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借金を抱えて失踪、死亡説も……発明家になっていた日活ロマンポルノの伝説・曽根中生

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■ヒラメの養殖が面白くなりすぎて

 映画人としての曽根氏の話は尽きない。ただこちらは、冒頭で紹介した倉田氏の『曽根中生 過激にして愛嬌あり』に譲るとして、少々、興味本位の話題に移ろう。

 やはり、筆者が聞きたいのは失踪中の出来事である。多くの業界関係者は、失踪の理由を、映画製作で莫大な借金を抱えたことだと語る。しかし、どうして失踪までしなければならなかったのか。そのあたりは不明瞭なところも多い。

「私自身は、いなくなったつもりはないんです」

 曽根氏は、笑いながらそう答えた。会社を作って映画製作に乗り出したが、客の入りが悪く、借金をかぶったのは事実。その返済を考えていたときに転機が訪れた。

「横山やすしさんと大阪で飲んでいたのですが、彼も借金だらけだという。そこで、笹川良一さん(日本船舶振興会会長)に頼んで、競艇の映画を撮らせてもらおうということになったんです」

 話はとんとん拍子に進み、映画は完成した。ところが、完成した映画は曽根氏にとって「撮るべき映画ではない」というデキであった。「そんな横道にそれたら、もう映画は撮れない」と、曽根氏は自身を恥じた。

「その時、競艇選手会の会長だった野中和夫さんに、飲み屋で“この映画を誰が見るんだ?こんな映画を作っていていいのか”とボロクソに言われてしまいました」

 「もう映画はやめよう」と思った曽根氏は、自分の名前を刻んだ位牌を刻み、葬式を行った。そんな彼に野中氏は「九州でヒラメの養殖をやらないか」と、声をかけたのだ。

「それで、養殖を始めたら面白くなっちゃったんです。何しろ、この養殖場の社長が失敗ばかりするんですよ。何度やっても稚魚が死んじゃって、そのたびに野中さんに泣きついて“タマゴを買うからお金をください”と……。もう、熱くなってたんで、東京で私が失踪したってウワサになっているなんて、まったく知らなかった」

 結局、養殖はうまくいかなかったが、映画とは違うモノづくりに曽根氏はのめり込んだ。ゴミを処理する機械などの発明に乗り出し、開発には理論も必要だと、九州大学に入学するまでに至ったのである。

 今なお曽根氏は、新たな技術開発に熱心だ。最近は、生ゴミを入れるとバクテリアが処理してくれる生ゴミ処理機を実用化するべく力を注いでいる。しかも、この処理機はいま問題になっている福島第一原発の汚染水処理にも役立つと曽根氏は語る。

「汚染水をコンニャクにして、処理機に食べさせちゃえばいいんじゃないかと思っています。ただ、今のままだとコンニャクが足りなくなるので、まずは全国の休耕田にコンニャクを植えるところから始めて……」

 生ゴミ処理機の商品名を『カラスも真っ青』にしようと提案したり、次々とアイデアを繰り出す曽根氏。ステージは変わっても、熱さだけは変わらない点に、真似できない人間力を感じた。
(文=昼間たかし/インタビュー=山口夢)

<開催中>
曽根中生監督特集上映『ソネ・ラビリンス 曽根中生 過激にして愛嬌あり』
オーディトリウム渋谷 10/5(土)~11(金)
http://a-shibuya.jp/archives/7619

最終更新:2013/10/08 18:00
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