日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 世界残酷史に切り込む2作品
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.405

ロボトミー手術、地雷撤去の強制……世界残酷史『ニーゼと光のアトリエ』『ヒトラーの忘れもの』

hitlerwasuremono02地雷撤去に従事する少年兵たち。ドイツ兵捕虜2600人が強制労働させられ、その半数が地雷の犠牲となった。

 ブラジルの精神病院を舞台にした『ニーゼと光のアトリエ』とデンマークでの地雷撤去を題材にした『ヒトラーの忘れもの』は描かれている世界はまったく異なるが、主人公たちは似たような状況に追い詰められる。女医ニーゼはロボトミー手術を推し進める病院側との軋轢を招き、カール軍曹は少年兵たちと交わした「地雷撤去が済めば、家に戻れる」という約束を守ろうとし、デンマーク軍内で白眼視されることになる。自分が所属する組織からの命令に背けば、組織内での自分の居場所を失ってしまいかねない。厳しい選択を主人公たちは強いられることになる。

 時代が変われば、社会的倫理観も大きく変わり、そのときは正しいと思われた判断も、後から責任を問われる可能性が生じる。砂丘のように刻々と形を変えていく大きな時流の中で、我々は少年兵たちと同じように手探りで少しずつ前に進むことしかできない。人間は過ちを犯すものであり、そんな人間たちが集団で犯した大きな過ちに、個人としてどう向き合うかを両作品は問い掛けてくる。
(文=長野辰次)

ni-zenoatorie02

『ニーゼと光のアトリエ』
監督・脚本/ホベルト・ベリネール 
出演/グロリア・ピレス、シモーネ・マゼール、ジュリオ・アドリアォン、クラウジオ・ジャボランジー、ファブリシオ・ボリヴェイラ、ホネイ・ヴィレラ 
配給/ココロヲ・動かす・映画社 12月17日(土)渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
(c)TvZero
http://maru-movie.com/nise.html

hitlerwasuremono03

『ヒトラーの忘れもの』
脚本・監督/マーチン・サントフリート
出演/ローラン・ムラ、ミゲル・ボー・フルスゴー、ルイス・ホフマン、ジョエル・バズマン、エーミール・ベルトン、オスカー・ベルトン
配給/キノフィルムズ 12月17日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
(c)2015 NORDISK FILM PRODUCTION A/S & AMUSEMENT PARK FILM GMBH & ZDF
http://hitler-wasuremono.jp

ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

水原解雇に間に合わなかった週刊誌スクープ

今週の注目記事・1「水原一平“賭博解雇”『疑...…
写真
イチオシ記事

さや香、今年の『M-1』への出場を示唆

 21日、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で「賞レース2本目やっちまった芸人」の完結編が放送された。この企画は、『M-1グランプリ』(同)、『キ...…
写真