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小説、ドラマで話題を呼んだ『ムショぼけ』がマンガになって帰ってきた

『ムショぼけ』で全く違う世界観を書き下ろします

 今年前半、秋田書店からマンガの原作の仕事の依頼が来たとき、私は小説2冊の書き下ろしと別作品のマンガの仕事、そして毎月の連載を6本抱えていた。

 そこにマンガの原作の依頼である。原作といっても書き下ろしだ。もちろん、どんなときでも、私はやってやれないことはないと言うことを知っている。

 よくいるだろう。今、小説を書いているからとか原稿を切った張ったしてるからとかの言い分を持ち出し、他の作品はできないという書き手が。それを見聞きするたびに、私はいつも思う。毒舌なのは生まれつきなので、あわよくば許してやってほしい。どうせろくでもないような、取るに足らないものしか書けないのにマイペースだよな~と。

 バカにしているのではない。バカだと思っているだけだ。これも許してやってほしい。

 無論、物語を生み出すということにおいての苦悩は承知の上だった。だが基本的に仕事を「忙しい」という理由で断るという概念が私にはない。だって純粋に仕事があるだけ、ありがたいじゃん。断る理由なんてないよ。

 マンガの担当である東大卒の編集者のI氏と向き合い、彼から『ムショぼけ』のような作品をマンガでつくりたいという依頼内容を聞いたときには、私は自然にこう言っていた。

「だったら『ムショぼけ』のような作品を作るのではなく、『ムショぼけ』で全く違う世界観を書き下ろしますよ」

 もちろん、お前、本当に書けるんだろうな、という思いが脳裏をかすめた。だが小説2冊とドラマだけで『ムショぼけ』の世界を終わらすには、まだ物足りないとずっと感じていたのは確かだった。

 そこからは地獄のような、苦痛との共同生活であった。2冊同時に小説を描き下ろしながら、その合間で10話分のマンガ『ムショぼけ』用の原作を書いていたのだ。なんだったら、脚本の叩きなんかも別で2本書いた。

 はっきり言って、ノイローゼになるかと思ったぞ。同時に手掛けていた作品の登場人物数だけで、三國志級である。何十人と名前や設定を考えなくちゃいけないのだ。脳内はずっと「潰れますよ~」と悲鳴をあげ続けていた。

 なんだかこんなことを言えば、売れっ子作家みたいで恐縮だが、売れていれば、こんなに仕事をしていない。なんとなく仕事が途切れず、少しずつだけど頑張った分だけ仕事量が増えているという言葉が適切だろう。

 他の書き手は知らないが、私は物事のすべてを小説にしながら生きている。例えば、車のハンドルを握れば、脳内では勝手にー車のハンドルを握ったーと活字化されている。そろそろこんな仕事熱心な私に、芥川賞あたりをあげたくなってきたのではないだろうか。

『ムショぼけ』は尼崎で生まれ、本当にたくさんの人に愛され、育ててもらった作品である。デビューから8年15冊目にして、名刺がわりの小説を作ることができた。携わってくれた全ての人々のお陰で誕生した『ムショぼけ ~懲役たちのレクイエム~』は、今、マンガとなり、作画を担当しれくれた信長アキラ先生と秋田書店のI氏の手によって、マンガ界で躍動し始めようとしている。

 売れたら良いなというよりも、ずっと続いてくれたら良いな、ずっと『ムショぼけ』を書き続けていけたら良いなと思っている。その感覚は作り手というよりも、どちらかと言うと読者に近いといえるかもしれない。

(文=沖田臥竜/作家)

■『ムショぼけ ~懲役たちのレクイエム~』
ヤンチャンwebで連載中
https://youngchampion.jp/series/79e7ead922127

自称元ヤクザのアウトロー系YouTuber・ヒロは、十数年の服役を経て大阪刑務所より出所したある男に会いに行く。その男の名は陣内宗介。時は遡り平成9年。そこには徳島組の組員として熱く奔走する彼らの姿があった…。舞台は兵庫・尼崎。懲役を終えた一人の男の青春と懺悔。


■小説『ムショぼけ』(小学館文庫)
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https://www.amazon.co.jp/dp/4094070613/

■小説『ムショぼけ2 ~陣内宗介まだボケてます~ 』(サイゾー)
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https://www.amazon.co.jp/dp/4866251557/

作家。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)はドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)、『ブラザーズ』(角川春樹事務所)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

最終更新:2023/12/04 16:58
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