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借金を抱えて失踪、死亡説も……発明家になっていた日活ロマンポルノの伝説・曽根中生

 以降、続々と話題作を発表し、88年の「日活ロマンポルノ」終焉までを第一線の監督として支え続け、ポルノのほか『嗚呼!!花の応援団』シリーズ(76~)や『博多っ子純情』(78)等の一般映画でも成功を収め、瞬く間に映画界のメインストリームへと躍り出たのだが、そんな曽根氏を輩出した「日活ロマンポルノ」の定義とは、そもそもなんだったのか?

 60年代、石原裕次郎、小林旭らによるアクション映画路線で隆盛を極めた日活も、70年代に入るとテレビの普及と共に観客動員は衰退し、斜陽産業と呼ばれるようになっていった。そこで日活は起死回生の一打として、一般映画から撤退し、成人映画中心の製作にシフトしていくことを発表したのだが、この日本最古の映画会社でもある日活の決断は世間に強い衝撃を与えた。

 「10分に1回、絡みのシーンを入れる」「上映時間は70分程度」等々、一定の条件や低予算という制約がロマンポルノ製作にはつきまとった。しかし、それら苦渋の選択が、皮肉なことに、若き映画作家たちの才能を飛躍的に開花させる役割をもたらしたのである。

「製作費は安いけれども、予算のない中でポルノを隠れ蓑にして、やりたいことをやってやろうじゃないかっていう機運が高まってきた。でも、そこは当然、男女の絡みに時間を取られちゃうわけだから、合間にさまざまな要素を詰め込んでいったんです。それで、だんだんと面白くなってきたんじゃないのかなぁ、と思います」(曽根)

 そんな、過去の「日活ロマンポルノ」作品の魅力に、現代女性が惹き付けられつつあるのも事実だ。

 セックス産業やアダルトコンテンツが充実していなかった70年代の世情とも相まって、当時のロマンポルノ上映館は、男性客で埋め尽くされていった。しかし昨今、徐々にではあるが、「日活ロマンポルノ」の特集上映が、ミニシアター系劇場を中心に企画されるようになると、かつて見かけることのなかった女性客が、座席の半数近くを占めるという現象が巻き起った。そんな現実を曽根氏にぶつけてみたところ、

「それはうれしい限りですね。ほかのいろんな映画の記憶なんていうのは、バンソコ(注:絆創膏)でも貼っておけばすぐに消えちゃう傷なんですよね。でも、ロマンポルノだけはバンソコではちょっと治らないくらいの傷だと、いまだに思ってるんですよ」(曽根)

 まさしくロマンポルノ作品の劇中に登場する多くの女性たちは、心に何かしらの深い傷を負っている。だが、それにもめげず、現状を突破しようともがく行動力が共感を呼び、底抜けに明るく笑うことの少ない現代女性にとって、スクリーンで自由奔放に振る舞うロマンポルノのヒロイン像に憧れを抱いてしまうのだ。さらに、女性本来の姿で身を晒す体当たり演技と、妖しげな存在感に少なからず理解を深めていくようになるのだという。事実、劇場を後にする女性客の表情には、多少の戸惑いを感じつつも、その底知れない魅力に触れたすがすがしさに満ちあふれているのだ。

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