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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.546

最高のセックスパートナーは“いとこ”だった!?  世界の終わりを誰と過ごすか『火口のふたり』

お互いが最高のセックスパートナー

震災後の秋田が舞台。先行きの見えない社会の中、兄妹同然に育った賢治と直子は身体の言い分に従って生きることを決意する。

 直子と再会した賢治は、懐かしいアルバムを開いたことがきっかけでお互いの体を激しく求め合った日々を思い出す。「今夜だけ、あの頃に戻ろうよ」と耳元で囁く直子。婚約者であるエリート自衛官が出張先から戻り、式を挙げるまでの残された5日間限定で、2人は愛し合うことになる。直子によると自衛官との行為は激しいだけだが、賢治のものは蛇のようにまとわりつくらしい。お互いが最高のセックスパートナーであることを実感した2人は、活火山の火口へとにじり寄るような刺激的な体験にのめり込んでいく。

 直木賞受賞作『忘れえぬ人』やロングセラーを続ける『翼』など、「運命の恋人」「魂の片割れ」との出逢いと別れを描いてきた白石作品ならではの大人の物語が展開される。白石作品の男女は、社会的モラルや世間的な倫理観を飛び越えて惹かれ合う。アンモラルさが強いせいか、白石作品の映画化は今回が初めてだ。賢治と直子は、幼い頃から一緒に過ごした“いとこ”同士だけに、お互いの性格を知り尽くしている。しかも、血が濃いというタブー感もあり、2人はより燃え上がっていく。

 賢治と直子がセックスにのめり込んでいく要因は、それだけではない。東日本大震災後、甚大な被害を招いた福島第一原発の廃炉化作業はまだまだ進んでいない。それにもかかわらず、政治家や官僚たちは東京でオリンピックを開くことで目先を逸らそうとしている。一時的な五輪バブルが終わった後、この国はどうなるのか。先行きの不透明な時代の中で、2人はお互いの性器が腫れ上がるまで何度も何度も愛し合う。

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