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ベテラン海外ドラマライター・幕田千宏の「すごドラ!」

派手さはなくても、味がある! クセ者オヤジたちが魅せる刑事ドラマ『MAJOR CRIMES~重大犯罪課』

 アメリカン・ドラマにおいて、犯罪ドラマの人気は絶大。毎年、数多くの犯罪ドラマが世に送り出されるが、鉄板ジャンルだけに、あの手この手で工夫をこらしても生き残るのは至難の業。そんな熾烈な犯罪ドラマバトルの中で、派手な演出でもなく、イケメン祭りでもなく、実直なアプローチとおっちゃんたちの力で安定した人気を獲得しているのが『MAJOR CRIMES~重大犯罪課』だ。

 舞台は、ロス市警にある重大犯罪課。苦しい台所事情もあり、司法取引で犯人逮捕の効率化を図ることになったロス市警の中でも、特に凶悪事件を扱う重大犯罪課には、その使命が重くのしかかってくる。その重責を担うために抜擢されたのが、シャロン・レイダー警部だ。しかし、元内務調査官だった彼女に、部下となるベテラン刑事たちは猛反発。警察内部の問題を調査する内務調査官は、同僚を疑うという立場的に、署内では嫌われ者。その上、レイダー警部は規則を重視する堅物とあって、たたき上げのベテラン刑事たちとの相性は最悪ともいえる。だが、そんなクセ者ぞろいの部下たちを巧みに操り、次第に確かな信頼関係を築いていくのが、レイダー警部の腕。その手腕は、事件解決にも大きく貢献していく。

 犯罪ドラマにちょくちょく登場する司法取引。だが、それをテーマに本格的にクローズアップしている点が、このドラマのひとつの売りになっている。いかに条件のいい取引をまとめるか。それは、事件の早期解決を望む警察側にとっても、もう後がない状況で、その後の人生が左右される犯罪者側にとっても最重要命題となる。いくら事件の早期解決を望むにしても、お気楽にポンポンと取引していては警察の威信に関わるわけで、取調室ではスリリングな駆け引きが展開される。そして、そのスリリングさを派手に演出するのではなく、時に犯した罪には見合わない量刑で涙をのむしかないことがあるシビアな現実もしっかりと描き出し、被害者の関係者や捜査を担当する刑事たちの無念さ、そこからにじむ刑事としてのプライドも実直に描いていく誠実さが、このドラマの魅力になっている。

 もっとも、ただひたすら実直にシビアな現実を突きつけられるだけでは、いくらいいドラマでも見続けるのはしんどくなってくるもの。そこでがぜん生きてくるのが、重大犯罪課のおっちゃんたちだ。番組のテーマである司法取引を“ひとつの売り”としたのも、この重大犯罪課のおっちゃんたちの存在感がこのドラマの最大の魅力といっても過言ではないからだ。

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