深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.540

ベッドの下で初恋の女性を見守る純愛系変態男!! 高良健吾主演のR18作『アンダー・ユア・ベッド』

演技力で定評のある高良健吾が主演した『アンダー・ユア・ベッド』。R18ギリギリのバイオレンス&エロチズムシーンが描かれる。

 初恋の相手にもう一度逢ってみたい、そう思う人は多いのではないだろうか。学生時代に好意を抱いていた異性の名前を、SNS上で検索してみた人も少なくないだろう。高良健吾が主演した映画『アンダー・ユア・ベッド』の主人公も、そんなありがちな人間のひとりに過ぎない。30年間生きてきた中で、いちばん幸せだった時間を与えてくれた憧れの女性に再会し、もう一度名前を呼んでほしいと願う。ただその想いが、ほんの少し強過ぎるだけだ。

 大石圭の小説『アンダー・ユア・ベッド』(角川ホラー文庫)を原作にした本作は、現代の『グレート・ギャツビー』のような物語だ。米国文学を代表する作家F・スコット・フィツジェラルドが1925年に生み出したジェイ・ギャツビーは、ロングアイランドにある豪華な屋敷に暮らし、派手なパーティーを毎晩のように開く。すべては人妻デイジーの気を惹くためだった。本作の主人公・三井直人(高良健吾)も学生時代の憧れの女性・千尋(西川可奈子)に近づきたいあまりに彼女が暮らす街へと引越し、熱帯魚店を開く。直人が千尋の次に愛してやまないグッピーを、千尋に飼育してほしい一心だった。

 直人が千尋に執着するのには理由があった。直人は子どもの頃からまるで目立たず、中学の卒業アルバム用の記念写真に直人が入りそびれたことをクラスメイトは誰も気づかなかったほどだ。大学でも友達はできず、直人の名前を呼ぶ者は一人もいなかった。そんな中、クラスで一番の人気者・千尋だけは直人に優しく、一度だけだが2人きりでコーヒーショップで時間を過ごしたことがある。直人の唯一の趣味がグッピーの飼育だと知ると、千尋は「私も飼ってみたいな」とつぶやいた。以来、直人は千尋が「三井くん」と名前を呼んでくれたことと、一緒に飲んだマンデリンの味が忘れられなくなっていた。

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