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安田顕に魅了されること間違いなし!? 緩い笑いが心地いい『俳優 亀岡拓次』

kameokatakuji_0202.jpg(C)2016『俳優 亀岡拓次』製作委員会

 今週取り上げる最新映画は、売れっ子監督の中村義洋が久しぶりに手がけたホラーと、脇役専門の俳優が映画に舞台に恋に奮闘する姿を温かく描くコメディー。虚構と現実のあいまいな境界が独特の余韻を残す、印象的な邦画2作品だ(いずれも1月30日公開)。

『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』は、小説家・小野不由美の山本周五郎賞受賞作を、『アヒルと鴨のコインロッカー』(2006)、『予告犯』(15)の中村義洋監督が映画化した“実話風”ホラー。小説家の「私」(竹内結子)のもとに、女子大生の久保さん(橋本愛)から「住んでいる部屋で奇妙な音がする」と書かれた手紙が届く。2人が好奇心から調べると、そのマンションの過去の住人たちが転居先で自殺や殺人などを起こしていた。調査を進めるうち、土地に残る「穢(けが)れ」の存在が浮かび上がる。


 コメディーからサスペンスまで幅広いジャンルの話題作を精力的に発表している中村監督だが、疑似ノンフィクションのホラーもビデオシリーズ『ほんとにあった! 呪いのビデオ』で初代の構成・演出として手がけていた。同シリーズのほか、『アヒルと鴨~』『ゴールデンスランバー』(09)など多くの中村作品で共同脚本を務めてきた鈴木謙一が、本作にも参加。原作のエッセンスを的確に再構成しつつ、「音」の演出を中心にじわじわと不安を高めるオーソドックスな手法で、観客の心に怖さを染み込ませる。竹内結子と橋本愛が、好奇心と恐怖をバランス良く表現しつつ物語をリードし、佐々木蔵之介、坂口健太郎らも個性的なキャラで好サポート。エンドクレジット後に最後の「ホラー」が待っているので、決して最後まで席を立たないように。

『俳優 亀岡拓次』は、『ウルトラミラクルラブストーリー』(09)の横浜聡子監督、人気演劇ユニット「TEAM NACS」の安田顕主演で描くハートフルな娯楽作。映画俳優の亀岡拓次は、ホームレス、泥棒、チンピラなど脇役を演じ続け、監督たちに重宝されていた。酒好きの亀岡は、ある日ロケ先で撮影後に立ち寄った居酒屋で、女将・あづみ(麻生久美子)に恋をしてしまう。さらに、初めての舞台の仕事や、世界的巨匠の新作のオーディションなど、亀岡に人生の転機が訪れようとしていた。

 原作は、俳優や劇作家としても活躍する戌井昭人による同名小説。撮影現場のエピソードがバラエティー豊かに描かれ、いずれも味があって楽しい。実際に脇役として多数の作品に出演し、大の酒好きという安田顕がはまり役を得て、自然体に見せつつペーソスをにじませる演技力をいかんなく発揮。山崎努、新井浩文、染谷将太がそれぞれ個性的な監督に扮し、亀岡とのユーモラスなやり取りで大いに笑わせる。『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』を思わせる、演技の世界と現実との継ぎ目ない往来も刺激的。映画を作ること、演じること、そして生きることの楽しさ、面白さが詰まった快作だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』作品情報
<http://eiga.com/movie/82365/>

『俳優 亀岡拓次』作品情報
<http://eiga.com/movie/82489/>

最終更新:2016/01/29 21:00
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