうな。でも最後に「頑張ってたら、やっぱりええこともあるからな」と伝えてあげるだろう。

 『ムショぼけ』を出した時期から2年ほど、タワーマンションにも住んでみた。実は、ドラマ『インフォーマ』の第1話の撮影でも、その部屋は使われている。ベンツにも乗りつつ、そんな家賃の高いタワーマンションに住んでみて思ったことは、ただただ不便だった……という感想しか見つからなかった。だってエレベーターの乗降にバリバリ時間もかかるし、車にちょっと忘れものなんてしてみろ、取りにいくだけでも地獄だぞ。地獄……。

 すごいだろうと自慢したいのではない。本気で自慢したいときは私は誰に遠慮することなく、他人が引くくらい自慢してやると言い切ることができる。

 結局、人生なんてものは、見ているのと、実際やってみるとでは大違いということだ。その感覚はある意味、達成したときに虚無感として目の前に現れてくるのかもしれない。すまぬ、小説家ゆえにすべての表現が純文学すぎて……。

 根拠のない前向きな発言というものが、私はひどく嫌いなのだが、そうした感覚をもし前向きな言葉に変換させるとすれば、「まだまだ自分自身に満足できていないからこそ生まれる感覚なのだ」といえるのかもしれない。だからこそ、私は文句を言いながらでも、ずっと働けているのだろう。

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