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地上800メートルの超高層ビルをよじ登れ! 『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』

mi4.jpg(C)2011 PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.

 おなじみのテーマ曲とともに、不可能を可能にするエリートスパイ、イーサン・ハントが帰ってきた! 12月16日公開の『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』は、トム・クルーズ主演のスパイアクションシリーズ第4作。ロシア政府が置かれるモスクワのクレムリン宮殿で爆破事件が起き、イーサン・ハントが率いるチームは容疑者にされてしまう。政府と組織の後ろ盾を失い孤立無援のハントら4人は、テロリストが狙う核ミサイル発射による世界の破滅を未然に防ぐ困難なミッションに挑む。

 本作の目玉の1つは、テレビCMなどでも流れているドバイの超高層ビル「ブルジュ・ハリファ」の外壁で繰り広げられるド迫力のアクションシークエンス。当初はセットを組んで安全な環境で撮影したショットを実景と合成する計画だったというが、クルーズ本人の希望により本物のビルでロケを敢行した。高度800メートル以上の壁面を上から見下ろすショットだけでもゾクゾク来るのに、ワイヤー1本を頼りに垂直に駆け下りたり、特殊グローブの吸着力が失われて落下したりと、文字通り手に汗握るシーンの連続。イーサン・ハントの役柄そのままにクルーズが自らの限界に挑む姿は、本シリーズの一貫した魅力にもなっている。

 監督を務めたのは、ピクサー製作の『Mr.インクレディブル』(2004)『レミーのおいしいレストラン』(07)でアカデミー長編アニメーション賞を2度獲得した鬼才ブラッド・バード。実写映画では初の監督作となるが、シリーズ旧作の名シーンのパロディー化や約束事をわざと外すユーモアで巧みに緩急をつけたかと思えば、終盤の立体駐車場でのシーンで複雑な装置の動きと俳優のアクション、カメラワークを緻密にコントロールする構成力も見事。ブライアン・デ・パルマ、ジョン・ウー、J・J・エイブラムスという大御所や気鋭の監督たちが手がけた過去のシリーズ3作にも引けを取らない傑作で、ぜひ仲間やカップル、家族と一緒に鑑賞して大いに盛り上がっていただきたい。

 一方で、こんな季節は心に染みる映画とじっくり向き合いたいという方にオススメなのが、12月17日公開の『サラの鍵』だ。1942年、ナチス占領下のパリ。フランス警察がユダヤ人を一斉検挙した日、幼い弟を納戸に隠したサラは、納戸の鍵を手にしたまま両親と共に収容所へ送られてしまう。そして2009年、現代のパリ。フランス人の夫を持つ米国人ジャーナリストのジュリアは、ユダヤ人迫害事件を取材するうち、サラとその家族の悲劇を知り、真実を突き止めようと決意する。

 パリ在住のユダヤ人1万3000人が逮捕され、水もトイレもない屋内競輪場に詰め込まれた事件に着想を得たタチアナ・ド・ロネの同名ベストセラー小説を、37歳の新鋭監督ジル・パケ=ブレネールが映画化。ジュリア役のクリスティン・スコット・トーマス(『ずっとあなたを愛してる』)の安定した演技もさることながら、過酷な運命に翻弄される少女を迫真の演技で表現したメリュジーヌ・マヤンスが素晴らしい。戦時と現代を交互に行き来する中で、現在が歴史の真実の上に成り立っていること、また人の生が過去から現在へ、そして未来へと受け継がれていくことを浮かび上がらせる構成も効果的。過去の民族問題だけに限らない、家族愛、大衆心理、ジェンダー、勇気といった多様なテーマを内包する示唆的な作品であり、多くの観客にメッセージが届くことを心から願う。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』作品情報
<http://eiga.com/movie/55154/>

『サラの鍵』作品情報
<http://eiga.com/movie/56118/>

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最終更新:2013/09/10 11:52
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