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『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』DVDリリース記念インタビュー

インディペンデント・ドリームをかなえた入江悠監督、“ネクスト・ステージ”からの眺めはどうですか?

IMG_0473_.jpg『SR』シリーズは完結したが、「イックと同様、マイティもボクの分身。
ボクがその気になる時がくれば、またマイティが活動を再開することがあるかも」と話す。

入江 『SR1』『SR2』とシリーズとしてやってきたことで、応援してくれる人たちが多かったんです。今までシリーズを観てくれたファンたちがTwitterなどでの呼び掛けに応じて、北海道や九州からも集まってくれた。自分たちでホテルを予約までして。ボランティアでスタッフを務めてくれた人も多かったんですが、2カ月前から準備していたフェスの会場が撮影前日になって豪雨が直撃して、せっかく用意したセットが吹き飛ばされたりして、大変でした。フェスシーンの長回しは、2日間にわたって13テイクぐらい撮ったんです。事前にリハーサルはしっかりしていたんですが、エキストラの動きが入ったことで、カメラワークが本当に難しかった。マイティ役の奥野くんも1カットの中でやることが多すぎて、テンパってました。でも、その緊張感が追い詰められたマイティの心境と重なって良かったんじゃないかな(笑)。あの長回しシーンは、もう一度やれと言われても絶対無理でしょうね。

──SHO-GUNGとしてライブデビューすることが夢だったイックとトムは、初めてちゃんとした観客がいるステージに。『SR』シリーズのファンにとっては号泣ものの名場面ですが、ステージを正面から撮ったライブ映像は存在しないんですか?

入江 あぁ、それはないですね。DVDの特典によく入っている別アングル、ボクは嫌いなんです。でもメイキング映像を観てもらえば、フェスシーンがどのように撮影されたのか、会場の雰囲気も伝わってくると思いますので、DVDに収録してある特典映像は観てほしいですね。

──『SR3』の撮影最終日のラストカットは、どのシーンになるんでしょうか?

入江 映画での最後のシーンが、そのままラストカットになってます。撮り終わった瞬間は「やり切ったな」という感慨よりは、本当にファンへの感謝の気持ちでいっぱいでした。彼らの声援があったから『SR』シリーズを続けることができ、特に『SR3』はファンのみなさんの後押しがなければ絶対に完成しませんでしたから。撮影が終わり、打ち上げも済んで、各地から集まったボランティアスタッフたちが帰っていくのを見送ったんですけど、ひとりの方が「いい夏を過ごさせてもらいました。これで自分にも運が回ってくるといいなぁ」と言い残して去っていったのが印象に残っていますね。『SR』シリーズのファンだからSHO-GUNGのライブシーンは誰よりも生で観たかったはずなのに、スタッフの一員としてステージに背を向けてロケ車の誘導などやってくれていたんです。メイキング映像を編集していて、ボクも泣けてきました。

■人生を味わった上で、まだ肉を叩き続ける『ロッキー・ザ・ファイナル』がいい

──『SR』シリーズを撮り終え、今春はテレビ東京系の深夜ドラマ『クローバー』全12話の演出を担当。1クール全話をひとりの監督が撮るのはまれなケースです。

入江 連続ドラマは普通、3~4人で撮るそうですね。知らなかった(苦笑)。大根監督はひとりで『モテキ』など撮っているから、自分もできるだろうと思ってやったら、すっごく大変でした。後から聞いたんですが、大根監督は『モテキ』のときは予算も自分の会社で持ち出しているそうですね。限られた予算とスケジュールの中で撮るのは、キツかった。もちろん若いキャストを中心にしたアクションものだったので、自由があり楽しくもありました。どの作品でもそうですけど、いろいろと学ぶことはありましたね。

──入江監督に聞いてみたいことがあるんです。『SR』シリーズって、日本におけるインディペンデント映画版『ロッキー』(77)だと思うんです。シルベスター・スタローンは脚本&主演作『ロッキー』で成功を収め、ハリウッドのスターダムへと駆け上がっていった。日本でインディペンデント・ドリームをかなえた入江監督は、“ネクスト・ステージ”からどんな風景を眺めているのかなぁと。

入江 『SR』は『ロッキー』シリーズですか……。いいですね、『ロッキー・ザ・ファイナル』(07)みたいにジジイになっても、まだ肉を叩いてるぞと。いろいろやったけど、結局そこに戻るのかと(笑)。ボクも『エクスペンダブルズ』(10)みたいな、思いっきりバカな映画を撮ってみたいですね。『SR』シリーズとは別にテレビドラマは何本か撮りましたけど、テレビドラマの現場は予算も時間の余裕もなく、インディペンデント映画の現場とほとんど変わらないんです。それに第一、ボクはまだメジャー映画を1本も撮ってません(苦笑)。「ネクスト・ステージからの眺めは?」と聞かれても、まだ全然見えてない状況なんです。映画館でもファンの方に「これからどうするんですか?」と尋ねられるけど、逆にボクが「どうすればいいと思います?」と聞きたいですね。実は『クローバー』などを撮っていた頃、あまりに忙しくて、他のオファーを断ってしまったんです。ひとつ断ってしまったら、他のオファーも断らないといけなくなってしまって。先方は驚いてました。「なんでこっちの仕事を断って、深夜ドラマをひとりでやってるの」と不思議に思われたみたいです。あまり断っていたら、仕事がなくなってしまい、また生活が厳しいんですよ(苦笑)。

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