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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.249

マニアも知らない歴史遺産級の劇場が続々登場! 映画がもたらす祝祭的悦楽を追う『旅する映写機』

eishaki_02.jpg高知県安芸郡安田町にある「大心劇場」。集落から離れた山奥にありながら、今も毎月1本ペースで上映を続けている。

 広島県尾道市の「シネマ尾道」はNPO法人として河本清順さんが2008年に開業したミニシアター。映画館を立ち上げる直前に映写機を預けていた倉庫が火事に見舞われ、開業を諦めるかどうかの選択を迫られたが、岡山市にある「シネマ・クレール」が1スクリーンを閉じたことで余った映写機に窮地を救われた。埼玉県川越市にある「川越スカラ座」は明治38年(1905)開業という古い歴史を持つ劇場だ。オーナーが高齢となり一度は閉館するも、地元の若いスタッフたちの手によってNPO法人として復活。1967年製の映写機を今も大事に使い続けている。最近の壊れやすい家電と違って、業務用映写機のなんとタフなことよ。川越スカラ座にある映写機はフジセントラルF−7。映写機のメンテナンスを請け負っているベテラン技師の桧原康次さんは「戦時中に零戦のエンジンを生産していた中島飛行機が戦後になって映写機を作るようになった」と語る。

 映写機をめぐる旅は驚きの連続だ。四国に渡った森田監督は高知県の山道を進む。人家のない山奥に映画館があるのか? あった! 「大心劇場」だ。支配人の手づくり看板が何とも味わい深い。生きた映画資料館の様相を見せるこの小さな劇場にある映写機は1988年に閉館した「土佐山田東映」から貰い受けたもので、1954年製のフジセントラルF−5。さらに東京都東村山市にある「国立ハンセン病資料館」には1952年製のフジセントラルF−6が保存されていることが分かる。外部から隔離された療養所では映画の上映会が数少ない娯楽の場だった。ちなみに大黒座の映写機は1955年製のフジセントラルF-6。零戦の遺伝子を受け継ぐ名機・フジセントラルは戦後、全国津々浦々で実にいろんな人たちに夢を提供してきたのだ。2013年は零戦の設計者・堀越二郎を主人公にした宮崎駿アニメ『風立ちぬ』とベストセラー小説の映画化『永遠の0』が公開された年となるが、『旅する映写機』も“零戦をめぐるもう1つの物語”として記憶したい。

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