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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.249

マニアも知らない歴史遺産級の劇場が続々登場! 映画がもたらす祝祭的悦楽を追う『旅する映写機』

eishaki_03.jpg大正3年に建てられた「本宮映画劇場」だが、東日本大震災にもビクともしなかった。不定期ながら上映会が行われている。

 森田監督のファンタスティックボヤージュはまだまだ続く。福島県本宮市にある「本宮映画劇場」は99年の歴史を持つ。常設の映画館としては1963年に休業したものの、館主である田村修司さんはサラリーマンとして働きながら人のいない映画館の電気代を払い続け、映写機の手入れを怠らなかった。サラリーマンを定年退職した後に再度開業するのが夢だった田村さんは、入院した際に世話になった病院関係者を招いての上映会を催す。この噂を聞きつけて町の人たちも集まり、大盛況のイベントとなった。本宮映画劇場にある映写機はカーボン映写機と呼ばれる旧式のもの。田村さんが2本の細長いカーボンを電流に近づけると発光が起き、その灯りによってフィルム映像がスクリーンに浮かび上がる。レトロな映写機は忘却の彼方にあった遠い夢を呼び起こす。

 最新のシネコンやオシャレなミニシアターだけでなく、様々な形態で映画は上映され、多くの人たちに受け入れられていることを『旅する映写機』は教えてくれる。さて、冒頭でシアターNから撤去された映写機はどうなったのか? 森田監督に尋ねたところ、日本最後の映写機メーカーに勤めた加藤元治さんの手によってメンテナンスされ、飯田橋の名画座「ギンレイホール」のオーナーが所有する郊外の倉庫に他館から来た映写機たちと共に保管されているそうだ。いつかまた出番が来る日をじっと待つ映写機たち。休眠中の映写機は一体どんな夢を見ているのだろうか。
(文=長野辰次)

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『旅する映写機』
製作・監督・撮影/森田惠子 構成・編集/四宮鉄男 音楽/遠藤春夫 語り/中村啓子 配給/『旅する映写機』製作委員会 11月30日(土)~12月20日(金)ポレポレ東中野にてモーニングショー、12月7日(土)より名古屋シネマスコーレほか全国順次公開
<http://www.eishaki.com/>

最終更新:2013/11/28 21:00
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