日刊サイゾー トップ > 連載・コラム > 連載終了  > 「コント冬の時代」に生れ落ちた寵児 ジャルジャル
お笑い評論家・ラリー遠田の【この芸人を見よ!】第8回

「コント冬の時代」に生れ落ちた寵児 ジャルジャル

bakushoumondainotsu-shotto.jpgジャルジャルの戯(あじゃら) 1/
よしもとアール・アンド・シー

 現代は、テレビ史上でも空前の「コント冬の時代」である。かつては、売れっ子芸人なら必ず自分のコント番組を持っているものだった。毎週大がかりなセットを組んで、それぞれの芸人が本格的なコントを披露していた。

 今では、制作費削減のあおりを受けて、大がかりなコント番組はテレビ界から姿を消しつつある。コスト削減、効率重視が求められている中で、昔ながらの本格的なコント番組を作ることは難しくなってきているのだ。

 だが、コントを作る人が減っているわけではない。若手芸人の中でも、コント志向を貫いている芸人は数多い。そんな中でも、新感覚の秀作コントを量産して、今にわかに注目を集めている若手芸人がいる。それが、ジャルジャルだ。

 先日、彼らのファーストDVD『ジャルジャルの戯1』がリリースされた。このDVDには、ジャルジャルの代表作とも言える9本のコントが収録されている。

 ジャルジャルの2人が見せるコントは、徹底してシンプルな構造になっている。衣装も小道具もほとんど使わず、黒のシャツとベージュのパンツ姿の2人が舞台に上がる。そして、わかりやすい構成のコントを全力で演じ切る。ただそれだけだ。

 例えば、DVDに収録されているコント「理解不能者~野球部入部~」では、後藤淳平演じる野球部の先輩が、福徳秀介演じる新入部員にバットの振り方を教えようとする。だが、福徳はいくら教えられてもバットの持ち方すら理解することができず、赤ちゃんを抱きかかえるように持ったり、見当違いのミスを繰り返してしまう。

 この手の「意識のズレ」を描くこと自体は、コントのネタとしてさほど目新しくはないかもしれない。だが、ジャルジャルが一歩秀でているのは、巧みな演技によって、「バットの持ち方がわからない」というナンセンスな設定に妙なリアリティーを持たせているところだ。

 このコントでは、いつまで経ってもバットを上手く持てない新入部員の福徳に対して、後藤演じる先輩部員が終始もどかしいそぶりを見せている。するとある瞬間に突然、福徳の方がイライラした態度を示すのである。そして後藤に「なんで俺よりイライラしてんの?」と言われてしまう。

 このやりとりが挟まることで、福徳がバットの持ち方がわからないふりをして後藤をからかっていた、という可能性が消えて、彼は本当にバットの持ち方を理解していなかったのだということになる。

 つまり、「バットの持ち方がわからない」という本来あり得ないはずの設定が、少しだけリアルに見えてくるのだ。一見単純な構成のネタの中に、こういう高度な仕掛けをさりげなく忍ばせてくるあたりが、ジャルジャルの非凡なところである。

 この10月から始まった『ザ・スリーシアター』(フジテレビ)というコント番組でも、ジャルジャルは柳原可奈子、フルーツポンチらとともにレギュラー出演を果たしている。ジャルジャルを筆頭にした新世代芸人たちが「コント冬の時代」に終止符を打つことができるのか、これからの活躍に注目したい。
(お笑い評論家/ラリー遠田)

●「この芸人を見よ!」書籍化のお知らせ

日刊サイゾーで連載されている、お笑い評論家・ラリー遠田の「この芸人を見よ!」が本になります。ビートたけし、明石家さんま、タモリら大御所から、オリエンタル・ラジオ、はんにゃ、ジャルジャルなどの超若手まで、鋭い批評眼と深すぎる”お笑い愛”で綴られたコラムを全編加筆修正。さらに、「ゼロ年代のお笑い史」を総決算したり、今年で9回目を迎える「M-1グランプリ」の進化を徹底的に分析したりと、盛りだくさんの内容になります。発売は2009年11月下旬予定。ご期待ください。

ジャルジャルの戯(あじゃら) 1

まだ24歳。

amazon_associate_logo.jpg

●連載「この芸人を見よ!」INDEX
爆笑問題・太田光 誤解を恐れない「なんちゃってインテリ」
世界のナベアツ「アホを突き詰める」究極のオリジナリティ
ラジオキング伊集院光が磨き上げた「空気を形にする力」
鳥居みゆき 強靭な妄想キャラを支える「比類なき覚悟」
くりぃむしちゅー有田哲平が見せる「引き芸の境地」
オリエンタルラジオ「華やかな挫折の先に」
有吉弘行が手にした「毒舌の免罪符」

【関連記事】 コント番組を殺した視聴者の”声”と局の”自主規制”
【関連記事】 TBS『キングオブコント』が大コケした3つの理由
【関連記事】 現役ディレクターが吼える「テレビバラエティは死んだか」

最終更新:2013/02/07 13:04

「コント冬の時代」に生れ落ちた寵児 ジャルジャルのページです。日刊サイゾー芸能最新情報のほか、ジャニーズ/AKB48/アイドル/タレント/お笑い芸人のゴシップや芸能界の裏話・噂をお届けします。その他スポーツニュース、サブカルチャーネタ、連載コラムドラマレビューインタビュー中韓など社会系の話題も充実。芸能人のニュースまとめなら日刊サイゾーへ!

ページ上部へ戻る

絶対的満足度の至宝店すべて見る

人気連載すべて見る

元木昌彦の『週刊誌スクープ大賞』

「週刊現代」「FRIDAY」の編集長を歴任した"伝説の編集者"元木昌彦による週刊誌レビュー

“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士、かく語りき

“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士の最新情報をお届け! 嫁・麗子も時々登場。

テレビウォッチャー・飲用てれびの『テレビ日記』

テレビの気になる発言から、世相を斬る!

じゃまおくんのWEB漫クエスト

マンガレビューブログ管理人じゃまおくんが、インターネットに埋もれる一押しマンガを発掘!

腹筋王子カツオ『サイゾー筋トレ部』

“腹筋インストラクター”腹筋王子カツオさんが、自宅でも簡単にできるエクササイズを紹介!

イチオシ企画

【PR】DYM・水谷佑毅社長の野望とは?

医師免許を持つ、ベンチャー経営者の異色の半生!
写真
特集

問題案件連発でジャニーズ帝国崩壊!?

マッチの不倫や山下智久の退所などが重なり、ジャニーズの根幹がゆらぎ始めている…。
写真
人気連載

黒木瞳、大物実業家のバックアップも実らず

 2016年公開の映画『嫌な女』以来、女優・...…
写真
インタビュー

Kダブ語るトランプ「忖度しない型破りな政策」

 パート1では、Kダブシャインがトランプを支持するまでの経緯を見たが、本稿ではさらに...
写真