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借金を抱えて失踪、死亡説も……発明家になっていた日活ロマンポルノの伝説・曽根中生

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「借金を抱えてヤクザに殺された──」

 2011年に湯布院映画祭に姿を現すまで、そんな話が半ば事実として語られていた。日活ロマンポルノの名監督として知られた、曽根中生氏のことである。

 生存が確認された後も、曽根氏は大分県に暮らし、インタビューに答えることも少ない。

 ところが今回、映画関連書籍で知られるワイズ出版から『曽根中生 過激にして愛嬌あり』(倉田剛・著)が出版されるにあたり、東京で特集上映が開催され、曽根氏も上京するという。いまや日活ロマンポルノはサブカルチャーのアイテムとして、男性のみならず女性も楽しむものとなった。そんな時代の変化を、曽根氏はどう捉えているのか? また、20年あまりにわたる失踪の真実を知りたい。

 そんな欲望を満たすべく、かつて、曽根氏と共に製作会社の運営に携わっていたという映画編集者の鵜飼邦彦氏のツテをたどって、今回、取材の段取りをつけたのである。

 10月5日、土曜日。映画興行にとっては恵みの雨とも呼べる秋雨の中、オーディトリウム渋谷にて、『ソネ・ラビリンス 曽根中生 過激にして愛嬌あり』と銘打った特集上映が初日を迎えた。朝から6本立て上映のプログラムすべてを鑑賞した熱心な邦画ファンもいるほど、各回とも満員の客席は熱気に包まれていた。

 今回の特集上映では、齢76歳になるベテラン映画監督・曽根中生氏の日活ロマンポルノ時代の傑作選的なラインナップが組まれ、初日と2日目には監督がトークショーを行うという事前告知が功を奏し、大方の予想を上回る動員を記録したわけだが、これほどの大入りなった背景には、それなりの理由があったのだ。

 この曽根氏、かつて横山やすし主演の『フライング 飛翔』(1988)を監督した直後、忽然と映画界から姿を消してしまい、20年近くも失踪状態にあった映画監督なのだ。関係者の間では失踪直後よりさまざまな憶測が飛び交っており、いわく「借金が返せず、コンクリート詰めにされて海底に沈んだ」「北九州でヤクザの親分をやっている」「ダンプカーの運転手になった」等々、出所不明の黒いウワサがまことしやかに業界内でささやかれ続けてきた、まさに生きる都市伝説なのである。

 上映初日、トークショー出演のために大分県より上京した曽根氏を直撃し、それら都市伝説の数々を検証すべく、取材班は「日活ロマンポルノ」監督時代からの軌跡をインタビューによってたどっていった。

「(日活ロマンポルノは)私の生みの親なんです。お袋みたいなもんですね。しかも、なんというか、私生児みたいなもんですよね。私のお袋は男に逃げられてしまった。その後、神代(辰巳)さんや、田中登とか、私みたいな映画監督がゴチャゴチャと産まれちゃった。そういう意味で、日活ロマンポルノは時代の異端児でしょうね。異端っていうのは、歴史の傷ですからね。傷は絶対に消えないんですよね」(曽根)

 確かに、「日活ロマンポルノ」は30代前半の曽根中生という日活の助監督を、映画監督へと昇進させたのだ。

 1962年、日活へと入社した曽根氏は、助監督として現場でのキャリアを積む傍ら、強烈な個性で知られる映画監督・鈴木清順や若松孝二などのシナリオを手掛け、ロマンポルノ路線後の71年に『色暦女浮世絵師』で念願の監督デビューを果たした。

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