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『青天を衝け』で描かれなかった黒船来航のウラ話! ペリーを撤退させた日本人のスゴい交渉力

──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく! 前回はコチラ

『青天を衝け』で描かれなかった黒船来航のウラ話! ペリーを撤退させた日本人のスゴい交渉力の画像1
『青天を衝け』公式HPより

 先週の『青天を衝け』、染料である藍(あい)の話は詳しくわかりましたが、その反面、「黒船来航」にほとんど時間が割り振られませんでしたね~。

 あくまで本作の主人公は渋沢栄一(演:吉沢亮さん)。この時の渋沢は若く、武蔵国(現在の埼玉県)・血洗村で家業の見習いをしていたことを踏まえるとなると、嘉永6年(1853年)の黒船来航問題を詳しくやるのも難しかったのかもしれません。しかし、面白いところなのに、残念です。

 アメリカがどうして日本に黒船を派遣、しかもケンカ腰の交渉をいきなりしてきたのでしょうか。それにはさまざまな理由がありました。

黒船の空砲に慣れてしまった日本人

『青天を衝け』で描かれなかった黒船来航のウラ話! ペリーを撤退させた日本人のスゴい交渉力の画像2
嘉永7年(1854年)横浜への黒船来航(ペリーに随行した画家ヴィルヘルム・ハイネによるリトグラフ)

 黒船来航から約3年前の嘉永3(1850)年12月、アメリカ商船「オークランド号」が漂流中の日本人たちを偶然に保護した事件がありました。しかし、助けられた日本人たちが「日本に戻ったら殺される!」と言い出したので、彼らをサンフランシスコに連れて行ったのです。結局、日本人たちは日本に帰りたがりませんでした。

 もともとは、その日本人たちを日本に送り届け、そのついでに「アメリカは善意ある国だから、貿易をしませんか」とフレンドリーに持ちかける予定だったのです。

 しかし、それはどうやら出来ないということがわかり、今度は真逆の方針……つまり、アメリカの強大な軍事力をチラつかせて威嚇、日本を開国させようという方針に切り替わったのでした。えらい極端ですよね。

 ただ、実際には日本を攻撃することは、ときのアメリカの大統領の命令で固く禁じられていました。だから、くるし紛れで空砲をガンガン撃って見せることしか、担当者のマシュー・ペリー(演:モーリー・ロバートソンさん)には手段がなかったのでした(ちなみに、ペリーの当時の身分は正確には“代将”で、よく言われるように“提督”ではない。話が長くなるので説明は省略しますが)。

 日本に来たペリーの軍艦は合計4隻でした。中には確かに太平洋を渡り、アメリカからやって来た船もありましたが、中国で全艦が集結、その後に琉球王国(現在の沖縄県)を訪問した後、日本の浦賀沖に「突然」やってくるというスケジュールでした。「アメリカから全艦やって来た」と思っている方がおられるかもしれませんが、違います。

 ペリーらは琉球を経由し、江戸にも近い浦賀沖(神奈川県)に姿を現しました。日本は外国船の受け入れ先を長崎と決めていたので、そのルールを意図的に無視するのは、圧力をかける目的です。

 しかし、琉球と同じように、浦賀でも威圧作戦に効果はありませんでした。浦賀の人たちも最初は黒船とその空砲を怖がっていたものの、そのうち慣れてしまったのです。

 それどころか浦賀は近隣地からも物好きな人がやってくる「観光スポット」となり、空砲の音も「花火の音みたいだね~」などと楽しみにする人まで現れる始末で、まったくアメリカ側の思うようには進みませんでした。

 当時の幕府も、かなりの「やり手」でした。

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